吉岡 詩織さん
青年海外協力隊
Shiori Yoshioka
クラムボン合同会社 代表
- 【職場】
- 長崎県
- 【職業】
- 自営業
- 赴任国
-
スリランカ民主社会主義共和国
- 【赴任地】
- アンパーラ県カルムナイ
- 【職種】
- 障害児・者支援
- 【派遣期間】
- 2017年1月~2019年1月
協力隊で広がった視野
国際交流もできる放課後等デイサービスを
スリランカで学んだのは、地域の人との繋がりを大切にするということ。
「日本でも同じように、子どもを地域の中で育てることができるのではないか」
現在、多様な人を巻き込み、子どもたちが自分らしくいられる支援を目指している。
少人数での特別支援教育に感銘
経験活かして協力隊へ
一方で、バスなどのポスターで見る青年海外協力隊についても興味を持っていた。協力隊には障害児・者支援の職種がある。「特別支援学校で3年の実績を積めば、協力隊への応募資格を得られることを知りました。自分にもできることがあると思ったんです」通信教育を通じて特別支援学校教諭の免許を取得し、協力隊への扉を開いた。 ※発達障害も含めた、特別な支援を必要とする幼児・児童・生徒の自立や社会参加への取り組みを支援・指導すること。
教員が足りない現実
教材づくりで補助員をサポート
派遣されたのは、スリランカ東部の人口約13万人の中堅都市。市の教育事務所に配属され、特別支援学級が設置してある6つの学校を巡回指導するのが主な活動内容だった。「現地で気づいたのは、教員が足りていないという現実でした。小学生から中学生くらいまでの生徒が一緒に学び、4人の生徒を1人の教員が、多いところでは7人の生徒を1人の教員が担当しているような状況だったんです」
特別支援教育の免許を取得している教員は、各学級に1~2名程度。その代わり、専門知識をもたない、有給のボランティアティーチャーという補助員がサポートしていた。彼らに特別支援教育のノウハウを簡単に教えられないか―そこで考えたのが、誰でも使える教材づくりだった。1から10までの数字を並べるパズルをはじめ、手先や指先を動かす練習用としてペットボトルの蓋を開け閉めする道具など、計20種類を考案した。熱心な指導主事が教育事務所に異動してきたことで、教材の普及も加速。現地語に訳した教材集も作成し、ボランティアティーチャー向けの勉強会も実施した。「子どもたちがニコニコしながら教材で遊んでくれたのは、本当に嬉しかったですね」と吉岡さんは振り返る。
特別支援教育の免許を取得している教員は、各学級に1~2名程度。その代わり、専門知識をもたない、有給のボランティアティーチャーという補助員がサポートしていた。彼らに特別支援教育のノウハウを簡単に教えられないか―そこで考えたのが、誰でも使える教材づくりだった。1から10までの数字を並べるパズルをはじめ、手先や指先を動かす練習用としてペットボトルの蓋を開け閉めする道具など、計20種類を考案した。熱心な指導主事が教育事務所に異動してきたことで、教材の普及も加速。現地語に訳した教材集も作成し、ボランティアティーチャー向けの勉強会も実施した。「子どもたちがニコニコしながら教材で遊んでくれたのは、本当に嬉しかったですね」と吉岡さんは振り返る。
地域で育て穏やかな子に
いろんな経験のできる場を
「日本と比べて経済的な貧しさはありますが、地域の人たちは子どもたちのことをよく知っており、地域全体で彼らを育てていると感じました」吉岡さんは、スリランカで大きな気づきを得た。現地では、地域内の人の繋がりが強く、子どもたちはいつも笑顔で、穏やかな子が多いように感じた。一方の日本は、核家族化が進み、ひとりぼっちの子も多い。「日本では、ちょっとしたことでパニックになったり、癇癪を起したりする子が多い気がします。ゆとりの無さや人間関係の希薄さが、子どもたちの情緒面に影響を与えているのではないかと思います」
