日本も元気にするJICA海外協力隊 千葉県

三次 恵美子さん

三次 恵美子さん 青年海外協力隊
Emiko Mitsugi

千葉県御宿町 地域おこし協力隊

【職場】
千葉県
【職業】
地域おこし協力隊
赴任国
マーシャル諸島共和国
マーシャル諸島共和国
【赴任地】
ロンロン島
【職種】
理数科教師
【派遣期間】
2003年7月~ 2005年6月

新しい価値観を受け入れる「楽しさ」
地域に広めて「繋がり」を創出していく

マーシャル諸島での生活では、相手との違いを受け入れる楽しさを知った。
地域おこし協力隊では、イベントを通じて人と人が繋がる楽しさを広めた。
一人の親となった今、人と地域が繋がる新たな仕掛けを始めていく。

価値観の違いの受け入れ方
青年海外協力隊で学ぶ
価値観の違いの受け入れ方 青年海外協力隊で学ぶ
 学生時代、日本とケニアの学生交流を目的とした「日本ケニア学生会議」の立ち上げに関わった三次さん。底抜けに明るいケニアの人々や大自然の素晴らしさに魅了された。「現地を訪れた際、青年海外協力隊の活動を見学しました。流暢なスワヒリ語を話し、土地の文化に馴染んで、日本よりも圧倒的に不便な生活でも楽しそうに暮らしている姿はとても魅力的で、自分もいつか協力隊に参加すると心に決めたのです」
 そんな夢を叶え、大学卒業後すぐに協力隊へ。南太平洋のマーシャル諸島で高校の理数科教師として活動した。「生徒たちの学力向上のために、身近な道具を使った実験を行うなど必死でした。しかし、クリスチャン系の学校では授業よりも教会行事が優先されてしまい、私の思いと現地の考えの“違い”に葛藤しました。そのうち、マーシャルの社会で生きていくには勉強ができることよりも、教会内で受け入れられることの方が大切ということが、次第に分かってきたのです」
 価値観の“違い”を受け入れられるようになった三次さんは、毎週礼拝に参列してマーシャル語の聖歌を覚えるなど、積極的に教会行事に参加した。現地の人々の生活に溶け込むことで、“違い”に対する自身の心の持ちようが自然と分かるようになっていったという。
人と人との出会いの場
生み出す楽しみ
 帰国後、大学院進学を経てIT企業に就職した三次さん。エンジニアとしてシステム開発のプロジェクト管理に従事した。仕事にやりがいを感じていたものの、どこかで協力隊時代のような人と人、人と自然が近い生活を恋しく思う自分もいた。夫の仕事の都合で千葉県の外房地域に引っ越すことになった三次さんは、職場まで2時間の通勤生活に疲れを感じるようになり、10年間勤めた会社を退職。御宿町で募集していた地域おこし協力隊に応募し、2018年から町の移住・交流促進をミッションに活動するようになった。
 人と人との出会いを生み出すことにはもともと関心があり、自身もシェアハウスに住んでいた経験から、活動の一環としてゲストハウス兼交流スペース「サイカス」を開業。地域と都会が繋がる場所、「ここに来れば何かある」「ここに来ればいろんな人に会える」と思ってもらえるような場所にしたいと、様々なイベントを企画。県内で活動する協力隊経験者の情報交換の場になったり、子どもたちの補習塾なども開催されるようになった。
御宿とメキシコの交流を推進
人と地域を結びつける役目担う
 御宿は人口7千人の小さな町で、かつては「新宿・原宿・御宿」と言われるほど若者が集まるスポットだったが、今では海水浴ブームも去り、高齢者の占める割合が千葉県で一番高い地域となった。
 「江戸時代、遭難したメキシコ船を御宿の人が助けたことがありました。御宿は日本とメキシコの国交が始まった場所ですが、そのことはあまり知られていません。そこで『メキシコとの繋がりを活かして、魅力ある町に!』をキャッチフレーズに、メキシコに派遣された協力隊経験者に協力を仰ぎ、メキシコ料理体験イベントを開催しました」
 続いて三次さんは、協力隊のOB会が県内で毎年開催している、食を通じた異文化交流イベント『グローバルキッチン』を御宿に誘致。協力隊経験者には地域活動に関心のある人が多く、盛況となったイベントでは大いに助けられたという。
 2019年からはメキシカンタコスの屋台を開始。賑わいを創り出したい場所に屋台を出店することで、人の流れを創り出す活動を始めた。「屋台を始めて、移動可能な交流の場づくりにやりがいを感じました。今、屋台をグレードアップしたキッチンカーを準備中です。メキシコ料理に限らず、様々な国の料理を提供する『グローバルキッチンカー』として、今後はやっていきたいですね」
 地域おこし協力隊の任期を終え、2020年9月に第一子を出産した三次さん。子育てをしながら、人と地域を結びつけるような役割を担っていきたいという。駅前にあるコミュニティスペースを子どもと年配者との交流の場にしてみたいなど、アイディアは尽きない。
 「魅力的な地域であっても、観光で訪れるだけでは深い魅力は伝えられません。地域の人と交流するような仕組みを創り出していくことで、よりディープな御宿を好きになってもらえたらと思います」
 御宿町のどこかでキッチンカーを見かけたら、ぜひ足を止めてほしい。
  • グローバルキッチンを開催した時の様子
    グローバルキッチンを開催した時の様子。様々な国の料理を調理から実食まで行い、多様な食文化が体験できると評判。
  • 千葉県の青年海外協力隊OB会メンバーとともに国際交流イベントに参加
    千葉県の青年海外協力隊OB会メンバーとともに国際交流イベントに参加。様々な活動を通じて地域を盛り上げた。
  • タコス屋台をオープンした三次さん
    タコス屋台をオープンした三次さん。新たな人の流れを創り出し、新たな御宿の魅力を発信していく。
三次 恵美子さん
Profile
 東京都出身。学生時代に「日本ケニア学生会議」の創設に関わる。大学卒業後、青年海外協力隊に参加し理数科教師隊員としてマーシャル諸島で活動。帰国後、大学院にて農学博士前期課程を修了。ITエンジニア勤務を経て、2018年に千葉県御宿町に移住。地域おこし協力隊として移住/定住促進のためのイベントを担当する傍ら、ゲストハウス/交流スペースやタコス屋台の運営も行う。
三次さんへのエール! 新しい事にチャレンジし、活動の幅を広げていってほしい
 様々なイベントで御宿を盛り上げてくれました。バヌアツ展や昆虫食など、行政では思いつかない企画も多く、こじんまりとしていた町役場に、地域おこし協力隊として新しい風を吹かせてくれたと思います。お子さんが生まれ、教育にも関心をお持ちのようです。町の子どもたちに英語や算数を教えたり、国際協力の体験などを伝えたりするような活動にも期待しています。
御宿町 企画財政課 渡辺 純一さん
御宿町 企画財政課
渡辺 純一さん
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