持続的な森林経営を目指して

途上国の山村開発に大分県の一村一品運動の体験を参考に

途上国においては、森林管理は中央政府から地方への移管が進められている国が多くなってきているが、他方、地方においては、実践的な人材が不足しているため持続的な森林経営に支障が生じている。地方で森林経営の指導にあたる人材は、単に森林経営や技術の知識だけでなく、森林に関わる住民の生計向上にも留意し持続的森林経営に取り組む必要があり多面的な能力が求められる。しかしながら、途上国においては、そのような多面的な能力を研修する機会が限られるため、人材育成が進まず、結果として持続的な森林経営の取り組みが問題となっている。

TIC(東京国際センター)は、2000年から林野庁森林技術総合研修所の協力をいただき「持続可能な森林経営の実践活動促進」を立ち上げ、2ヶ月半に亘り実践的な森林経営の指導者の育成のための研修を実施している。今年はラオス、フィリピン、インドネシアなど11カ国から12名の研修員が参加した。10月7日には、九州地区の研修旅行の一環として大分県の一村一品国際交流推進協会を訪問した。

大分県の山村においても、それぞれの土地に応じて、椎茸、竹細工、木材加工などを住民の発意ベースにさまざまな取り組みがなされているが、その実践にあたってのさまざまな経験は、途上国でも共有できる面が多いという狙いからだ。協会を訪れて、研修員を感激させたのは、理事長である前大分県知事の平松守彦氏がお忙しい中時間をさいていただき、大分県の取り組みをご自分の知事24年間の体験を交え、どうして住民の発意をベースに運動と活性化させるかとの実践的な話をしていただいたことであった。

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平松理事長と一緒に

以前は九州でもっとも貧しい県であった大分県は、今や沿岸地域への企業の誘致、さらに農村部においては、一村一品運動の展開により豊かな県に変わっている。また、平松理事長は世界での一村一品運動の展開にも熱心で、中国、ベトナム、マラウイなどへ訪問した時の各国首脳との会見写真が壁にたくさん貼ってある。研修員の国の半分以上にも訪問したことがあることから、各国事情にも詳しく、研修員との間にも話しがはずんでいた。一村一品運動の真髄を直接平松理事長から伝授され、さらに最後に一人ずつ一緒に写真をとってもらい、研修員にとっては、忘れられない研修の一齣(ひとこま)になったと思われる。

JICA東京 所長 狩野 良昭