鳥取県

自治体連携
【連携開始】 2016年5月
【派遣国】 ジャマイカ
【協力分野】 行政サービス
【派遣形態】 県庁職員を1名ずつ隔年で2年間派遣
【累計派遣】 計2名(~2020年度)

韓国江原道、中国吉林省・河北省、ロシア沿海地方、モンゴル中央県などと友好提携、ブラジル鳥取県人会との人的交流、アメリカバーモント州、ジャマイカウェストモアランド県とは姉妹提携を結ぶなど、国際化の推進に力を入れている鳥取県。JICAとの連携を担当している、同県交流人口拡大本部観光交流局交流推進課の田中智課長補佐とジャマイカに派遣された梶谷彰男氏にお話を伺いました。

※文章内の制度名、派遣名称は派遣当時のものです。​

田中 智 氏

観光交流局交流推進課

田中 智

人材育成+地方行政の枠組みの中でJICA連携制度を活用

姉妹提携先のジャマイカ・ウェストモアランド県との交流方法を模索する中で、JICAに相談して自治体連携事業の紹介を受け、交流の促進として「行政サービス」を担える職員をJICAとの連携でジャマイカへ派遣することになりました。職員を協力隊員として継続的に派遣するべく、県庁内で公募をかけ、県庁内で本人の意思確認等を行ってからJICAへ推薦しました。JICA海外協力隊に合格した後、本県は「人事発令」を行って派遣しています。職員を協力隊員として派遣中は、ジャマイカとの交流事業という枠組みの中で相互に幹部職員が行き来したりして現地視察を実施。また、派遣中は毎月活動状況報告書を提出してもらい、時々オンラインで県庁の担当職員同士で業務上の連絡や現地生活の様子をヒアリングしました。協力隊員の活動地域へ日本からの寄贈品を届けるJICAの支援メニュー「世界の笑顔のためにプログラム」は、本県としてもジャマイカに陸上競技の用品を送りたかった際に活用できて大変良かったです。中国や韓国にも別プログラムで県庁職員を派遣していますが、JICA連携のジャマイカ経験者だからと言って、帰国後にその国の専門性に関する仕事だけを県庁があてがうことは考えていません。むしろ、日本とは異なる文化・環境で多様なものの見方が身についたと思うので、協力隊経験のある職員は国際交流に関する部署にこだわらず、様々な部署・仕事においてジャマイカで得た多様な価値観に基づく能力を発揮して欲しいと期待しています。実際、梶谷職員の場合は、派遣前に比べ、自発性、主体性が顕著で、大変柔軟な発想・行動が県の行政に大いに生かされていると感じます。協力隊員の経験はとても大きいのだと実感しています。

安心して職員を送り出せる、JICAの現地支援体制

  • 一般財団法人鳥取陸上競技協会の寄贈によりティッチフィールド高校の他6校に届けられた陸上ハードル

  • ウェストモアランド県で毎年開催される「レゲエマラソン」に鳥取県から市民ランナーを派遣するマラソン交流事業

JICA連携では、現地のJICA事務所によるサポートがあるので助かっています。2020年1月、ジャマイカ沖で大きな地震が発生した時は、たまたま迅速に本県が梶谷と連絡がとれましたが、仮になかなか連絡が取れない場合は非常に厳しい状況になったと思います。現地にJICA事務所があり、安全管理上の支援や、また日本のメディアが報道しないような災害関連の詳しい情報なども提供してもらえるというのは「何かの時に安心」という思いがあります。また、単なる「協力隊員としての職員派遣」に留まらず、JICAは外務省・大使館とのつながりも深く、大使館主催のレセプションで本県とジャマイカとの交流を紹介する機会を調整いただくなど、多岐にわたり支援いただきました。今後もJICAとの連携合意期間を延長し、新型コロナウィルスの流行が終息して派遣が再開されるのを待ちたいと思っています。

※このインタビューは2020年12月に行われたものです。

梶谷 彰男 氏

梶谷 彰男

派遣国
ジャマイカ
派遣職種
行政サービス

志ある職員の背中を職場が押す

JICA海外協力隊については、学生時代から何となく存在は知っていました。県庁内でJICA連携派遣の公募を見て、現職身分を保持したまま派遣されることを知り、興味が高まって協力隊活動への参加が「自分ゴト」になりました。特に、自己都合の休職措置での参加ではなく、県庁職員の立場として派遣される点は魅力に感じました。
JICAによる派遣前訓練では、語学(英語)訓練が役に立ちました。100人くらいの同期の隊員、大工や美容師などいろいろな職種の方、国際協力に熱意のある方と触れあい、それまで漠然と感じていた国際協力への参加が、より現実的なものとして感じられる契機となりました。
自分のジャマイカでの活動は、主に「配属先の業務効率化」、「道路・公共工事課への技術支援」、「日本との交流事業」でした。日本の役所で10年勤務してきて、書類・文書中心で仕事を進めてきましたが、ジャマイカでは文書よりも対面でのコミュニケーションが大事という文化でした。語学に不安がありましたが、つたない英語でも相手に飛び込んでいけば相手も受け入れてくれると分かってからは、業務を進め易くなりました。派遣された当初は不安もありましたが、前任で派遣されていた名越職員が、毎週定時に行った日本からのビデオ通話で、安否確認を含めたリラックスできる形でやり取りをしてくれたのは有難かったです。

海外と国内を繋ぐ「循環型人材」のカタチ

ジャマイカで自分が配属されたウエストモアランド県は、鳥取県と何年も交流があるため温かく迎えてくれました。提供された住居も県の職員が大家であったので、ホストファミリーに受け入れられたようで、職場も住まいもアットホームでした。また、他の協力隊員と顔を合わせる機会もあり適度に息抜きができた上、犯罪に巻き込まれることも病気になることもなく過ごせたのは幸いでした。
現在は、ジャマイカへの派遣再開を待ちつつ、鳥取県庁で業務を行っています。現地とはSNSで今も連絡を取り合っています。ジャマイカの情況が改善したら、また現地で協力隊員として鳥取県との交流事業を進めたいです。特に、相手とのやり取りが軌道に乗ってきたところで帰国となったので、改めてやりたい気持ちが強いです。協力活動の一つであった交流事業のマニュアル作成は、半分ほど出来上がっているので、今後はその使い方等についても現地の同僚たちと議論するという仕事が残っています。協力活動は、こちらが前面に出るのではなく、現地の人々を前に出すことを引き続き心掛けていきたいと思っています。
メッセージとしては、公務員で「海外に行きたい。」と思う人は少ないかもしれませんが、行けば様々な経験ができます。慣れない環境での業務・生活への不安については、JICAの現地事務所などのサポートもあり安心なので、チャンスがあれば、是非手を挙げて欲しいと思います。ちなみに、自分は、帰国してから「より柔軟な発想や主体的になったね。」と言われることが増えました。

※このインタビューは2020年12月に行われたものです。