帰国後、吉岡さんは放課後等デイサービス※の施設に就職。考案した教材を活用するなど、スリランカでの経験を実践に活かし始めたほか、現地の民族衣装サリーの着付け体験や現地語の挨拶講座など、文化紹介も行った。「確実に子どもたちの世界が広がったと思います」地球儀を持って来ては、「先生が行ったのはどこだっけ?」と何度も尋ねる子どもたちが愛らしかった。
吉岡さんは父親の定年退職を機に、地元の地区になかった障害児通所支援施設を設立しようと一念発起。2021年2月、児童発達支援・放課後等デイサービスを行う『こども支援クラムボン』を家族とともに開所した。この施設が目指す姿はまさに、スリランカで学んだ「地域で育てる」学習支援だ。型にはまった施設ではなく、子どもたちとのコミュニケーションを重視し、様々なプログラムを考えている。編み物を教えたり、近くの畑で農作業をしたり、調理体験をしたりすることも検討している。また、外国人留学生などにも声をかけ、国際理解や国際交流も取り入れて、子どもたちの視野を広げていきたいと考えている。
「支援を必要とする子どもたちは、自信のない子が多いんです。勉強でも運動でも、何か自信を持って、楽しみながら自分らしく過ごせるよう、手伝いができればと思っています」
※障害や発達に特性のある学齢期児童が、学校の授業終了後や休日に通う、療育や居場所機能を備えたサービスのこと。
帰国後、吉岡さんは放課後等デイサービス※の施設に就職。考案した教材を活用するなど、スリランカでの経験を実践に活かし始めたほか、現地の民族衣装サリーの着付け体験や現地語の挨拶講座など、文化紹介も行った。「確実に子どもたちの世界が広がったと思います」地球儀を持って来ては、「先生が行ったのはどこだっけ?」と何度も尋ねる子どもたちが愛らしかった。
吉岡さんは父親の定年退職を機に、地元の地区になかった障害児通所支援施設を設立しようと一念発起。2021年2月、児童発達支援・放課後等デイサービスを行う『こども支援クラムボン』を家族とともに開所した。この施設が目指す姿はまさに、スリランカで学んだ「地域で育てる」学習支援だ。型にはまった施設ではなく、子どもたちとのコミュニケーションを重視し、様々なプログラムを考えている。編み物を教えたり、近くの畑で農作業をしたり、調理体験をしたりすることも検討している。また、外国人留学生などにも声をかけ、国際理解や国際交流も取り入れて、子どもたちの視野を広げていきたいと考えている。
「支援を必要とする子どもたちは、自信のない子が多いんです。勉強でも運動でも、何か自信を持って、楽しみながら自分らしく過ごせるよう、手伝いができればと思っています」
※障害や発達に特性のある学齢期児童が、学校の授業終了後や休日に通う、療育や居場所機能を備えたサービスのこと。
-
スリランカの民族衣装サリーの着付け体験をはじめ、現地語の挨拶講座などの文化紹介を通じて、子どもたちの世界を広げた。
-
子どもと米研ぎをする吉岡さん。様々な体験を一緒に行うことで、子どもが自信を持って、楽しみながら成長できるよう、応援する。
-
『こども支援クラムボン』を開所。子どもたちに寄り添い、彼らが笑顔で安心して過ごせるよう、「地域で育てる」学習支援施設を目指している。
-
吉岡 詩織さん
Profile - 長崎市出身。大学卒業後、私立高校講師を経て長崎県立鶴南特別支援学校五島分校高等部に勤務、特別支援教育に携わるようになる。2017年から2年間、青年海外協力隊に参加。スリランカにて障害児・者支援隊員として活動。帰国後、障害のある学齢期児童の支援施設に勤務。2021年2月、家族とともに児童発達支援・放課後等デイサービスを行うクラムボン合同会社を設立し、代表に就任。
- 周囲を巻き込み、引っ張ってくれる存在
- 好奇心旺盛で、何事にも臆することなくチャレンジする人。当施設で働いていた時は、スタッフのけん引役でした。自身が楽しむことを決して忘れず、知らず知らずに周りを巻き込み、温かい雰囲気をつくってくれましたね。一方で、子どもたちを叱るときの非常に厳しい表情は、とても印象的で忘れられません。同業者として、吉岡さんの更なる活躍を願いつつ、またどこかで一緒に仕事ができることを楽しみにしています。
- 放課後等デイサービスあいびぃ 管理者
- 長岡 史高さん