横浜市水道局

自治体連携

専門家に繋がる登竜門として
若手局員が経験を積める場に

※文章内の制度名、派遣名称は派遣当時のものです。​

石井 務 氏

課長補佐 事業推進部

国際事業課 担当係長(国際担当)

石井 務

大統領の要請で始まった
マラウイとの連携

横浜市水道局では、本市の方針で国際協力に力を入れており、自治体連携ボランティア制度(現「JICA海外協力隊(自治体連携)制度」)の施行以前から、ベトナムなどの開発途上国で国際貢献活動を行っていました。2013年の第5回アフリカ開発会議において、当時マラウイ国の大統領であったジョイス・バンダ氏と林市長の対談の中で、マラウイのインフラ整備について協力要請が示されました。これを受け、翌2014年から毎年、同国のブランタイヤ水公社(BWB)に、これまで5回、計17人の職員を派遣していますが、水道局では、この制度を若い世代の職員がJICA専門家派遣に進むための国際人材育成の登竜門として活用しています。海外協力隊として派遣される対象者は自薦が基本であり、派遣による本人のスキルアップを期待しています。
前任者との引き継ぎに関しては、前年度の派遣者からアドバイスを受けながら、足りない点は、各々が職場の先輩にレクチャーを受ける形で補完しています。また、現地に派遣された後もSNSを使って日本からアドバイスをもらうなど、サポート体制を整えています。

サポートチームを結成し、次の世代を育てる仕組みづくり

局内には局全体で国際協力の取組を進めるため、「国際協力専門委員会」という若手職員を中心とした組織があり、現在50人程度のメンバーが活動しています。この委員会では、メンバーが海外での活動経験を発表したり、研修員の受け入れをサポートしたりするなど、国際事業をチームで支えています。
2018年は、専門委員会内に設置されている「マラウイサポートチーム」により、渡航前からチームで派遣者をサポートし、派遣後も活動中の隊員と一緒となり、日本から支援を行っています。チームメンバーは、海外プロジェクト経験者が約半数。派遣者が現地の活動経験や情報をメンバーに共有することで、メンバーの中から将来の隊員候補者が出てくることを期待しています。専門委員会には、研修員受入方法を考えて実践するチーム、水道技術の進んだ国での事例を調査するチームも活動しています。国際協力の業務としては、海外から研修員等を受け入れることの方が多いので、受入から始まり、海外に派遣する次世代を育てていくことも一つのアプローチだと思います。

瀬川 進太 氏

瀬川 進太

派遣国
マラウイ
派遣職種
上水道

信頼関係で結ばれた、5年目のボランティア活動

2017年に40日間、マラウイで青年海外協力隊としての活動に参加しました。今回派遣されたのは計4名です。私は過去にJICAの専門家として開発途上国で活動した経験がありましたが、海外経験がないメンバーもいました。
現地では漏水、盗水、メーターの機能不全に対して、数値化しながら対策を打っていくための仕組みづくりを行いました。横浜市水道局の組織づくりや運営方法をもとに、組織としてシステマティックに動くためのルールや、マニュアル化の方法などをレクチャーしました。
現地での40日の派遣期間は短いので、翌年度に次のメンバーが来るまでは、SNSを用いてフォローしています。今年度は、前年度からの課題に対するアプローチのほとんどすべてが形になっており、活動の成果を実感しています。現地のカウンターパートとの信頼関係も構築できており、こちらが厳しい指摘をした際も、苦笑いをしながら改善に向けて努力してくれますので、非常にありがたく、やりがいを感じています。

現場経験で自信をつけて、次のステップに繋げていきたい

日本ではすでに水道管は整備されており、維持管理が主な業務となっています。委託化も進んでいますので、かつての先輩たちのように自らが汗をかき、泥まみれになりながら、穴を掘って水道管を埋める経験は少なくなっており、研修や机上で学んだことを実践する場が減ってきています。しかし、ひとたびマラウイに行けば、自分で考えて成し遂げなければなりません。開発途上国の環境で応用することで、自分たちが教わってきたことを実践し、実感を持って習得することができ、自分の成長にも繋がっています。今後、災害により、日本でも実際に水道管を埋める必要が出てくるかもしれません。そんな時、マラウイで実際に見て触った経験が、力になると信じています。
マラウイを経験した若手職員を見ると、帰国後にサポートチームのリーダーに立候補したり、積極的に発表を行なったりと、主体性が増していると感じます。これを機に色々な国や都市の状況への興味が生まれるなど、視野が広がっていることも実感しています。
JICA海外協力隊(自治体連携)というスキームは、横浜水道局の若手職員などにとって登竜門といえます。入局2〜4年目程度の若い職員が活躍できる場としては、とても有意義であるので、ここからステップアップして、最終的には、プロジェクトマネージャーとして海外で活躍する国際人が育っていくのが理想であると考えています。私一人だけでなく、組織全体でそういう人を生み出していけるよう、自らの経験を繋いでいきたいと思います。