在日日系人が培った知識と経験を生かしたコミュニティ防災力強化事業

プロジェクトニュース

プロジェクト名

(和)在日日系人が培った知識と経験を生かしたコミュニティ防災力強化事業
(英)Capacity-Building Project For Community-Based Disaster Risk Reduction Utilizing The Knowledge And Experiences Of Latin-American Nikkeis In Japan

【画像】

対象国名

ペルー

署名日

2022年10月19日

協力期間

2023年1月~2028年1月(計60か月)

相手国機関名

フェ・イ・アレグリア第33校(FA33)
ミ・ペルー区H地区近隣災害リスク管理委員会(CVGRD)

日本側協力機関名

特定非営利活動法人エフエムわいわい
協力団体:ひょうごラテンコミュニィ

背景

ペルーは環太平洋地震帯に位置する地震・津波多発国であり、これらの災害は同国の社会・経済に大きな被害をもたらしている。近年においては、2001年に南部アレキパ地震(M8.2)、2007年の中部イカ州大地震(M7.9)、2017年のアレキパ地震(M6.3)が発生し、いずれも多くの死傷者と経済被害をもたらし、繰り起こる地震・津波の被害は、当国の持続的な発展の阻害要因となっている。ペルー国内においても、災害時の被害軽減は喫緊の課題であると認識されており、ペルー政府は災害リスクへの対応のため、2011年5月に「国家災害リスク管理システム」(以下、SINAGERD)を制定し、大統領直下の諮問機関として、ペルー国家防災庁(以下、INDECI)及びペルー国立防災・減災センター(以下、CENEPRED)を位置付け、災害被害の削減を行っていくこととしている。また、行政は防災・減災・災害対応などを、区の総合計画や地震災害対応計画の中で定めている。その他、1986年に実施されたJICA技術協力プロジェクトにより設立された、日本・ペルー地震防災センター(CISMID)は、SINAGERDのメンバーであり、INDECI・CENEPREDと災害に係る包括協定を締結し、災害時の情報共有に係る研究を行っている。

しかし、地震・津波の観測や被害予測に係るデータが統一システムで管理されていないため、災害後の包括的な状況把握ができず、それらデータのリアルタイムでの入手が困難であることから、都市部のライフライン・重要建築物の被害予測ができていない。また、防災スピーカーや防災無線は行政によって導入されておらず、学校における防災教育は、国レベルでも地域レベルでも制度化されていない。本事業が実施されるカヤオ特別郡ミ・ペルー区は、近年地震の危険性が危惧されているリマ首都圏の北部に位置しており、その地理的、地形的条件から地震に対してきわめて脆弱である。同区はもともと砂漠と乾燥した丘陵地であったが、1985年の入植開始以来、急速に宅地化、都市化された。軟弱地盤地や急傾斜地に建物が密集していることから、地震、土砂災害に脆弱であるが、それに対応した防災の取り組みは、行政、住民、市民組織のいずれによっても限定的である。そのような状況下で住民有志が10年前に立ち上げた自主防災組織CVGRD(ミ・ペルー区H地区近隣災害リスク管理委員会。)とミ・ペルー区で就学前、初等、中等の3つのレベルの教育を行っている公立教育機関(フェ・イ・アレグリア第33校。略称FA33)をカウンターパートとし本事業は実施される。カヤオ特別郡ミ・ペルー区における住民の自主防災力を高め、住民と行政の協力体制を整えることを通して、対象地域のコミュニティ防災力の向上を図り、同国の課題解決に長期的に貢献するものである。

プロジェクト目標

対象地域において住民と行政の協力のもとでコミュニティ防災力が向上する。
(注)コミュニティ防災力とは、コミュニティを取り巻く行政、地域社会の担い手などの幅広い関係者との連携、協働によって、防災活動にかかわるアクターによる予防(事前の備え)、緊急対応、事後対応が共助により実施されるコミュニティの持つ能力を意味する。

対象地域

カヤオ特別郡ミ・ペルー区

成果

1.地震、土砂災害、火事に対応できる住民の防災スキルや知識が向上する。
2.災害情報を住民に伝達し、平時には住民の防災力向上に役立つ情報を提供する地域メディアが整備される。
3.対象地域の公立学校において、防災教育のカリキュラムが完成し、教職員による園児、児童、生徒、保護者への適切な防災教育が継続的に実施される体制が整備される。
4.対象地域における官民協働の地域防災プラットフォームへの住民や市民組織の参画が促進され、官民協働での防災活動が継続的に実施される。

