日本も元気にするJICA海外協力隊 和歌山県

笹川 恵美さん

笹川 恵美さん 青年海外協力隊
Emi Sasakawa

医療法人南労会紀和病院 診療放射線技師

【職場】
和歌山県
【職業】
医療技師
赴任国
ボリビア多民族国
ボリビア多民族国
【赴任地】
コチャバンバ県コチャバンバ市
【職種】
診療放射線技師
【派遣期間】
2018年10月~2020年8月

地域の人々の健康を支え
安心できる医療を届けていく

日本の病院で働く立場から、ボリビアの専門学校で教える立場へ。
自身を客観視しながら多様な価値観の存在に気づけた経験は、かけがえのない財産となった。
今、その経験を職場で活かし、自らの技術の向上と後輩の育成につなげ、地域医療に貢献している。

職場での応援を受け
世界でも医療貢献を
職場での応援を受け 世界でも医療貢献を
 和歌山県橋本市、この地域の中核病院として地元の信頼を集める紀和病院に、笹川さんは勤めている。診療放射線技師として通常のレントゲン撮影のほか、マンモグラフィ、CT、MRIなどの機器を扱い、撮影を行う忙しい毎日だ。
 「青年海外協力隊への応募を決めた当初、職場に現職参加※の実績はありませんでした。上司に相談したところ、見知らぬ環境で医療貢献を図ろうとする姿勢を応援してくれ、すぐに制度を整えてくれました。活動を終えて復職した今も、ボリビアでの経験を院内にレポートしてほしいと院長から依頼されるなど、法人全体で温かく理解してくれていることは、本当にありがたいです」
 笹川さんが協力隊として赴任したのは、ボリビアの医療系専門学校。レントゲン技師の養成クラスに配属され、生徒への指導をはじめ、教科書の見直しや新しい教材作りなどの支援を行った。生徒は、高校を卒業したばかりの若者から40歳近い中年層までさまざまだったが、全員が手に職をつけたいと熱心に学んでいた。
※所属先の身分を保持したまま、休職してJICA海外協力隊に参加すること。
まずは進め
信頼を得ながら教える立場へ
 赴任当初は、授業をスムーズに進行するには拙かったスペイン語も、大量の教材作りなどで鍛えられ、会話力も向上していった。「教える立場として、徐々に信頼を得られるようになっていったと思います。真面目な話だけでなく、冗談を言って笑い合える関係になれたことも、うれしかったです」言葉が上手く話せなくても、分からないことだらけでも、“悩むより、まずは進め”と自身を奮い立たせ、行動したことが結果に結びついたという。
 ボリビアの医療格差は大きく、貧しい人は病気になっても適切な治療が受けにくい。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、笹川さんは現地の人々に手洗いの習慣が定着していないことに着目し、正しい手洗いの方法や重要性を説くポスターを制作。上司に掲示場所を相談するとすぐに関心をもたれ、急遽手洗い講座を実施することになった。手にウイルスと仮定した色を塗り、人と握手をすると相手の手に色(ウイルス)が付くなど、実演を交えながら石鹸で手を洗う重要性を説明した。帰国前の限られた期間だったが、現地の人と直接コミュニケーションを取りながらコロナ対策を実践できたことは、効果的だったと振り返る。
 協力隊での経験を経て、世界の多様性を知ることができたとともに、自分がどこにいようとも、自分の探求心や根本は変わらないと気づいた笹川さん。「他の協力隊員とでさえ様々な考え方の違いがありました。現地の人と自分とが違うことは当然です。また、赴任前に日本の協力隊訓練所で出会った人たちからも影響を受けました。日本で普通に働いていたら出会わないような人たちと知り合い、いろいろな経験が聞けたことは、大きな財産です」
 それぞれの考えやできることが違うため、自分の尺度のみで考えてたどり着く先は、必ずしも正解ではないと感じられるようになった。復職してからは、以前より広い視野で周りを見られるようになり、ドクターや同僚、患者の意見や気持ちを汲みながらコミュニケーションをとれるようになったという。
自分と職場のレベルアップを図り
患者に最善の医療を
 技師という医療現場の仕事を離れ、他人に教える立場になったことで、自分の撮影技術を客観的に振り返ることができるようになったという笹川さん。「より丁寧な、質の高い検査を行えるようになりました。誰かのために、誰かと共に頑張った経験は、自分を支えてくれる力になると学びました。今後は、ボリビアでの指導経験を活かして、病院の後輩育成にも力を入れていきたいと考えています」誰が撮影しても、患者の負担が少なく、精度の高い画像を提供できるように、自分を含めた放射線技師のレベルアップを図るつもりだ。
 ボリビアでは、初めて見る医療機器に現地の人が怖がる姿を目の当たりにし、安心して検査を受けてもらう重要性を実感した。「日本でも、説明不足によって不安を抱えながら検査を受けている人がいないか、心を配りながら患者に最善の医療を届けたいです」
 今後もさらに自分磨きを忘れず、安全面に配慮しながら、医師の指示を受けて適切な放射線検査を行っていきたい。そのためにも、自身の専門技術の向上を目指して勉強時間を増やすなど、日々できることから一つずつ実践していく。
  • 当初は苦労したスペイン語
    当初は苦労したスペイン語。授業担任や教材作成を積極的に担っていくことで、語学力だけでなく信頼度も向上させていった。
  • ボリビアでの技能実習の様子
    ボリビアでの技能実習の様子。「一方的に教えるのではなく、一緒に考えながら進むこと」が協力隊の役割と気づかされたという。
  • 自分にできることを常に考え、行動するよう心掛けている
    患者一人ひとりに最適な医療が施されるよう、広い視野で周りを見ながら、自分にできることを常に考え、行動するよう心掛けている。
笹川 恵美さん
Profile
 大阪府出身。専門学校を卒業後、放射線技師として関西圏に展開する医療法人に入職。ヘアドネーションをきっかけに「誰かのために行動することは難しくない」と気づき、自身の技術を活かして海外で働くことを模索。2018年、青年海外協力隊に現職参加。ボリビアに派遣され、診療放射線技師隊員として活動。帰国後、復職し更なる専門技術の向上を目指している。
笹川さんへのエール! 職場の潤滑油であり、外国籍患者との橋渡し的存在
 仕事は迅速で、多忙な部署にも積極的に手伝いに行ってくれます。帰国後は、先輩や後輩の意見を聞く姿勢に加え、自分の意見や考えを述べる力も向上したように感じます。昨今、国内の外国人労働者が増え、彼らの診療や健康診断も増加してきています。彼らが日本の医療機関にかかる際には、文化の違いなどにより戸惑うことも多いと思いますので、橋渡しの役割も担ってほしいと期待しています。
医療法人南労会 紀和病院 診療技術副部長 國眼 勇さん
医療法人南労会 紀和病院
診療技術副部長
國眼 勇さん
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