渡邉 直樹さん
青年海外協力隊
Naoki Watanabe
株式会社キフキフ 代表取締役
- 【職場】
- 山形県
- 【職業】
- 会社経営者
- 赴任国
-
モロッコ王国
- 【赴任地】
- モハメディア市
- 【職種】
- 視聴覚教育
- 【派遣期間】
- 2004年7月~2006年7月
協力隊の経験をテレビ番組制作に活かして
地元の「宝」を発掘し、伝えたい
モロッコでは多くの時間を費やし、回り道をしながらも「かけがえのないもの」を得た。
「暮らしてみないと分からない」その土地の素晴らしさ、そして「みんな同じ」ということ。
今、その経験を糧にしながら地元の「宝」を発信している。
自身の技術をアピール
帰国を前に成果を挙げる
「待っていても仕方がない、何かできることから始めてみよう」そんな前向きな気持ちで取り組んだのが、学生向けの日本語教室。挨拶などの簡単な日本語を教える程度だったが、海外志向が強い学生たちの間でたちまち人気となり、多い時には20人近くが集まるほど好評だった。
また、他の専門学校職員に動画撮影や編集のノウハウを教えたりもしていたが、心のどこかで焦りがあった。「視聴覚教育の隊員として派遣された以上は何らかの足跡を残したいという、プロフェッショナルとしての自負があったんです」その思いを実現するため、学校長や管轄する観光庁に自身の技術や企画をアピールし続けた。
赴任から1年半、ようやく企画が認められ、学生レポーターによる学校案内や教員・学生総動員の紹介ビデオなどを制作するに至った。帰国を間近にして、2年間分の仕事を一気にやり遂げた満足感があった。
きっかけは担当の情報番組
暮らしたことでわかったこと
協力隊参加のきっかけは、ディレクターとして担当したテレビ番組だった。東ティモールやパレスチナで医療支援活動をしながら、途上国の映像とライブ音楽を織り交ぜた『地球のステージ』を上演している、国際理解教育の活動家としても著名な桑山紀彦氏。彼の出演する番組の動画編集ディレクターを務めたのが、渡邉さんだったのだ。「桑山氏の映像を見るうちに、自分も現地に行ってこの目で見てみたいと思ったんです」そんな時、電車の中吊り広告で目にしたのが協力隊の募集だった。
派遣された2004年は、3月にスペイン・マドリード列車爆破テロ事件が発生。モロッコ最大の都市カサブランカでも爆破テロがあり、渡邉さん自身もイスラム教徒の多いモロッコに対して「怖いイメージ」を抱いていた。
しかし、その恐怖心は現地で暮らす中で消えていった。周囲の人たちはみな優しく、仲間思い。異教徒でよそ者の渡邉さんにも温かく接してくれたという。モロッコのどの地域へ行っても、「どこから来たの」「困ってないか」「家で食事を」と見ず知らずの外国人を手厚くもてなしてくれた。「友人が増えるにつれ、ここで困ることはない、何かあってもコミュニティが守ってくれるという安心感さえありました。暮らしてみないとその土地のことは分からない、そう痛感しました」
派遣された2004年は、3月にスペイン・マドリード列車爆破テロ事件が発生。モロッコ最大の都市カサブランカでも爆破テロがあり、渡邉さん自身もイスラム教徒の多いモロッコに対して「怖いイメージ」を抱いていた。
しかし、その恐怖心は現地で暮らす中で消えていった。周囲の人たちはみな優しく、仲間思い。異教徒でよそ者の渡邉さんにも温かく接してくれたという。モロッコのどの地域へ行っても、「どこから来たの」「困ってないか」「家で食事を」と見ず知らずの外国人を手厚くもてなしてくれた。「友人が増えるにつれ、ここで困ることはない、何かあってもコミュニティが守ってくれるという安心感さえありました。暮らしてみないとその土地のことは分からない、そう痛感しました」
『キフキフ』に込めた思い
地元の「宝」を発掘、発信する
帰国後、渡邉さんはテレビ番組の制作などを請け負う『株式会社キフキフ(kifkif)』を設立した。『キフキフ』の語源はアラビア語で、フランス語にもなっている「同じ」という意味。日本もモロッコも、先進国も途上国も「みんな同じ」という意味のほか、「格差をなくす」という願いも込めた。
