日本も元気にするJICA海外協力隊 北海道

山田 安彦さん

山田 安彦さん 青年海外協力隊
Yasuhiko Yamada

山田農園 ファーマー

【職場】
北海道
【職業】
自営業
赴任国
スリランカ
民主社会主義共和国
スリランカ民主社会主義共和国
【赴任地】
ゴール県ゴール
【職種】
野球
【派遣期間】
2014年10月~2016年10月

野球とスリランカから学んだ大切なこと
地域を元気にする原動力に

現地の人たちの輪に飛び込み、周囲の人を巻き込んで野球の魅力を広めていった。
教えることで実績も残したが、自身が教わることも多かった、夢のような2年間。
その経験は今、農業に新しい価値を生み出しながら地域を元気にする原動力になっている。

大学時代に芽生えた海外志向
小中高と続けた野球を活かす
大学時代に芽生えた海外志向 小中高と続けた野球を活かす
 小学3年生から高校生まで野球に打ち込んできたという山田さん。将来は実家の農園を継ぐことを考え、大学は経営学部に進学した。「グローバル化の現代ですから、どんな仕事でも英語は必要になると思ったんです」英語力向上のため、学内の国際交流プログラムにも参加。来日した中国や台湾の留学生に日本語を教えたり、韓国やタイとの交流プログラムのリーダーとしても活動した。「文化や習慣が異なる留学生との出会いは、海外生活への憧れと国際交流について考えるきっかけになりました」
 そんな時、電車の中吊り広告でJICA海外協力隊の募集を目にし、説明会に参加。協力隊の職種に“野球” があることを知る。当時は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を前にスポーツ関係の募集が強化され、野球隊員の派遣要請も多い一方、応募倍率も高かった。
 「自身のバックボーンである野球で活躍できると思いました。不合格なら素直に実家を継ごうと、覚悟を決めました」結果は補欠合格、ならば農業にと準備を始めた矢先に繰り上げ合格し、スリランカへ派遣されることになった。
飛び込んで、巻き込んで
野球の魅力を広げるために
 山田さんに託されたのは、地方における野球普及と競技人口の拡大だった。配属された地方都市ゴールの『スリランカ硬式・軟式野球協会』はオフィスもなく、常駐のスタッフもいなかった。ネットワーク作りから始めた山田さんが頼ったのは、先輩隊員が育て上げた現地のコーチたち。つてを頼りに各地に散らばっていたコーチを尋ね、学校やクラブチームの練習に参加。時には大人のナショナルチームの練習にも参加した。「少しでも自分の持っている技術や知識を伝えることができたらと思いました」
 活動で最も苦労したのが用具の確保。特にグローブは、選手の利き手に合わせて右・左用、また、彼らのサイズに合わせジュニア・大人用がなければ練習ができない。そこで自ら仲介役となり、日本の野球関係者に寄付を呼びかけて用具を集め、現地のチームに届けた。
 また、グローブ修理のワークショップも開催。現地の子どもが漁具やビニール紐でグローブを上手く修理しているのを見て、その方法を学び、各地のチームのコーチに教えて普及させていった。このワークショップは、用具を大事に使うという考えを広めるだけでなく、各地の野球関係者との連携を深めるきっかけにもなったという。
 「野球の技術だけではなく挨拶などの礼儀、スポーツマンシップ、チームワークや協調性も伝える努力をしました」そんな山田さんの取り組みを通じて、子どもの変化を実感した親たちからも野球への評価が高まっていった。
日本とスリランカの橋渡し
農業を通じた地域おこし
 充実した2年間はあっという間だった。野球の普及のために、海外で暮らし活動できたことは「まるで夢のようでした」と語る山田さん。協力隊活動では、指導したチームがアジア大会で銅メダルを獲得するなど、成果を残すことができた。
 一方、現地の人たちとの日常的な交流を通じて学ぶことも多かった。家族や友人らと過ごす時間を大切にするスリランカの人たちを見て、人間にとって大事なものは何か、気づかされたという。
 帰国後、野球隊員OBらとともに『日本・スリランカ野球友好協会』を設立。発起人の一人である山田さんは理事として、野球を通じた両国の友好深化に取り組んでいる。同協会への寄付には返礼品があるが、その一つが『北海道産農産物セット』。山田さんが跡継ぎとして就農した山田農園の野菜ギフトだ。
 農園では、高品質米として人気のある『ふっくりんこ』をはじめ、ブロッコリーや玉ねぎなどの野菜を栽培しているが、山田さんの手掛けているのは生産だけではない。若手農業者と連携してオリジナル野菜スープを販売したり、地域のカフェとコラボして野菜スイーツなどのメニュー開発を手掛けるなど、生産・加工・販売の融合を図って多角経営から新しい価値を生み出す、6 次産業化※にも挑戦している。
 「途上国で暮らしたからこそ、食料生産の課題や食の大切さも分かりました。顔が見え、いろんな物語を持つ生産者と農作物、加工品で地域を元気にしていきたいです」これからも周囲の人たちを巻き込みながら、新しいモノやコトを作りあげていく。スリランカで培われた力は、故郷の魅力を大きく広げていくに違いない。
  • 栽培している玉ねぎ『山田オニオン』
    栽培している玉ねぎ『山田オニオン』。若手農業者によるファーマーズマルシェではオニオンスープとして販売、至極の一品として人気を集めている。
  •  『日本・スリランカ野球友好協会』の活動で講演する山田さん
    『日本・スリランカ野球友好協会』の活動で講演する山田さん。スリランカだけでなく世界の野球事情やそこで奮闘する人たちの様子も伝えている。
  • 観光地・函館のカフェとコラボして野菜を使ったケーキを販売
    観光地・函館のカフェとコラボして野菜を使ったケーキを販売。旅行客や地元の人たちに農園を知ってもらう機会にもなっている。
山田安彦さん
Profile
 北海道出身。大学在学中、学内の国際交流プログラムに参加。アジア圏からの留学生をサポートする活動を行う。海外生活への憧れから参加したJICA海外協力隊の募集説明会で、学生時代の野球経験が活かせることを知り、応募。2014年にスリランカへ派遣され、野球隊員として地方都市での野球普及に尽力。帰国後、農業に従事する傍ら日本・スリランカ野球友好協会の理事として活動中。
山田さんへのエール! 自分らしい農園経営を生み出してほしい
 農業の仕事はきつく、辛いことも多いと思いますが、頑張っています。協力隊参加を決めたときは心配もしましたが、これからはグローバルな時代だと思い、送り出しました。帰国後は、大人になったなと感じますし、有言実行するようになりました。農家は世間付き合いが狭くなりがちです。協力隊の人脈や若手農業者との付き合いの中から、自分らしい、新たな農業を見つけてほしいと願っています。
山田農園、母親 山田 房子さん|山田農園代表、父親 山田 長政さん
山田農園、母親
山田 房子さん
山田農園代表、父親
山田 長政さん
記事一覧に戻る
PAGE TOP