活動

1-1:事業対象地域で起こり得る災害に対する危険度を判定する調査を実施する。
1-2:防災リーダーを養成する研修トレーナー育成を目的にしたプログラムを作成する。
1-3:防災リーダーを養成する研修トレーナーを育成する。
1-4:防災リーダーを養成する研修プログラムを作成する。
1-5:地域の防災リーダーを養成する防災研修を実施する。
1-6:住民を対象にした防災研修を自主防災組織CVGRDとともに実施する。
1-7:ペルー国内の地震災害の被災地(ピスコ、イカなど)を訪問し、震災の記憶と復旧、復興、防災の取り組みを学ぶ。
1-8:阪神・淡路大震災および熊本大震災の被災地における自主防災組織の取り組みを学ぶ。
1-9:コミュニティ防災の取り組みに関して住民への聞き取り調査およびアンケート調査を実施し、結果を公表する。

2-1:自主防災組織CVGRDの中に情報通信委員会を作る。
2-2:地域防災情報を伝達する人材を育成する研修プログラムを作成する。
2-3:地域防災情報を伝達する人材を育成する研修を実施する。
2-4:可搬型無線機を導入し、運用訓練を実施する。
2-5:早期警報ツールを活用し、定期的に住民に向けた情報伝達を行う。
2-6:可搬型の災害時ラジオ放送システムを導入し、運用訓練を実施する。
2-7:自主防災組織CVGRDが開発している早期警報システムを改良し、パイロット装置を導入する。
2-8:活動A-2-4から活動A-2-6で導入した機器を配置した地域防災情報センターを整備し、定期的に住民に向けた情報伝達を行う。
2-9:自主防災組織CVGRDが行政と連携して住民に情報を届ける訓練を実施する。
2-10:阪神・淡路大震災および熊本大震災の被災地における防災情報伝達に関わる取り組みを学ぶ。
2-11:コミュニティ防災の取り組みに関して住民への聞き取り調査およびアンケート調査を実施し、結果を公表する。

3-1:モデル校に防災教育活動に取り組む防災委員会を作る。
3-2:モデル校で実施する防災教育のための教材、プログラムを作成する。
3-3:モデル校の教職員が防災教育の担い手になるよう研修、指導を実施する。
3-4:モデル校での教育カリキュラムの中に防災教育を盛り込む。
3-5:モデル校で教職員による園児、児童、生徒、保護者を対象にした防災教育の授業を実施する。
3-6:モデル校の教職員を対象に防災教育の研修トレーナーを養成する。
3-7:モデル校の防災教育カリキュラム対象地域の他の公立小中学校に広げる。
3-8:上記A-3-1~A-3-5の活動による防災教育カリキュラムをミ・ペルー区役所に防災教育モデルとして提言する。
3-9:阪神・淡路大震災および熊本大震災の被災地の学校で実施されている防災教育の取り組みを学ぶ。
3-10:学校防災の取り組みに関して事業実施地域の学校の教職員、生徒、保護者への聞き取り調査およびアンケート調査を実施し、結果を公表する。

4-1:対象地域におけるハザードマップを事業対象地域で防災活動に携わっているステークホルダーと住民参加のもとで作成する。
4-2:防災活動に携わっているステークホルダー(自主防災組織、学校、地域メディア、行政機関など)による会合を定期的に開催する。
4-3:防災活動に携わっているステークホルダー(自主防災組織、学校、地域メディア、行政機関など)による作業部会を作り、コミュニティの意見を反映した防災施策をミ・ペルー区役所に提言する。
4-4:防災活動に携わっているステークホルダー(自主防災組織、学校、地域メディア、行政機関など)が協働で防災訓練を実施する。
4-5:阪神・淡路大震災および熊本大震災の被災地における官民協働によるコミュニティ防災の取り組みを学ぶ。
4-6:コミュニティ防災の取り組みに関して住民への聞き取り調査およびアンケート調査を実施し、結果を公表する。

日本側投入

1)業務従事者の配置(現地及び国内)

プロジェクトマネージャー:1名
サブプロジェクトマネージャー:1名
コミュニティ防災・防災教育専門家:1名
学校防災教育専門家:1名
情報通信技術専門家:1名
多様性社会構築専門家:1名
現地業務従事者(情報通信・コミュニテイ防災担当):1名
本邦研修受入
1回(5日間・3名受入予定)

2)設備・機材

地域防災情報センター(1施設)・可搬型災害ラジオ放送システム一式・
可搬型無線機(Walkie Talkie)50セット・液晶プロジェクター・
自立式スクリーン・アンプ付きスピーカーシステム・ビデオカメラ・
ビデオ用三脚・研修用および教材動画編集用コンピューター

相手国側投入

1)業務従事者

事業運営委員:4名

2)施設

地域防災情報センター向け施設・研修施設(一部)・研修用機材(一部)