北海道大学
水産学部

大学事例

世界を担う未来の
専門家たちに、充実した
「失敗経験」を提供したい

※文章内の制度名、派遣名称は派遣当時のものです。​

東条 斉興 氏

水産科学研究院 国際教育室 助教

東条 斉興

開拓者精神を胸に、
課題を持って前進する

北海道大学では、前身である札幌農学校の開校以来、フロンティアスピリットを持った世界人の養成に取り組んできました。函館市にある水産学部でもその精神を受け継ぎ、世界各国で様々なプロジェクトを行なってきました。その一つに「JICA海外協力隊(大学連携)」制度による連携プログラム「セントルシア水産開発案件」があります。
この案件は、他2大学との共同で開始し、北海道大学には「得意とする海藻の分野での貢献」という課題が課せられました。我々は「漂着海藻の問題をクリアしつつ、資源に変えられないか」という発想をもとに、2016年から藻塩の生産に向けた調査や研究を行なっています。
プロジェクトについては学部ガイダンスなどで告知し、青年海外協力隊として派遣されることを希望する学生は書面にて応募を行います。英語など最低限の選考は行いますが、自ら相談に来る学生に門戸を広げるべく、まず何よりも積極性を重視しています。流暢な言葉遣いよりも、人対人のコミュニケーションを取ろうとする姿勢があるか。それが、機会を生かせるかどうかの判断基準です。

安全が確保された環境で、たくさん悩んで経験を積んでほしい

派遣に際しては、半年前より独自に事前研修を行なっています。学生が自分で課題を見つけ、先輩のアドバイスを受けながら、現地での活動内容を計画します。住民参加のプロジェクトですから、ときには現場の空気を理解するために、日本で町おこしのイベントに参加し、実地学習を行うこともあります。
短期間の渡航でも現地で課題を認識し、何らかの悩みや後悔を抱えて帰ってきてほしい。そのためには、失敗を恐れずに様々な経験を積んでほしいと思っています。大学連携であれば、我々がサポートできますから。
また、通常の大学カリキュラムでは、安全性の確保や手続きの問題で渡航が難しい国に行けることも、大学連携ならでは。学生たちには、開発途上国に行って、現実を見てほしい。世界の人がどう考えているか、どんな課題があるかを学び、母語とは別の言語で話し、自分で考えて、課題を解決していってほしいと思っています。
派遣後すぐに何かが変わるとは思いません。30年後に世界で何をしているのか、それがこのプロジェクトの成果なのだと思います。

雀部 庄平 氏

雀部 庄平

派遣国
セントルシア
派遣職種
水産開発

実践的な経験を求めて大学連携プロジェクトに参加

進学に前向きになれなかった高校生の頃、フィールドワークができる学部を探しているなかで、水産学部を知りました。「船に乗ってフィールド調査に行く」というパンフレットの内容に惹かれ、地元を離れて北海道大学へ。大学3年に進級する際、ガイダンスで東条先生の国際教育室を知り、海外案件に興味を持ちました。なかでも、現地の大学で講義を受ける形ではなく、「現地の方と一緒に活動する」というより実践的なプロジェクトに興味を惹かれ、「セントルシア水産案件」へ青年海外協力隊として派遣されることを希望しました。
派遣が決まると半年前から事前研修が始まりました。私にとって初めての海外での調査案件だったため、連日夜遅くまで残って計画を立て、万全の態勢で臨みました。しかし、渡航してみると、想像以上に言葉の壁が大きいことがわかりました。藻塩の需要を調査すべく、現地の人と英語でコミュニケーションを図ろうとしますが、普段学校で聞く英語とは違って現地の人の英語がわからず、現地調査は難航しました。漂着海藻の調査も想定したようには行えず、その場で計画を変更する必要がありました。最後は、現地の人のオープンマインドな人柄に支えられてなんとか調査は終了しましたが、日本との違いを肌で感じた経験でした。開発途上国では何が起こるかわからない。だからこそ、その時に与えられた環境下で何とかしなくてはなりません。後から振り返ると、そのように対応してきたことが、多様な環境でやり抜く力に繋がっていたのだと思います。一ヶ月の滞在後は、現地の人たちと別れることに名残惜しさもありましたが、「またきっと来よう」と、次の目標を抱くことができました。

自ら発言して動くことで、世界が広がっていった

セントルシアで青年海外協力隊としての活動を終えた後は、大学の研究室からベトナムの案件に参加。一人でダナン市に渡り、プロジェクトを遂行しました。また、釧路市の案件では、商工会議所に50人を集めてインタビューを行うなど、自ら動いて調査を進めてきました。昨年は、国際学会のアシスタントを務めるなど、学部生ながらも多くのチャンスをいただいています。自分ではあまり実感がありませんが、先生からは、物事を取りまとめる力や、後輩の指導態度を評価していただき、「前よりも感情が豊かになった」と言われています。
これまでにいくつかの海外プロジェクトに参加し、高校時代には考えもしなかったような充実した日々を過ごしています。セントルシアでは、今まで自分が見ることのなかった世界を見ることができ、視野や可能性が広がったことが、一番の収穫でした。将来のことはまだ決めていませんが、大学院の2年間で、先生のおっしゃるように、たくさん悩み、迷ってみたいと思います。