人と人、「ますます、いよし」で繋がる思い

2023年度3次隊 東ティモール派遣予定 梶 幸平さん
実習場所:愛媛県伊予市 一般社団法人いよのミライカイギ

参加動機

知り合いが海外協力隊として派遣されたタイミングで偶然の出会いがあった。職場で実施したイベントで、SDGsを「すべての生き物が住みやすい世の中にするための目標」と形容した児童がいた。自分の心にフィットしたのをよく覚えていて、「これを達成するために、実際に自分が動けるのは今しかない」と思い、海外協力隊に応募した。

グローカルプログラムは、海外協力隊の書類審査と面接を終えてから、ほとんど東京から出たことがないことに気が付いたことが要因だ。羞恥心とも焦燥感とも言える感情に支配され、「合格したら参加しよう」と決意するのに時間はかからなかった。

伊予市について

愛媛県伊予市は空港のある松山市から車で30分程度のアクセスで、2005年に旧伊予市と、海の地域の旧双海町、山の地域の旧中山町の3地域が合併してできた市である。市街地・海・山と自然との共生が根付いているまちで、第一印象は「時間がゆっくり流れるまち」である。少子高齢化と過疎化に伴い活気が失われつつあるが、「3万人が住み続けたくなるまち」を目指して取り組んでいる。

歴史的には、木材や農作物の輸送拠点として港が利用され、荷揚げ荷下ろしの作業員が多く住む町として栄えた背景がある。多くの輸送業者と関わりをもちつつ共同生活を送り、「自分の仕事で生産地と販売・消費地をつなぐ」という使命感から、ものと人、人と人をつなげて支えるという精神が根付いている。さらに遡れば、この伊予港(当時萬安港)は行政ではなく民間の力で築き上げられている。住民自治の自覚と熱意も特徴的だといえよう。

具体的活動とそこから見えたこと

中山町野中地区の盆踊り大会 中山町野中地区の盆踊り大会

今回のグローカルプログラムの受け入れ先である一般社団法人いよのミライカイギは伊予市移住サポートセンターいよりんの活動母体であるため、移住のきっかけやヒントになるような取組を主に行っていった。たとえばSNSを活用した魅力の発信。まちを歩いて気になった光景、美味しかった食事、参加したイベントなどを写真とともに投稿した。ほかに伊予市を支える産業従事者の手伝いや自分たちで焚火イベントを企画して人に集まってもらうこともあった。

受け入れ先の伝手であまたのイベントに関わらせていただいたことも印象深い。来る人としての目線だけでなく、企画を仕掛ける人の熱意や喜び、その人を中心に伊予市・まちを盛り上げようとする人たちを観察した。自然的な景観、特産品や観光地としての魅力を引き出すイベントも素敵なのだが、次第に「ここの強み、特長は人の関わり方のよさが引き出しているのだ」と気付いた。

過去から今へ、人から人へ

夕焼けプラットホームコンサート 夕焼けプラットホームコンサート

どれだけ時代が進もうと、どんなに技術が進歩しようと、結局のところ我々は一人では何もなしえない。誰かに支えられ、誰かを支えて生きている。それを真に理解しているからこそ、伊予市の住みよさは醸されているのだろう。人と人を繋げて支える使命感、自分たちで事を為す自覚と熱意。これが歴史的に継承され、江戸から令和へ、伊予市民から来訪者へと伝わっている。

海外協力隊として別の国に行ってもそれは変わらないだろう。宗教・文化・言語が違えど、人と人の繋がりを大事にする。誰かに支えてもらって、自分が誰かを支え返す。「人と人の間に生きる者(=人間)」として、それを忘れずに海外協力隊の任務、ひいてはこの先の人生で挑む課題に取り組んでいきたい。