
(上)任国の学校にて英語の授業を行う山縣隊員
(下)算数を勉強する児童たちの様子
- 子どもたちへ伝えるために
世界が抱える問題を体験 大学時代は教育学部に在籍し、中学校や高校の英語教員を目指していました。日本の教科書には、水道が使えない国があるとか、働いた賃金をきちんともらえず苦しい生活を強いられている人がいる等といった話がよく出てきますが、私はそういった話をする際に、それが現実であることを現地で実感した上で教えたいと思っていました。JICA海外協力隊に応募することを決めたのも、英語教師としてのスキルアップだけでなく、国による習慣や文化の違いを実感したり、世界が抱える課題に現場で取り組んだりすることで、帰国後にそれらの経験を子どもたちに伝えられると考えたためです。
パプアニューギニアへは、困難を抱えた子どもたちに寄り添いながら健全な育成を目指す「青少年活動」の隊員として赴任して、現地の教会が運営する小学校で、英語と算数を教えていました。オロ州ポポンデッタという街で小学3年生の担当をしていたのですが、生徒に配布されるべき教科書が満足に行き渡らず、机や椅子も満足にない状態でした。子どもたちが教師の板書を写すだけの授業が行われ、学習環境が整わないことも、生徒の基礎学力不足につながっていると感じました。
最初は私自身が教壇に立つのではなく、先生が授業をして私が助言する形での支援を考えていました。ですが、物がない・設備がないという環境では、日本と同じように物事が進まないと感じ、実際に自分で授業をしてみないと助言もできないと気付き、自分でも授業をするようになりました。
算数では、計算能力の向上のために、5×5のマスの交差する数字を計算する「25マス計算」を取り入れました。さらに数の理解を深めてもらうため、リンゴや棒などの絵を見せて、物と数を結び付けられるように指導しました。英語は、読み書き能力向上のために、綴り字と発音との間にある規則性を学ぶ「フォニックス」を取り入れ、語彙数を増やすため、リズムに合わせて単語をつなげて歌う教育手法にも挑戦しました。その様子を見て、他の先生から「今度うちのクラスでも歌ってよ」と言ってもらえたことは、とても嬉しかったです。