田中 悦子さん
青年海外協力隊
Etsuko Tanaka
一般社団法人仕事ノアル暮らし 所長
- 【職場】
- 愛知県
- 【職業】
- 精神保健福祉士/公認心理師
- 赴任国
-
ルワンダ共和国
- 【赴任地】
- キガリ市
- 【職種】
- ソーシャルワーカー
- 【派遣期間】
- 2006年3月~ 2008年3月
2008年8月~ 2009年1月
明日を楽しみにそのまま眠りにつける人を増やしたい
精神障害や発達障害などがある人への就労支援と、
ルワンダの貧困層の就労支援を同時に行う就労移行支援施設を創業した田中悦子さん。
両国に共通する「やる気はあるのに手段がない人」を何とかしたい、その思いが原動力になっている。
安定した生活から
未知の世界へ飛び込む気概
カウンセリングのような目に見えない仕事も途上国で求められていることに驚き、同時に、変わったことが好きだった田中さんの心に何かが芽生えた。32歳のときだった。
何度も騙され、裏切られて
“くじけない心”が育った
5年半務めた大手企業を辞めて参加した協力隊。派遣先のルワンダでは、貧しさや家庭の事情などから家出をし、市場の近くで荷物運びなどして小銭を稼ぐストリートチルドレンたちを保護する施設で活動した。
小中学生くらいの男の子たちに声をかけ、施設に連れて行っては着ている服を洗濯させ、洗濯物を乾かしている間に読み書き、計算、理科の実験などを教える。子どもたちは昼ご飯を食べ、きれいになった服を着て、また居場所に戻っていく。だんだん気心が知れて安心してくると、「ここに住まない?」と誘い、学校に通わせたり親元に戻したりして社会にもう一度組み込んでいく。ただ現状は厳しく、学校に行くと稼ぎが減って親に怒られ、家族が食べられなくなるので路上に戻りたがる子も多かった。
「町を歩けば、外国人の私に『仕事ない?』と声をかけてくる若者たち。働く気はあるのに手段がない状況を何とかしたい、と思いました」
路上生活を送る子どもたちが学校に行くためには、まずは親世代が安定した収入を得ることだ。そう気づいてからは、親世代の仕事づくりに注力していった。もともと施設で教えていた牛の角を加工する技術を独立させ、工房を立ち上げて施設を卒業した青年たちに働く場を与えた。「薬物使用など不良傾向が強い子もいて、騙されたり裏切られたり、お金を持ち逃げされることもありましたが、一人でも喜んでくれる人がいると報われた気になりました。施設を卒業した子が仕事に就き、コツコツお金をためて家を建てたよ、結婚したよ、と報告してくれると『よっしゃ!』という気持ちになります」
協力隊では「くじけない心」を育ててもらったという田中さん。「できない理由を探すのは簡単ですが、やるためにどんな工夫ができるか、と考えるようになりました。強くなったし、『なんとかなる』と思えることが一番の収穫です」
小中学生くらいの男の子たちに声をかけ、施設に連れて行っては着ている服を洗濯させ、洗濯物を乾かしている間に読み書き、計算、理科の実験などを教える。子どもたちは昼ご飯を食べ、きれいになった服を着て、また居場所に戻っていく。だんだん気心が知れて安心してくると、「ここに住まない?」と誘い、学校に通わせたり親元に戻したりして社会にもう一度組み込んでいく。ただ現状は厳しく、学校に行くと稼ぎが減って親に怒られ、家族が食べられなくなるので路上に戻りたがる子も多かった。
「町を歩けば、外国人の私に『仕事ない?』と声をかけてくる若者たち。働く気はあるのに手段がない状況を何とかしたい、と思いました」
路上生活を送る子どもたちが学校に行くためには、まずは親世代が安定した収入を得ることだ。そう気づいてからは、親世代の仕事づくりに注力していった。もともと施設で教えていた牛の角を加工する技術を独立させ、工房を立ち上げて施設を卒業した青年たちに働く場を与えた。「薬物使用など不良傾向が強い子もいて、騙されたり裏切られたり、お金を持ち逃げされることもありましたが、一人でも喜んでくれる人がいると報われた気になりました。施設を卒業した子が仕事に就き、コツコツお金をためて家を建てたよ、結婚したよ、と報告してくれると『よっしゃ!』という気持ちになります」
協力隊では「くじけない心」を育ててもらったという田中さん。「できない理由を探すのは簡単ですが、やるためにどんな工夫ができるか、と考えるようになりました。強くなったし、『なんとかなる』と思えることが一番の収穫です」
目の前にいる人が喜んでくれるかどうか、
これこそが大事
帰国後、故郷の瀬戸市が主催する「せと・しごと塾」で学びながら創業を目指した。支援を続けているルワンダの牛の角を加工する工房の製品販売と、もともと従事していたメンタル疾患の支援を含めて、自分のやりたいことをすべて事業にしてしまおうと考えた。2012年、国の障害福祉サービスのひとつである就労移行支援を行う「仕事ノアル暮らし」を立ち上げた。仕事上のストレスが原因のうつ病で退職した人や、引きこもりで就労に不安を抱えた人たちを対象に、一般企業への就職を目指し、働くための訓練をしたり、一人暮らしをするための家事の練習をしたりする専門学校のようなところだ。
