日本も元気にするJICA海外協力隊 長野県

白井 瑞穂さん

白井 瑞穂さん 青年海外協力隊
Mizuho Shirai

長野県松川町 地域おこし協力隊(ホストタウン推進員)

【職場】
長野県
【職業】
地域おこし協力隊
赴任国
コスタリカ共和国
コスタリカ共和国
【赴任地】
エレディア県エレディア市
【職種】
日本語教育
【派遣期間】
2015年1月~2017年8月

世界とつながり、地域をつくる
住民主体のホストタウン事業を目指して

2020年の東京オリンピック・パラリンピックを通じてコスタリカの魅力を広めたい。
手探りではじめたホストタウン交流事業は、青年海外協力隊で得た人脈やスキルに後押しされ、
住民を巻き込みながら地域の潜在力を引き出していく。

青年海外協力隊の学びを地域おこし協力隊へ
青年海外協力隊の学びを地域おこし協力隊へ
 人口約1万2000人の小さな町で今、コスタリカブームが起きている。2020年の東京オリンピック・パラリンピックで同国のホストタウンに認定された長野県松川町では、コスタリカ映画の上映会やスペイン語教室、小中学校の給食にコスタリカ料理が提供されるなど、さまざまな形でコスタリカ関連事業が進んでいる。町の高校生がスタディツアーでコスタリカを訪問する一方、日本に留学するコスタリカ人は必ず松川町を訪れ、町民たちと交流する流れもできている。この一連の事業の仕掛け人こそ、青年海外協力隊経験者で、現在、地域おこし協力隊として松川町で働く白井さんだ。
 大学卒業後に協力隊に参加しコスタリカに派遣された白井さんは、同国でも人気の高い日本語の教師として国立大学で活動した。毎学期、100人以上の学生たちに日本語を教える傍ら、学外では教師仲間と協力して弁論大会やセミナーの開催、日本語能力試験の実施などにも取り組んだ。特に力を入れたのが日本文化紹介などのイベント運営だ。
 「イベントを計画し、いろいろな人と交渉しながら企画を進め、実現までこぎつけるという経験は本当に自信になりました。話を聞いてくれる人がいること、頼れば協力してくれる人がいることも分かり、日本では受け身になったり不安になったりすることも、『やってみれば何とかなる』と思えるようになりました」
地域の潜在力を引き出すホストタウン交流
 こうして積極性と行動力を身に付けた白井さんは、帰国後コスタリカのホストタウンである松川町の地域おこし協力隊(ホストタウン推進員)に応募した。ホストタウン事業の進め方を模索していた松川町。白井さんの明るく積極的な性格や語学力、現地にコネクションがあることなどが評価され、採用が決まった。
 「知らない土地で新たに人間関係を育くみ、活動を広げていくことは協力隊と似ています。まずは『コスタリカってどこ?』『ホストタウンって何するの?』という声に応えるため、思いつくままいろいろな企画を立ち上げました」
 事前合宿ができないかとコスタリカのオリンピック委員会に掛け合ったが実現せず、それならばと、協力隊時代にお世話になった在コスタリカ日本大使館やJICA事務所から日本に留学する学生の情報を得て、彼らを松川町に招待し、町民と交流する流れをつくった。
 「人と人が直接触れ合うことが一番町の人たちの理解を得やすいと思うので、コスタリカの方を招待することに力を入れました。これをきっかけに子どもたちが世界に目を向けるようになり、町内に新しいつながりや活動が広がれば、松川町がホストタウンになった意味があるのかなと思います」
 町のために懸命に奔走する白井さんの姿を見て町民たちも動き出した。有志3人が立ち上げた「コスタリカくらぶ」がコスタリカに特化したお祭りを開催。スタディツアーに参加した高校生たちも巻き込んで、ステージや飲食、体験、展示など大きなイベントになった。コスタリカからのゲストによる伝統ダンスを見た小学校の先生からは、「子どもたちと練習をして選手団歓迎のときに踊ってみたい」と言ってもらえた。
 「ホストタウン事業は行政主導ではなく、町の人たちの自発性や主体性を大切にしながらやっていきたい。そうすることで地域全体が盛り上がれば、こんなにうれしいことはありません」
五輪の後も住民の心にコスタリカが残るように
 東京オリンピック・パラリンピック推進本部主催の「ホストタウンサミット2019」において、約300の自治体の中から、白井さんら4人が「ホストタウンリーダー」として表彰された。模範となる取り組みの中心的な役割を果たし、卓越したリーダーシップを発揮していることが評価されたのだ。
 事前合宿を誘致し、企業と連携してメディアに取り上げられるような大きな自治体とは一線を画す松川町だが、限られた条件の中で町民たちを巻き込み、地域に根差した活動を進めている点が認められた。
 「ホストタウンだから何となくコスタリカを応援するのではなく、町の人たちが心から応援できるように、これからもコスタリカと関われる機会をたくさん作っていきたい。そして大会後も人々の心や生活の中に少しでもコスタリカが残るような活動を展開していきたいと思っています」
 大会を終えたコスタリカの選手たちを、とびっきりの笑顔で迎える松川町民の姿が目に浮かぶ。
  • 地元高校生とコスタリカの方が直接交流できるイベントを企画
    地元高校生とコスタリカの方が直接交流できるイベントを企画するなど、2020年のレガシーとして次世代のグローバル力育成にも尽力。
  • 様々な機会を通じてコスタリカを紹介
    様々な機会を通じてコスタリカを紹介、その行動力と思いが町民の「コスタリカのホストタウン」という意識の醸成に繋がっていった。
  • ホストタウン事業を任されて僅か1年
    ホストタウン事業を任されて僅か1年、町民参加型の取り組みが認められ内閣官房から表彰される快挙を成し遂げた白井さん。
白井 瑞穂さん
Profile
 徳島県出身。学生時代より日本語教師として海外で活動することを志し、大学卒業後に青年海外協力隊に参加。2015年から2017年まで、中南米のコスタリカにて日本語教育隊員として活動。帰国と同時に長野県松川町の地域おこし協力隊(ホストタウン推進員)に応募し採用される。ホストタウンサミット2019にてホストタウンリーダー賞を受賞。
白井さんへのエール! 周りの人たちを巻き込む力が町を変えていく
 持ち前の明るさと行動力から町の人たちとすぐに打ち解け、町内のコスタリカの認知度も徐々に高まっています。仕事についての妥協は一切なく、自分で考え行動する姿に協力者も増えて、住民主体組織まで立ち上がりました。ゼロから作り上げたホストタウンの活動が国に認められ、「ホストタウンリーダー」にまで選出されるというのはすごいことです。さらなる活躍に期待しています。
松川町教育委員会 生涯学習課 生涯学習・男女共同参画係係長、片桐 比呂巳さん
松川町教育委員会 生涯学習課
生涯学習・男女共同参画係係長
片桐 比呂巳さん
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