日本も元気にするJICA海外協力隊 埼玉県

土屋 雅人さん

土屋 雅人さん 青年海外協力隊
Masato Tsuchiya

SOLTILO株式会社 AFRICA DREAM SOCCER TOUR メインコーチ

【職場】
埼玉県
【職業】
会社員
赴任国
サモア独立国
サモア独立国
【赴任地】
ウポル島トゥアナイマト
【職種】
サッカー
【派遣期間】
2016年4月~2018年4月

培ったサッカーコーチの経験
スポーツを通じて夢を与える存在に

サッカーの指導と普及に心血を注ぎ、成功を収めたつもりでいたサモアでの2 年間。
帰国後に気づかされたのは、開発途上国の課題にインパクトを与える視点が欠けていたこと。
今、スポーツを通じて、アフリカの子どもたちが夢を掴むのを見届けようとしている。

サッカーの強化と普及
心血注いだサモアでの2年間
サッカーの強化と普及 心血注いだサモアでの2年間
 SOLTILO 株式会社 AFRICA DREAM SOCCER TOURでは、ケニア・ウガンダ・ルワンダのアフリカ3ヶ国を巡回し、無償でサッカー指導を行っている。エイズ孤児や元ストリートチルドレンなど、厳しい生活環境で暮らす子どもたちを対象に、スポーツを通じて夢や希望を持ってもらおうというプロジェクトだ。このメインコーチを務めるのが、青年海外協力隊経験者の土屋さん。小学生からサッカーを始め、大学生になると子どもたちへの指導にも取り組んだ。一方、海外ボランティアにも興味があり、インターネット検索で見つけた協力隊に「経験が生かせる」と参加を決めた。
 南太洋州のサモアにサッカーコーチとして派遣された土屋さんは、U-17代表チームのワールドカップ予選大会に向けて練習指導や強化遠征に同行するなど、選手の育成に努めた。当時、サモアのサッカーレベルは高いとは言えず、強化に励むも文化の違いや言葉の壁があり、頭の中で思い描く指導ができない葛藤の日々が続いたという。「海外でサッカーを教える難しさを痛感しましたが、自身の指導能力の得意不得意がわかったこと、現場での経験値を積めたことは大きな収穫でした」
 また、現地の小学校向けに巡回教室を開催するなど、サッカーの普及活動にも取り組んだ。「ラグビーが圧倒的な人気を誇るサモアでは、サッカーボールを渡しているのにラグビーを始められたこともありました。そんな環境の中、巡回先で活動する他の隊員から、子どもたちがサッカーを待ちきれずに紙でボールをつくり遊んでいるよ、と聞いたときは嬉しかったですね」土屋さんにとって「サッカーは楽しい」というマインドを彼らに広められたことは、大きな成果だった。
開発途上国の社会課題
スポーツの力で取り組む
帰国後、JICAの埼玉県国際協力推進員※1として、協力隊事業の広報や応募勧奨などを担当。それをきっかけに「スポーツと国際協力」について勉強を始め、スポーツには人を結びつける力があり、開発途上国の社会課題の解決にも様々な効果を及ぼしていることを知った。サモアでは、サッカーを普及させることが第一の目的になっていた土屋さんにとって、目から鱗が落ちる思いだった。「サッカーと国際協力に再チャレンジしてみたい」協力隊時代、コーチに誘われたことを思い出して扉を叩いたのが、SOLTILO株式会社だった。
 当時、土屋さんはサモアへ派遣されていた縁から、ラグビーW杯2019サモア代表チームのアシスタントリエゾンオフィサーに就任。サモア選手の通訳や滞在中のサポートを担うことが決まっており、ワールドカップ終了後にコーチとしてプロジェクトへの加入を果たした。「このプロジェクトは、アフリカでサッカーを教えるだけでなく、子どもたちにプログラミング教室やレストランでの調理体験など、将来の職業選択につながる場も提供しているんです。サッカーに加えて、彼らの才能の育成にも携わっているところが魅力です」サモアで積み重ねた経験を活かし、アフリカの子どもたちのレベルに合わせた指導ができるのは、土屋さんの真骨頂だ。「サモアと違ってアフリカでは、ボールを渡すと勝手にサッカーを始めてくれるのがいいですね」
※ JICA事業に対する支援や広報啓発活動の推進、自治体等が行う国際協力事業との連携促進などを担当するスタッフ。
スポーツ×社会貢献活動
広がっていく可能性
新型コロナウイルス感染症の拡大により、日本滞在を余儀なくされている土屋さん。現在は、アフリカプロジェクトのコンセプトをベースに、国内の児童養護施設や母子生活支援施設の子どもたちを対象とした、無償のサッカー教室を開催している。「大人になったら動物関係の仕事に就きたい―そんな夢を語る子どもと出会いました。そこで、ドッグ・アジリティー※2を一緒に体験し、喜んでもらえました」土屋さんは、子どもたちの何気ない声を拾い、将来彼らの可能性に繋がるかもしれないと感じたことは、出来る限り体験の機会を提供できるよう、計画・実行するという。
 アフリカ渡航を待ち望みながら様々な模索を重ねつつ、自身の夢も膨らませている土屋さん。今後は更にプロジェクトを拡大させ、子どもたちとマングローブの植林活動を行うなど、アフリカの環境保全活動にも取り組んでみたいという。
 「これから関わっていく子どもたちが、どのように夢を掴んでいくのか。その過程を見ながら、プロジェクトを更に発展させていくのが楽しみです」
※ 犬と指導手が息を合わせ、コース上に置かれた障害物を時間内にクリアしていく、犬の障害物競争。
  • ウガンダでは、元こども兵や南スーダン難民の子どもたちを対象に、サッカー教室を開催
    ウガンダでは、元こども兵や南スーダン難民の子どもたちを対象に、サッカー教室を開催。
  • ケニアの港湾都市モンバサにて、子どもたちの知見を広めるために見学会を実施
    ケニアの港湾都市モンバサにて、子どもたちの知見を広めるために見学会を実施。海の仕事や輸出入などの物流について学んだ。
  • ケニアの子どもたちにプログラミング教室を開催
    職業選択の機会を与えるべく、ケニアの子どもたちにプログラミング教室を開催。夢はプログラマーと言い出す子どもも数名いた。
土屋 雅人さん
Profile
 埼玉県出身。大学卒業後、メーカー勤務を経て青年海外協力隊員に参加。2016年よりサモアに派遣され、サッカー隊員として活動。帰国後、JICAの埼玉県国際協力推進員、ラグビーW杯2019サモア代表チームのアシスタントリエゾンオフィサーを務めた後、2019年よりSOLTILO株式会社AFRICA DREAM SOCCER TOURのメインコーチに就任。ケニア・ウガンダ・ルワンダのアフリカ3ヶ国を巡回し、サッカー教室の開催や社会貢献活動に従事。
土屋さんへのエール! プロジェクトの発展に必要な人材
 やりたいこと、やるべきことを自主的に見つけて動く彼の姿を見ると、協力隊での経験が活かされているなと感じます。ドッグ・アジリティーの取り組みも、彼の提案なんですよ。今は日本での活動が中心となっていますが、これからはアフリカで、子どもたちに有益な機会を提供してもらいたいですね。日本では思いっきり、アフリカでは頑張り過ぎず、コツコツと実績を積み上げてくれればと思っています。
SOLTILO 株式会社 営業部長兼施設管理部部長、SOLTILO ケニア代表 二村 元基さん
SOLTILO 株式会社 営業部長兼施設管理部部長、SOLTILO ケニア代表
二村 元基さん
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