現在、担当している仕事の一つに『われらラーメン王国』がある。地元民放で2010年から続く長寿番組で、渡邉さんが当初からディレクターを務めている。タレントが地元ラーメンを紹介するだけでなく、県在住の外国人にアンケートをするなど、協力隊経験者らしい発想も活かした番組構成は人気を呼び、高い視聴率を獲得しているという。「番組制作は一球入魂、いつでも全力投球が信条です」
モロッコから帰国して気づいたことがあった。「控え目」「主張や発信が下手」という、山形県人の県民性のことだ。モロッコ人は自己主張する人が多かったが、主張が苦手で控え目な人も少なくなかった。山形県人も同じで、主張や発信が得意な人もいれば苦手な人もいる。そう、まさに『キフキフ』なのだ。「自分ができることは、主張や発信を苦手とする人たちの手助けをすること。そうして地元に埋もれている様々な『宝』を発掘し、広く発信していきたいです」
実家がある中山町では、同じくモロッコに派遣された協力隊員の妻が、木のおもちゃやアナログゲームを扱う『人をつなぐおもちゃ屋ふわり』を経営している。これからも二人三脚で人の輪を広げ、地元ならではの『宝』を発信していく。
現在、担当している仕事の一つに『われらラーメン王国』がある。地元民放で2010年から続く長寿番組で、渡邉さんが当初からディレクターを務めている。タレントが地元ラーメンを紹介するだけでなく、県在住の外国人にアンケートをするなど、協力隊経験者らしい発想も活かした番組構成は人気を呼び、高い視聴率を獲得しているという。「番組制作は一球入魂、いつでも全力投球が信条です」
モロッコから帰国して気づいたことがあった。「控え目」「主張や発信が下手」という、山形県人の県民性のことだ。モロッコ人は自己主張する人が多かったが、主張が苦手で控え目な人も少なくなかった。山形県人も同じで、主張や発信が得意な人もいれば苦手な人もいる。そう、まさに『キフキフ』なのだ。「自分ができることは、主張や発信を苦手とする人たちの手助けをすること。そうして地元に埋もれている様々な『宝』を発掘し、広く発信していきたいです」
実家がある中山町では、同じくモロッコに派遣された協力隊員の妻が、木のおもちゃやアナログゲームを扱う『人をつなぐおもちゃ屋ふわり』を経営している。これからも二人三脚で人の輪を広げ、地元ならではの『宝』を発信していく。
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東根市の果樹園で、旬を迎えたサクランボを撮影する渡邉さん。県の人々に寄り添い、その土地の魅力を発信する。
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山形テレビ『やまがた百景』のロケにディレクター兼カメラマンとして参加。番組制作のために道なき道を進むことも厭わない。
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山形テレビで放送中の番組『われらラーメン王国』の編集をする渡邉さん。地元の人々に愛される番組のディレクターを務めるのは誇りだという。
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渡邉 直樹さん
Profile - 山形県出身。高校を卒業後、東京の大学に進学するも中退。帰郷してテレビ番組制作会社に就職し、地元テレビ局に出向して8年間勤務。2004年、青年海外協力隊に参加。モロッコに派遣され、視聴覚教育隊員として活動。帰国後、テレビ番組の企画制作会社を設立し、山形県と宮城県を中心に活動中。2019年、協力隊の県OB会であるNPO法人山形県青年海外協力協会の会長に就任。
- 幅広い視点でつくるユニークな番組制作に期待
- 番組の制作指導から進行管理などのディレクション、映像撮影、取材、編集で力を発揮してもらっています。青年海外協力隊の経験で培われた視点の幅広さが、グルメ系などの軟らかいネタから行政系などの硬いネタまで、番組制作に活かされています。勉強家で難しい企画にも挑戦し、分かりやすい番組を作ってくれます。ベテランとなった今、これからは後輩への指導も期待しています。
- 株式会社山形テレビ 制作部長
- 工藤 良一さん