SDGsとは、2015年9月に国連で採択された、2030年までに世界が達成すべき持続可能な開発目標のことです。貧困や健康、女性、環境などに関する17のゴールと、169のターゲットに分かれています。
そのSDGsへの関心が、ビジネスの分野でも急速に高まっているのです。
たとえば、デンマークを本拠地とする製薬会社ノボ ノルディスクは、SDGsのゴール4、「健康と福祉」をテーマに掲げ、糖尿病をはじめとする治療薬の開発に取り組んでいます。SDGsへの貢献を積極的にアピールすることで、自らのブランド価値を高めているのです。
「大企業だけではありません。日本の中堅・中小企業、それも地方に拠点を置く企業が、本業とSDGsとを絡めて発信するケースもあります」と、JICA(国際協力機構)企画部参事役でSDGs推進を統括する小田亜紀子さんは説明します。
JICAでSDGsの推進を統括する小田亜紀子さん
たとえば、石川県金沢市に本社を置く、自動車リサイクルや中古自動車部品の輸入や販売を手がける会宝産業株式会社。85カ国とネットワークを構築し、廃車の調達から生産、品質管理、販売にいたる自動車リサイクルシステムの技術と経営ノウハウを現地に提供しています。つまりビジネスを通じてSDGsの中の「貧困削減」、「環境保全」、「雇用創出」の達成に向けて取り組ん できたといいます。同社とJICAとの連携は、2010年までさかのぼります。
石川県金沢市に本社を置く会宝産業は、自動車リサイクルシステムによって
世界の静脈産業を拡大、SDGsへの貢献を積極的に発信している(写真提供:会宝産業)
こうした功績が認められ、2017年12月、会宝産業は日本の中小企業として初めて国連開発計画(UNDP)が主導する「ビジネス行動要請(BCtA)」への加盟を承認され、国連の持つ情報や人的ネットワークを活用し、世界の静脈産業拡大に取り組めるようになりました。
「このように、CSRだけでなく、ビジネスでSDGsへの貢献を推進すると同時に、SDGsへの取り組みを積極的に発信する企業や団体が増えています。今から約20年前の2000年9月、国連はSDGsの前身と位置付けられる開発目標、MDGs(Millennium Development Goals:ミレニアム開発目標)を採択しましたが、MDGs時代には、これほど積極的な動きは見られませんでした。様々なアクターの取り組みにメディアが注目し、取り上げる事例も増えており、これによりさらにSDGsへの取り組み、発信が促進される、という流れが感じられます」と小田さんは話します。
なぜ今、企業はSDGsに積極的になっているのでしょうか。小田さんは次のように答えてくれました。
「企業の財務情報に加え、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組み状況を企業評価の尺度としてとらえ、積極的に投資を行う『ESG投資』の広まりが、1つの大きな要因と考えます。日本でも、世界最大の年金運用法人である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2017年にESG投資の推進を宣言し、これにより企業のESG経営・SDGsへの取り組みが加速した、と感じています。また、経団連が2017年11月の企業行動憲章改定時に、『Society5.0の実現を通じたSDGsの達成』を打ち出したこと、さらに2018年3月に日本証券業協会が『SDGs宣言』を公表したことなども、日本の経済界・企業に大きな影響を与えた、と捉えています」
SDGsの達成につながる事業や経営を進めることが、中長期的な利益を生み出し、ビジネスを持続可能にし、全体として企業価値を高めることにつながる――そう考える企業が増えているんですね。