「働きたい人に働くチャンスをつくる、自分らしく生きる、先の見通しをたてて計画的に生きていけるようなお手伝いができればと思っています」
将来的には、グループホームのような生活拠点をつくりたいとも考えている。「24時間365日の体制になるため責任の範囲も広がりますが、精神障害の人のグループホームはまだ絶対数が少なく、必要とされています。彼らには、地域に出ていろいろな人間関係をもってもらいたい。優しい人も意地悪な人もいるリアルな社会を見て、揉まれて、いろいろな気持ちを感じてほしいと思います」
一方、ルワンダで雇用継続している、牛の角を加工する工房の人たちの支援も続けている。「社会を変えたいなどと大きなことは言いませんが、小さくても何もやらないよりはやった方がましだ、と信じています。目の前にいる人が喜んでくれるかどうかが大事なことですから」
田中さんの目標はとても明確だ。「ルワンダでは、お金も食べ物もなくて怯えながら路上で眠りにつく人に、お金を稼ぐ手段はある、頑張れば希望は叶うよ、と信じて欲しい。日本では、この先いいことは何もないと絶望し、このまま目が覚めなければいいと思いながら眠りにつく人に、この先同じ状況は続かない、きっといいことがある、辛い状況だっていつかは終わるよ、と信じて欲しいです。明日を楽しみに眠りにつける、そんな社会を目指していきたいですね」
「働きたい人に働くチャンスをつくる、自分らしく生きる、先の見通しをたてて計画的に生きていけるようなお手伝いができればと思っています」
将来的には、グループホームのような生活拠点をつくりたいとも考えている。「24時間365日の体制になるため責任の範囲も広がりますが、精神障害の人のグループホームはまだ絶対数が少なく、必要とされています。彼らには、地域に出ていろいろな人間関係をもってもらいたい。優しい人も意地悪な人もいるリアルな社会を見て、揉まれて、いろいろな気持ちを感じてほしいと思います」
一方、ルワンダで雇用継続している、牛の角を加工する工房の人たちの支援も続けている。「社会を変えたいなどと大きなことは言いませんが、小さくても何もやらないよりはやった方がましだ、と信じています。目の前にいる人が喜んでくれるかどうかが大事なことですから」
田中さんの目標はとても明確だ。「ルワンダでは、お金も食べ物もなくて怯えながら路上で眠りにつく人に、お金を稼ぐ手段はある、頑張れば希望は叶うよ、と信じて欲しい。日本では、この先いいことは何もないと絶望し、このまま目が覚めなければいいと思いながら眠りにつく人に、この先同じ状況は続かない、きっといいことがある、辛い状況だっていつかは終わるよ、と信じて欲しいです。明日を楽しみに眠りにつける、そんな社会を目指していきたいですね」
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うつ病や引きこもりなど、やる気はあっても手段がない人に対して訓練や練習を施し、社会に出られるよう手伝いをする。
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弱い立場の人たちのために全力で取り組む田中さんの周りには、いつしか心強い仲間が集まり、「仕事ノアル暮らし」の活動を支えている。
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「仕事ノアル暮らし」ではルワンダのアクセサリーやカゴも販売。田中さんの思いがすべて詰まった、まるで宝箱のような空間だ。
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田中 悦子さん
Profile - 愛知県瀬戸市出身。関西大学大学院で社会心理学を専修し、臨床心理士資格を習得。大手企業の健康管理室で従業員のカウンセリングや研修に従事後、2006年より青年海外協力隊のソーシャルワーカー隊員としてルワンダのストリートチルドレン保護施設で活動。帰国後、瀬戸市の創業者支援を受け2012年に就労移行支援事業所「仕事ノアル暮らし」を開所、現在に至る。
- 常に利用者さん目線で考える、行動派の“ボス”
- 田中さんはとても明るくタフで、エネルギッシュな方です。「仕事ノアル暮らし」の利用者さんのことを第一に考え、少しでも彼らのためになることがあればすぐに行動開始。動きだすと止まりません(笑)。スタッフの働き方にも柔軟に対応してくださり、田中さんのおかげで、皆が助け合える、温かい職場になっています。
- 一般社団法人仕事ノアル暮らし
職業指導員 - 林 奈津子さん