
奥 結香さん
青年海外協力隊
Yuika Oku
NPO法人Teto Company 理事長
- 【職場】
- 大分県
- 【職業】
- 団体役員

- 赴任国
-
マレーシア
- 【赴任地】
- サラワク州
- 【職種】
- 障害児・者支援
- 【派遣期間】
- 2014年10月~2016年10月
2つの協力隊経験を活かし、
ひとりぼっちをつくらない社会をつくる
マレーシアで学んだのは、地域と繋がることで、自分の想いを実現できるということ。
今は日本で、地域と人を繋ぎながら、誰もが集える居場所づくりに取り組んでいる。
彼女が目指すのは、障害や年齢などにかかわらず、誰もがひとりぼっちにならない社会だ。
福祉に抱いた違和感
答えを求め、協力隊へ

20歳のときに介護福祉士となり、発達医療センターなどで働きながらも福祉への違和感を抱いた。「障害の有無にかかわらず、誰もが集える居場所をつくれないだろうか」そう考えた奥さんは、次いで特別支援学校の教員となったものの、教育現場でも自身の思いを実現させることはできなかった。そんなとき、発達障害の一つである自閉症の症状が「海外で言葉も分からぬまま、一人取り残されているようなもの」と聞かされる。自身を同じような状況に置けば、自閉症がどういうものか、その苦しみが少しでも分かるのではないか。そんな思いから選んだのが、青年海外協力隊だった。
強い想いで地域を動かす
600人集客のフォーラムを主催
奥さんは、障害児・者支援隊員としてマレーシアに派遣され、教材づくりや各地の特別支援クラスの巡回、教員へのアドバイスなどを任された。巡回先の学校は、特別支援教育を発展させたいという気持ちはあるものの、それを具体化させる答えは持ち合わせていなかった。そこで奥さんは、作業療法士や保護者、教員たちが子どもたちの情報を共有することができるように、彼らの生育をまとめたサポートブックを作成。また、教員向けにFacebookグループをつくり、子どもたちとの関わり方や特別支援教育に関する教材の紹介を動画で流し、情報を届ける工夫も行った。
そんな奥さんが特に力を入れたのは、協力隊の仲間と共に開催した特別支援教育のフォーラムだった。「特別支援クラスの子どもたちは、卒業後も自立できる道が少ない。この問題を、地域の人たちと考えたいと思ったんです」好事例紹介の準備や応用行動分析学の専門家の招へいも決まった。しかし、いよいよというときに持ち上がったのが、“人が集まる催事には食事を出す” というマレーシアの慣習。食事なしでは集客に期待できないと忠告を受けた。そこで奥さんは、慣れないマレー語を駆使し、あらゆる関係先に食事代の支援協力を要請。ついには、後輩隊員の配属先から予算を捻出してもらうことに成功し、3日間の開催で延べ600人が集まる大盛会となった。「大切だと思うことに全力を注ぎ、思いをぶつけることで、地域を動かす実感を得られたことが収穫でした」
そんな奥さんが特に力を入れたのは、協力隊の仲間と共に開催した特別支援教育のフォーラムだった。「特別支援クラスの子どもたちは、卒業後も自立できる道が少ない。この問題を、地域の人たちと考えたいと思ったんです」好事例紹介の準備や応用行動分析学の専門家の招へいも決まった。しかし、いよいよというときに持ち上がったのが、“人が集まる催事には食事を出す” というマレーシアの慣習。食事なしでは集客に期待できないと忠告を受けた。そこで奥さんは、慣れないマレー語を駆使し、あらゆる関係先に食事代の支援協力を要請。ついには、後輩隊員の配属先から予算を捻出してもらうことに成功し、3日間の開催で延べ600人が集まる大盛会となった。「大切だと思うことに全力を注ぎ、思いをぶつけることで、地域を動かす実感を得られたことが収穫でした」
多世代が支えあう場所をつくる
地域のモデル事業を目指して
帰国後に奥さんが選んだのは、竹田市での地域おこし協力隊だった。「障害者や高齢者など誰でも集えるデイサービス─以前からこのアイディアを持っていました」実現に向けて場所を探しているとき、地域おこし協力隊でたまたま出会った古民家のオーナーと意気投合。建物を無償で貸してもらえることになり、2018年に『みんなのいえカラフル』をオープンさせた。老いも若きも、障害者も健常者も、利用者は話をしたり遊んだり、みんな好きなように過ごしている。こうして生まれた“ひとりぼっちをつくらない”居場所は、助成金や一般寄付、地域の人たちの手伝いで運営され、1年間の利用者は4,500人にまで達した。
