日本も元気にするJICA海外協力隊 群馬県

櫻井 里奈さん

櫻井 里奈さん 青年海外協力隊
Rina Sakurai

学校法人太田国際学園 ぐんま国際アカデミー中高等部 事務職員

【職場】
群馬県
【職業】
事務職員
赴任国
マラウイ共和国
マラウイ共和国
【赴任地】
リロングウェ県ズマジ
【職種】
青少年活動
【派遣期間】
2016年10月~2018年10月

経験が人をつくる
協力隊で得た自信を糧に、学校運営に尽力

マラウイで学んだのは、自分の置かれた状況で何ができるのかを考え、行動するプロセス。
今、生徒たちにグローバルな考え方を伝え、職場や地域の外国人を支える日々を送っている。
あの日、色々な人たちに助けられた恩を、職場や地域を通じて返していくために。

異文化や価値観の違いに触れ
芽生えたマラウイ人への敬意
異文化や価値観の違いに触れ 芽生えたマラウイ人への敬意
 群馬県太田市にあるぐんま国際アカデミーは、ほとんどの教科を英語で学ぶ『イマージョン教育』を掲げる小中高の一貫教育校だ。欧米だけでなくアジア、アフリカ出身の教員も在籍しており、生徒は英語だけでなく、多様な価値観も学ぶことができる。
 櫻井さんは2011年に事務職員として同校に就職。外国人の多い職場で働くうちに彼らの生き方に刺激を受け、自分の強みや自信になるものを持ちたいと思うようになり、青年海外協力隊に現職参加※。東アフリカのマラウイへ派遣され、教育委員会に配属されて学区内の学校を巡回し、教育環境の把握に努めた。「私には特別なスキルがありませんでした。だからこそ、何にでも対応できる心構えを大事にしていました」
 そんな櫻井さんは、学校を巡回するうちにあることに気づく。田舎では収穫期になると家の農作業を手伝う生徒が多く、学校を休むのが普通だった。「教育をオプションとして扱わざるをえない、彼らなりの生活事情があったんです」
 学校教育が最優先ではない価値観の背景を理解するにつれ、現地の人たちに対し以前よりも敬意の念を抱くようになったという。「彼らは家族や人と過ごすことで心の豊かさを育んでいて、それが魅力的に感じました」
※所属先の身分を保持したまま、休職してJICA海外協力隊に参加すること。
太田市とマラウイ
ホストタウン締結に尽力
 太田市は、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)でマラウイのホストタウンに登録されている。ぐんま国際アカデミーの設立に尽力した太田市長から、活動中の櫻井さんに打診されたのがきっかけだった。
 市とマラウイが姉妹都市のような関係になることを願っていた櫻井さんは、あらゆる人脈を辿って現地の関係者と交渉。最初は相手にすらしてもらえなかったが、東京2020大会でホストタウンとして受け入れたい、という思いを訴え続けた。そんな櫻井さんの思いを実現してくれたのが、人の繋がりだった。「教育委員会のメンバーと出会い、多くのご縁を辿って最後は青少年スポーツ省大臣を紹介してもらい、市長との会合までつなげることができました。いろんな偶然が重なって最良の結果になったんです」櫻井さんはホストタウン締結実現の立役者になった。「偶然」というよりは、一瞬のチャンスを逃さずに掴み取る熱意が、この結果を生んだのであろう。
 残念ながら、コロナ禍により、市民とマラウイ選手との交流事業は実現に至らなかった。しかし、自分の置かれた状況で何ができるか、考えながら行動し、多くの人たちを巻き込んでホストタウン構想を実現できたことは、櫻井さんにとって大きな自信となった。
培ったグローバルな視点
職場や地域で活かす
 帰国後、同校に復職した櫻井さん。「世界に貢献したいと考えている生徒が多いので、彼らに様々なヒントを与えられる存在でありたいですね」積極的に交流を図る姿は生徒にも影響しているようで、つい先日も、課題解決能力を育む授業の一環で、途上国の衛生問題を取り上げた生徒から相談を受けた。彼らが作った手洗いの啓発動画をマラウイの子どもたちに見せて、感想を聞きたいというものだった。そんな時、櫻井さんは現地のありのままの姿を伝えるようにしているという。
 同校が、サイズの合わなくなった靴を集めてアフリカに送る『スマイル アフリカ プロジェクト』に参加した際も、集めた靴が必ずしも現地の子どもの手に渡るとは限らず、目の前の生活に困っている人がお金に換えてしまうこともある。しかし、そのおかげで生活できる人もいるということを生徒に説明したという。「アフリカの子どもが日本から送られた靴を履き、怪我をしなくなってよかったという単純な話ではなく、少しでも違う見方ができるようになったらいいなと思います」
 櫻井さんは外国人職員から相談を受ける担当だ。文化の違いから日本での生活に戸惑うことなど、様々な声に耳を傾けている。他にも職場以外で自分の空いている時間を利用し、SNSを通じて太田市に住む外国人で日本語の補助が必要な人の手助けをしているという。マラウイで色々な人に助けられた恩を、職場や地域を通じて返していくその姿は、協力隊経験者ならではと言えるかもしれない。
  • 事務の業務だけでなく、自分にできることを自ら探すバイタリティーに溢れている
    櫻井さんは事務職員としては珍しく生徒とよく話をする。事務の業務だけでなく、自分にできることを自ら探すバイタリティーに溢れている。
  • 外国人職員らと打ち合わせをする櫻井さん
    外国人職員らと打ち合わせをする櫻井さん。出身国が違うと色々な意見が飛び交うため、可能な限り彼らの考えに耳を傾け、対応するよう心掛けている。
  • 途上国の様子について生徒から相談を受けることも
    途上国の様子について生徒から相談を受けることも。彼らの学びの場に自身の経験を還元できるのは大きな喜びとなっている。
櫻井 里奈さん
Profile
 群馬県出身。大学卒業後、学校法人太田国際学園ぐんま国際アカデミーに事務職員として就職。同僚の外国人職員の生き方に刺激を受け、興味のあった国際協力に挑戦することを決意。2016年10月、青年海外協力隊に現職参加。マラウイに派遣され、青少年活動隊員として活動。帰国後、復職して中高等部で外国人職員の対応を任される傍ら、生徒たちに協力隊経験を伝えている。
櫻井さんへのエール! 協力隊経験を積極的に活かしてほしい
 学校の事務職は生徒さんと関わることが少ないのですが、彼女は積極的に関わっています。元気でやる気もあり、責任感もある。バランスの取れた考え方ができる人です。マラウイから戻ってきて自信がつき、自主的に色々な事ができるようになりました。今は外国人の職員対応をしており、役に立つとはどういうことなのか自ら判断してやっています。これからも職場を良くしてくれる縁の下の力持ちであってほしいなと思います。
ぐんま国際アカデミー中等部・高等部 事務課長 亀山 優子さん
ぐんま国際アカデミー中等部・高等部 事務課長
亀山 優子さん
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