変化は相手だけでなく自分の中にも

2022年度2次隊 スリランカ派遣予定 牧野 稔(職種:サッカー)
実習場所:島根県海士町

実習への参加

私がJICA海外協力隊に応募した時は、既に前職の会社を退職しており、これからの働き方を考えている時でした。その頃から、私は地域での生活に興味があり、具体的には地域おこし協力隊に応募するつもりでいました。それこそ、その地域おこし協力隊で赴いた場所は、自分のこれからの人生を過ごす場所になると思っていたので、各地域で開催されている生活体験会等に参加することを念頭に、様々な地域の情報を調べていました。色々調べていく中で、地域おこし協力隊として活動している人の中には、その前の経歴にJICA海外協力隊として活動していた人がいることを知り、そこでJICA海外協力隊に関心を持つようになりました。

地域おこし協力隊かJICA海外協力隊か。どちらに応募するか迷いましたが、地域おこし協力隊という制度のそもそもの目的や、改めて自分が十数年務めた会社を退職した理由を見つめ直して、まずはJICA海外協力隊に応募することにしました。応募にあたり、自分のこれまでの人生を一度ひっくり返して、どの職種に応募するか(正確に言うと、今の自分はどの職種に応募できるか、そして海外で活動できるか)を考え、今の自分ができること、今後の自分がやりたいことを整理しました。

応募の結果、幸いにも隊員候補生として採用していただき、更にグローカルプログラムという実習の話を聞いた時は、先述の地域おこし協力隊への気持ちもあることから、願ってもない話と思い実習に参加することを即決しました。私のグローカルプログラムは、島根県の離島である海士町で実習しました。地域おこし協力隊について調べていた時に、海士町という町の名前は何度も見かけておりとても関心のある町でした。グローカルプログラムの実習先の選択として、その候補地に海士町を見つけた時は、それこそ2回目の即決でした。

実習先と自分

地域の方々と行ったイベントのようす 地域の方々と行ったイベントのようす

海士町のグローカルプログラムの実習では、多くの気づきや学びを得ることができました。実習に参加する前には想像もしていなかったことばかりです。3か月の期間はあっという間で、とても充実していました。当然、その多くの気づきや学びを得たから、今後の海外での活動は大丈夫だという楽観はしていませんが、それでもこの実習に参加してよかったと思います。

実習の内容は、今後の海外での活動の職種とは関係のないものでした。もともと、職種とは関係なしに実習に臨むつもりでしたし、むしろ、そこに拘らなかったことが、実習の内容に幅を持たせることになり、結果的にその充実度を上げることにつながったと思います。また、グローカルプログラムは、どの実習先でも、各実習生はテーマを持って活動すると思います。実習先によっては、予めテーマを与えられるところもあるそうですが、海士町では、テーマを自分で決めることから始まりました。私は、この自分でテーマを決める過程も、海士町についての気づきや学びを得る機会になったと思います。町や人が取り組んでいる様々な活動とその展望、そして、それに向かって今の自分に何ができるかを考えました。

実習生の中には、自分のやりたいことが既に決まって人がいるかもしれません。しかし、それをそのまま実習で行うのではなく、まずは実習先についてよく知り、その思いや展望を共有し、いかにして自分がその中に入り込んでいくかという過程が大切だと思います。そして、それは今後の海外での活動でも同じだと考えています。

実習に向けて

地区メンバーとして参加した地域のソフトボール大会 地区メンバーとして参加した
地域のソフトボール大会

実習に臨む自分の気持ちの準備として良かったと思う点があります。それは、今後の海外での活動で役に立つあの学びを得るという限定した気持ちではなく、実習を通しての気づきや学びが、今後の海外での活動にどのように役に立てることができるかという想像する気持ちでいたことです。特に海士町は、その気づきや学びの機会が多いと思います。自治体として地方創生や地域活性化に積極的に取り組み、若者を含むIターン、Uターンの方が多く、中には既にJICA海外協力隊を終えて海士町で生活している方もいます。一方で、海士町の昔ならでは生活を営んでいる人もいて、その人たちの生活はとても魅力的です。そして、そんな町や人々に囲まれて育っている子供たちは活発で個性豊かです。実習で経験すること、気づき学ぶこと、そこから想像することは、誰かが絶対の正解を教えてくれることではないので、時に自分の想いを同じ実習生と共有するのもいい機会になると思います。

最後に

3か月という限られた期間ですが、グローカルプログラムという実習に、また海士町という地域に一歩踏み込んで良かっと思います。これをしなければならないという思い込みではなく、自分に何ができるかという自主性、地域の中で活動してく上で必要となる主体性、自分の活動が地域にどう関わっているのかという客観性、この気づきや学びを海外でどう役立てるのかという俯瞰性、あらゆる感性が3か月間に凝縮されます。しなければならないという気持ちでいると、それに到達しなかった自分に減点をしてしまいがちですが、実習の中での気づきや学びを積み上げる加点で実習の充実を図ること、その気持ちが大切です。

ボランティア活動は、総じてその活動の場で変化が生じるものかもしれませんが、その変化が相手だけではなく自分の中に生じることもあります。実習でも、気づきや学びを積み上げることで、自分の中に変化が生じるかもしれません。