また、奥さんはNPO法人Teto Companyを起業し、『みんなのいえカラフル』を運営。地域おこし協力隊任期終了後の2020年には、放課後等デイサービス『アソビバTeto』も始めた。「介護が必要になっても、その人がこれまで大切にしてきた“くらし”を楽しめる、そんな居場所づくりを広げたいですね」事業の拡大に伴い、別の古民家も購入。作業療法士や看護師の雇用も検討中だ。
こうした地域の居場所づくりは、引きこもりの防止や犯罪の抑止、介護問題の解消など、地域の課題解決と活性化、そして経済効果にも繋がっていく手応えがある。一方で、活動を広げようにも、行政の法整備などの制度が追い付いていない現実にも直面している。「モデル事業となって既存の制度を変えられるよう、私たちの活動を広く発信していきたいです」
たとえ壁にぶつかったとしても、マレーシアで鍛えられたその粘り強さと情熱で、奥さんは挑戦を続けていくことだろう。
また、奥さんはNPO法人Teto Companyを起業し、『みんなのいえカラフル』を運営。地域おこし協力隊任期終了後の2020年には、放課後等デイサービス『アソビバTeto』も始めた。「介護が必要になっても、その人がこれまで大切にしてきた“くらし”を楽しめる、そんな居場所づくりを広げたいですね」事業の拡大に伴い、別の古民家も購入。作業療法士や看護師の雇用も検討中だ。
こうした地域の居場所づくりは、引きこもりの防止や犯罪の抑止、介護問題の解消など、地域の課題解決と活性化、そして経済効果にも繋がっていく手応えがある。一方で、活動を広げようにも、行政の法整備などの制度が追い付いていない現実にも直面している。「モデル事業となって既存の制度を変えられるよう、私たちの活動を広く発信していきたいです」
たとえ壁にぶつかったとしても、マレーシアで鍛えられたその粘り強さと情熱で、奥さんは挑戦を続けていくことだろう。
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『みんなのいえカラフル』には、子どもから高齢者まで多くの人が訪れる。利用者の年齢差が100歳を超えることもあるとか。
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障害の有無や世代に関係なく食卓を囲み、一緒にお昼を食べる『ごはんぷろじぇくと』。気軽に交流ができる場をつくっている。
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奥さんの目指した“ひとりぼっちをつくらない”居場所。地域課題の解決に向けたモデル事業として、期待が高まっている。
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奥 結香さん
Profile - 大分県出身。介護士や特別支援学校の教員を経て、青年海外協力隊に参加。マレーシアに派遣され、障害児・者支援隊員として活動。帰国後、大分県竹田市の地域おこし協力隊として、子どもからお年寄りまでが集う地域の交流スペース『みんなのいえカラフル』を開所。現在はNPO法人Teto Company理事長として、ひとりぼっちをつくらない社会づくりを目指し、児童発達支援・放課後等デイサービスなどを運営。
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地域と人を繋いでくれる存在
- 地域おこし協力隊に応募された時から、目的が明確な方でしたね。コミュニティに入るとき、自分の考えを押し付けると周りはアレルギーを起こしますが、奥さんはどんどんファンをつくり、支援者を増やしてくれました。出会いを大切にし、感謝を忘れない人だからこその成せる業です。地域の声を行政に上げてくれる、ハブ的な存在でもあります。奥さんの挑戦を、これからも一市民として応援していきたいと思います。

- 竹田市商工観光課 副主幹
- 後藤 雅人さん
