日本も元気にするJICA海外協力隊 岡山県

田賀 朋子さん

田賀 朋子さん 青年海外協力隊
Tomoko Taga

『jam tun』(ジャムタン)代表/株式会社やかげ宿 スタッフ

【職場】
岡山県
【職業】
アパレルブランド代表
赴任国
セネガル共和国
セネガル共和国
【赴任地】
タンバクンダ県シンチューマレム村
【職種】
コミュニティ開発
【派遣期間】
2014年9月~2016年9月

対等な関係でつながる
自分なりの楽しい国際協力を目指して

途上国の人々は支援の対象者ではなく、対等な人間だ。
協力隊活動を通じてそのことを実感し、自分なりの国際協力の実践へと舵を切った。
対等なつながりから生まれる国際協力を形にしていくために。

協力隊活動を通じて出会ったアフリカ布の魅力
協力隊活動を通じて出会ったアフリカ布の魅力
 岡山県矢掛町に、アフリカの布を使った服や雑貨を販売する『jam tun』がある。代表の田賀さんは、青年海外協力隊のコミュニティ開発隊員として、セネガルで活動した。現地では、自分好みの布を買って仕立て屋に持ち込み、服をオーダーメイドするのが一般的。「最初は、カラフルな色彩と派手な柄のアフリカ布は着こなせないと思い、シンプルな布を選んでワンピースを作っていました」しかし、アフリカ布の服を着ると現地の人がとても喜び、おしゃれ談議に花が咲き、アフリカ布の楽しさにハマっていったという。
 ある時、仕立て屋の路地裏に布の切れ端がたくさん捨てられていることに気づいた。「かわいい柄なのにもったいない」そう感じた田賀さんは、ごみ問題の啓発になればと、捨てられていた布の切れ端とビニールゴミを使ったリユース商品作りを企画。仕立て屋50~60人に声を掛け、商品のアイデアを募集した。その時、試作品を持ってきた職人の一人が、後に『jam tun』の現地責任者となるクイエ・コンテさん。「彼はとても誠実な人柄で、私がオーダーした服も期限内に仕上げてくれる人でした」
セネガルとつながり続けたい
思いを実現させるために起業
 学生時代から国際協力に興味があり、国際機関で働くことを夢見ていた田賀さん。イギリスの大学院で開発学を学び、協力隊に参加した。しかし、現地の持続可能性の追求に欠けるような国際協力プロジェクトがあることを知り、ショックを受けたという。「セネガルの人々と生活を共にし、彼らは支援の対象者ではなく対等な人間だと気づきました。トップダウンによる従来の援助方法ではなく、対等なつながりを持ちたいと思ったんです」
 帰国後、自分なりの国際協力の形を模索し、立ち上げたのが『jam tun』。現地のプラール語の挨拶で「平和だけ」という意味。「クイエさんをはじめ、信頼できる職人たちと対等に仕事をすることで彼らの生活が向上し、アフリカのイメージアップも図れたら嬉しいですね」
 セネガルにいるクイエさんとは、SNSで写真のやり取りをしながら仕事を進める。まず、現地の布屋に並んだ布の写真を送ってもらい、田賀さんが好みの柄を選んで購入を依頼。次に、その中から「この柄はワンピース」「この柄はズボン」とクイエさんに発注していく。その後、国際郵便で送ってもらった商品を検品、値段をつけて販売するのだが、当初は売値のつけ方も原価率の相場も分からず、試行錯誤の連続だった。
 「現地では、仕立て屋の仕事だけでは食べていけず、農期になると農家の手伝いをする職人が多くいました。しかし、クイエさんの成功を見て、自分もやりたいと声をかけてくる職人が増えてきたんです」そうした中、コロナ禍の影響でいつ荷物が届くのかわからない状況が続き、再認識したことがある。「彼らには、『jam tun』専属の仕立て屋にはならず、現地での仕事も大切にしてほしいと伝えています。お祭りの衣装作りが忙しい時期にはそちらを優先できるよう、年間スケジュールを調整するなど、お互いに無理のないような状態をキープしたいですね」
 田賀さんの仕事は、県内を中心にイベントへの出店や雑貨店などでの委託販売の他、ワークショップの開催、異業種とのコラボ企画など幅広い。「最近、一人では限界を感じていて、日本でも共感してくれる仲間を増やしたいと思っています。色んな人と作業を分担できれば、私自身も事業も、更に成長できるはずです」
楽しむことを大切に
自分なりの国際協力の形
 2021年春、倉敷市内のホテルの一室に『jam tun』がプロデュースしたコラボルームが登場した。アフリカの布を使ったファブリックやランプシェードなどのインテリアが、お客さんの目を楽しませている。身近なところからアフリカ布を知ってほしい―田賀さんの思いから実現した企画だ。次の目標は、岡山デニムや倉敷帆布など、地元の伝統ある繊維産業とコラボした商品創りだ。
 多くの人に関心を持たれ、SDGsやエシカル、フェアトレードとしても注目を集めるようになった。「でも、そういったものが流行っているからやっているわけではなく、セネガルの人々と対等につながり続ける手段として『jam tun』があるだけ。支援の気持ちよりも、商品としてかわいいな、活動として楽しそうだな、というプラスの気持ちで関わってほしいですね」
 そんな思いと活動の結果、エシカルやフェアトレードという言葉が後付けされただけだ。気負わないで楽しむ、自分なりの国際協力をこれからも形にしていく。
  • 『jam tun』の仕立屋さんたち
    『jam tun』の仕立屋さんたち。オーダーメイドを中心とした販売方法で、在庫のロスを減らし、効率の良い生産体制を目指している。
  • 県内の雑貨店で開催された期限限定の委託販売
    県内の雑貨店で開催された期限限定の委託販売。異業種とのコレボレーションは、幅広い層の人々に知ってもらう良い機会になっている。
  • 矢掛町の宿場まつり『大名行列』に運営スタッフとして参加
    矢掛町の宿場まつり『大名行列』に運営スタッフとして参加。町おこしのイベントにも関わる田賀さんは、町内在住の外国人との交流促進も担う。
田賀朋子さん
Profile
 岡山県出身。大学卒業後、イギリスの大学院に留学し開発学を学ぶ。2014年、青年海外協力隊に参加。コミュニティ開発隊員としてセネガルに派遣され、住民の生活改善のために活動。帰国後、矢掛町の町おこし会社で働きながら、セネガルとつながり続けることを目指し、現地の仕立て屋が作った服や雑貨を販売する『jam tun』を開業。現地の人々と対等な関係でつながる、楽しい国際協力を実践中。
田賀さんへのエール! 彼女ならではの事業展開に期待
 田賀さんはフットワークが良く、しっかり者で広い視野を持っていますから、私も学ぶ所が多いです。一を聞いて十を知るスタッフなので、頼りになります。アフリカの布は田舎の町では珍しく、興味を示される方が多いですね。古民家でショップを開き、ワークショップもしてくれるので知名度も上がっています。田賀さんの人柄や熱意を知っている者としては、何かお手伝いできないかなと、いつも考えています。
株式会社やかげ宿 代表取締役専務、繁森 良二さん
株式会社やかげ宿 代表取締役専務
繁森 良二さん
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