江本 敦子(えもと あつこ)さん 青年海外協力隊

ブラジルの日系社会で学んだ「日本人として」大切なこと。
それらのすべてが、教師である今の私の糧になっています。

2016.02

短大卒業後に数々のボランティアを経験。
20代は農業と女子プロレスに打ち込む。

短大2年生だった19歳のときに教育実習で初めて教壇に立ちました。そこで人生経験のなさを痛感したことがきっかけで、NGOのワークキャンプで短期ボランティアに参加することに。世界中の人と交流することの楽しさを覚え、短大卒業後もフィリピンやタイでボランティア活動を続けました。「青年海外協力隊にチャレンジしたい」と思ったのは、ボランティアの現場で協力隊の経験者に話を聞いたから。日本で参加費を稼いでは海外での短期のボランティアを繰り返していた私にとって、2年間に渡り、現地に腰を据えて活動できる協力隊は魅力的でした。
 しかし、短大を卒業したばかりの私が応募できそうな要請はなかなかなく、ちょうどその頃、ワークキャンプで行ったタイの山村で、電気やガスのない中「私にできることはこんなにも少ないのか…」と衝撃を受けたことも重なり、「これからは農業だ!」と確信して、北海道の牧場で2年間、酪農に取り組みました。そして、「酪農で身に付けた体力を生かせるかも」と、今度は女子プロレスラーに転身し8年活動しました。この変わった経歴は、いずれ教師になったときに、生徒たちがまだ経験したことのない未知の世界を語れるようになるための貴重な経験だと思っています。

一念発起して日本語教師の資格を取得。
教師生活を経てJICAボランティアに挑戦。

30代になり、教師という本来の目標に立ち返ろうと、日本語教師養成講座に通って日本語教師の資格を取得。日本語学校で1年間の実務経験を積み、JICAボランティアへのチャレンジを決めました。私の住む横浜市の教員採用試験には、JICAボランティアなどの国際貢献活動経験者が受験できる特別選考枠があるので、ボランティア経験を教員になるためのステップアップとしたいという思いもありました。また、ブラジリアン柔術の経験者として、本場で日本語教師がしたいという思いもあり、日系社会青年ボランティアを選び受験しました。

戸惑いを感じた日本と現地との教育方法の違い。
現地の指導法を尊重しつつ新しい教育法を模索。

念願かなって2年間活動することになったのは、ブラジル中西部に位置するドゥラードスという町の日系日本語学校。JICAの助成で建てられた公的な日本語教育施設で、ひな祭りや運動会など年間で20以上の行事があり、周辺地域の日系社会コミュニティーをまとめる拠点となっています。
 この学校には3~18歳までの約70人の日系人が通っていて、その大半を占めるのが日系3・4世の子どもたち。顔は日本人でも日本語はほとんど話せません。多くは、家族の要望で日本語を学んでいました。そこで、和太鼓や折り紙など彼らが興味のある日本文化の指導を通して、日本語に対する関心や理解を促す活動を心掛けました。その経験から、「ただ日本語を喋らせることだけが大事なのではない」とあらためて思いました。
 また、子どもたちへの指導では、継承語教育のアプローチにも気を配りました。日本人のブラジル移住以来、100年以上も続く現地の先生方の日本語の教え方に敬意を払いつつ、新しい教授法を提案していくようにしたのです。
 現地の日本語の先生たちのほとんどは、日本語の教え方を基礎から学んではいない人たち。現地で活動し始めたころは、そうした事情を理解していなかったため、私が学んだ教育方法と大きく異なる現地の指導法に戸惑い、もどかしさを感じることもありました。それでも、現地の人たちが残してきた指導法を尊重しながら、日本語教育の新しい方向性を一緒に考える姿勢が大事だと学びました。

JICAボランティアで得たもの

帰国後は中学校の臨時任用職員へ。
教師としての糧になったブラジルでの経験。

帰国後は横浜市の中学校で臨時任用職員として英語を教え、クラスの担任を持ち、サッカー部の顧問をしています。日本で教壇に立つ前に、ブラジルで教師の経験ができて本当によかったです。言葉が人を育てるということ、家族の絆、世代を超えて受け継がれる文化…。本来日本人が大切にしていたことをブラジルの日系社会で再確認し、それらすべての経験が教師としての糧になっています。生徒たちには、私の体験を通して「あなたも何でもできるんだよ」ということを、伝えていきたいですね。
 JICAボランティアでは、自分の思いを押し付けたり、押し通したりするために活動しても、何もうまくいかないということを学びました。どの土地にも、古くから根付いているやり方があります。そしてその背景には、それぞれの思いや、そうなった歴史や理由があったことに次第に気付いていったのです。それは教師の職務を全うする上で、とても大切な経験でした。

これからJICAボランティアを目指すみなさんへのメッセージ

現地を変えるのための活動ではなく
そこで学び一緒に作り上げる気持ちが大事。

活動中は、困難や失敗から学ぶことが多く、何事にも動じない度胸がつきました。
きっとこの先どんなことがあろうと乗り越えられると思います。
これからJICAボランティアを目指す方には「現地の何かを変える」ためではなく
「現地の人から学び、何かを一緒に作り上げる」という気持ちで参加してもらえたらと思います。
2年間はあっという間です。人との交流、人とのつながり、そこから生まれる絆が、
その短い2年間の活動を意味のあるものにすると思います。

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