日本も元気にするJICA海外協力隊 東京都

加藤 麻子さん

加藤 麻子さん 青年海外協力隊
Asako Kato

HARMONY PRESCHOOL INTERNATIONAL 保育士

【職場】
東京都
【職業】
保育士
赴任国
ルワンダ共和国
ルワンダ共和国
【赴任地】
キガリ市
【職種】
幼児教育
【派遣期間】
2008年9月~2010年11月

“違い”の乗り越え方を活かし、
日本社会と外国人の架け橋となる保育を目指す

ルワンダで学んだのは、“違い”の背景を知ることが、お互いを理解し合う第一歩ということ。
多国籍の子どもたちの保育に携わる今、その経験は日々活かされている。
様々な“違い”の架け橋となるべく、新たな挑戦を続けていく。

夢を叶えてルワンダへ
“違い”を知る大切さを学ぶ
夢を叶えてルワンダへ“違い”を知る大切さを学ぶ
 加藤さんは高校生の頃、電車の中吊り広告で募集ポスターを目にし、青年海外協力隊に興味をもった。短大卒業後、幼稚園に勤務してからも海外への興味は失せず、4年間で約40ヶ国を訪問。開発途上国を訪れた際、「全く想像できない世界で生きる人たちに出会い、こんなところで生活できたら楽しそう」と協力隊参加を決意する。
 派遣されたのはアフリカのルワンダ。幼児教育隊員として、首都にある幼稚園で情操教育を担当した。「鉛筆とノートを持たされ、読み書きを習う園児を見て、勉強よりも遊んでほしいと思いました」歌や折り紙などを授業に取り入れたが、情操教育の経験が少ない現地の教員たちは、園児の作品に点数を付け、自らが上手と判断しない限り園児が描いた絵を教室に飾らない。目に見えない感受性や創造性を養うという概念が余りなく、点数付けで評価する指導方法に驚かされた。
 加藤さんは、ルワンダの幼児教育を理解していく中で、教員たちの指導方法を否定するのではなく、子どもたちが喜ぶ姿を通して、情操教育の意義を理解してもらおうと決意。例えば、授業中に集中力が続かない園児を怒って注意するのではなく、手遊びを取り入れて園児が楽しめるよう工夫した。「楽しそうな園児の姿を見て、そのうち教員たちが私の真似をしてくれるようになりました。自分の保育論を主張し、点数付けが全てではないと言葉で伝えるより、自分の絵が飾ってあるのを喜ぶ園児たちを見せることで、教員たちは何かを感じてくれたようでした」
 “違い” を押し付けるのではなく、“違い” を知ってもらうことの大切さを、加藤さんはルワンダで学んだ。
多国籍の子どもたちに遊びを取り入れた保育を
 帰国後は、難民支援を行う団体の保育施設に勤務しながら保育士資格を取得した。今後も、多国籍の保育環境で多様な価値観に触れながら働きたいと考えた加藤さんは、その後ネパール人学校の保育士となる。「充実した毎日でしたが、ネパール式保育は読み書きが中心でした。もっと遊びを取り入れた保育をやってみたいと思ったんです」そんな時、当時から一緒に働いていた同僚が、多国籍な保育園を設立することを知る。その保育方針に意気投合した加藤さんは、立ち上げの一員として現在の職場である『HARMONY PRESCHOOL INTERNATIONAL』へ移籍した。
 現在、同園には9ヶ国の園児が通い、6ヶ国の教員が働いている。新型コロナウイルス感染症の拡大前までは、月に一度『プレゼンテーションディ』を開催。教員や子どもたちの母国料理を作って食べたり、歌や言葉を学んだりするなど、多国籍の環境だからこそできるイベントを授業に取り入れてきた。子どもたちが楽しみながら多文化に触れる場を提供できることは、加藤さんにとって喜びだっただけに、再開が待ち遠しいという。
 もちろん多国籍の同僚と仕事をする中で、考え方の違いからぶつかることも多々ある。「そんな時は話し合いをして、お互いがただ知らなかっただけ、ということに気づくことが大切なんです」ルワンダでの経験があるからこそ、“違い”を楽しみ、それを乗り越える方法を知っている強みが、加藤さんにはある。
発達障害への取り組み
外国籍親子の支えとして
 今、加藤さんの気がかりは、外国籍の子どもたちの中に発達障害が見受けられることだ。外国籍の保護者の多くは、自分の子どもは「やんちゃなだけだ」と思っており、自閉症やADHD(注意欠陥・多動性障害)など発達障害についての理解がない。多国籍の同僚も、「昔はただ言うことを聞かない子だと思っていた」という。外国籍の子どもが日本で発達障害になっても、言葉だけでなく考え方の壁もあり、相談はもちろん、診察を受けることすらままならないだろう。「言葉や慣習が異なるルワンダで、私はたくさんの人に助けてもらいました。恩返しではありませんが、今度は私が、日本で生活する外国籍の人たちを助けていきたいです」
 そんな加藤さんが次に掲げる目標は、発達障害について自身が学び、その学びを多くの同僚に伝えて、職場で活かしていくことだ。「この保育園を、日本に住む外国籍の親子が困ったときに役立つ“場所”にしていきたいです」
 加藤さんは“違い”の架け橋となりながら、自身の目指す保育に向かって歩み続けていく。
  • ヒンドゥー教の春祭り「ホーリー祭」を開催
    ヒンドゥー教の春祭り「ホーリー祭」を開催。子どもたちは、色粉や色水を互いに掛け合い、異文化を楽しみながら学んでいく。
  • 教員の母国であるポーランドの名物料理「ピエロギ」作りに挑戦
    教員の母国であるポーランドの名物料理「ピエロギ」作りに挑戦。真剣な眼差しで作り方を学ぶ子どもたち。
  • 現在一緒に働いている同僚たち
    現在一緒に働いている同僚たち。多国籍の現場ではお互いを理解し合うため、コミュニケーションを何よりも大切にしている。
加藤麻子さん
Profile
 東京都出身。短大卒業後、幼稚園に勤務しながら、25歳から29歳にかけて世界約40ヶ国を訪問する。2008年、青年海外協力隊の幼児教育隊員として、ルワンダの幼稚園にて活動。帰国後、公益財団法人アジア福祉教育財団難民事業本部の保育施設で働く傍ら保育士資格を取得。その後、ネパール人学校Everest International School,Japanでの勤務を経て、2015年からHARMONY PRESCHOOL INTERNATIONALの保育士として、多国籍の子どもの保育に従事する。
加藤さんへのエール! 人柄、知識、経験、全てが頼りになる存在
 加藤さんは、ネパール人学校からの仲間です。明るくて、誰とでも打ち解ける人柄は、出会った時から今も変わりません。海外経験が豊富で他国の幼児教育にも詳しく、たくさんのことを教えてくれます。いろんな子どもたちのニーズに合わせた対応ができる、保育士のプロですよ。当園には多国籍の子どもたちが通っていますので、これからも異文化を尊重し合える学びの場を、一緒に作っていきたいですね。
合同会社HARMONY TALISMAN代表、タパ・プラディップさん
合同会社HARMONY TALISMAN代表
タパ・プラディップさん
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