

大学卒業後すぐに新卒で協力隊に参加し、青少年への水泳の指導に取り組んでいます。日々試行錯誤しながらの活動が充実している半面、任期を終えて帰国した後の進路のことも頭を離れません。社会人経験もなく、就職活動の中で協力隊経験をどう生かしていけるのか頭を悩ませています。
私が協力隊に参加した当時――40年近く前ですが、その頃は“協力隊員”といえばキャリアを捨てて行く無頼漢のイメージが社会的に根強く、当の隊員たちも多くが帰国後の就職のことなど任期中には考えていなかったように思います。私のような現職参加者でなければ、そのまま日本社会へ戻らず世界放浪の旅に出て、気に入った国に住み着いてしまった人なども結構いたものですが、やはり基本的には、早い時期から進路を意識しておくのは正しい考え方ですよね。
ですから、現役隊員であるうちに進みたい業界の情報を仕入れて分析する、国際協力の道へ進みたいならば大学院で修士号を取るなど、まず基本を押さえておくことは必要でしょう。そして面接などの試験でニーズに合わせてアピール材料を用意するのは、言ってみれば協力隊員の選考と変わりません。つまり、採用側のニーズがあって、それに対して「私にはこれができます、この技術はまだ身に付けていないのでこれから勉強します」などと説明できなければいけません。
そのためにお薦めしたいのが、日頃から現地での活動などについて発信することです。というのも、それが実績を端的に説明する資料になるからです。自ら書き残したり、どこかに発信したりした記録がなければ、経験について就職活動の場で提示できるのは活動報告書くらいでしょう。面接官の立場からすると「この人はどういう人物なのか?」が分からない状態ですから、単に「2年間途上国に行ってきました」「こういう活動をしてきました」という口頭での説明だけだと、活動を通じて経験したことや身に付けた力が十分に伝わらない場面もあるかと思います。だからこそ、何らかの形で記録を残すことは大切で、赴任したらすぐ始めるのが望ましいです。帰国間際になってから慌てても、就活に間に合わないこともあるかもしれません。
活動について書く媒体は自身のSNSやブログでもいいでしょうし、地元の自治体やその地域のJICA国内機関の広報媒体への寄稿という形もありますよね。あるいはクロスロードのような機関誌の類いに載せてもらうなどの手段もあります。そういったものがあると、自分が何をしてきたのか示しやすいわけです。日本人というのは自己アピールに消極的な傾向がありますが、これはぜひやったほうがいいので、私の教え子で隊員になった人たちにも常々伝えています。
マレーシア/村落開発普及員/1989年度1次隊、短期/マレーシア/林業・森林保全/2024年度9次隊・北海道出身
帯広畜産大学で環境保全学を学んだ後、北海道大学大学院で生態系管理学を専攻。1985年に北海道庁に入庁し、89年に同庁で初めて現職参加制度の下で協力隊に参加。マレーシアでの活動を経て復職し、2001年より酪農学園大学に移り教壇に立つ。現在、同校名誉教授。また、23年に同校認定第1号のベンチャー企業として株式会社インターリージョンを設立し、代表取締役CEOを務める。
Text=飯渕一樹(本誌) 写真提供=金子正美さん