先輩隊員のシューカツ記

帰国後、内定までの就職活動の方法を聞きました。

【今月の先輩の就職先】 - 株式会社グローバルトラストネットワークス(GTN)

大宮綾佳さん
大宮綾佳さん
(ベトナム/コミュニティ開発/2017年度4次隊・長崎県出身)

就職先:株式会社グローバルトラストネットワークス(GTN)
事業概要:外国人専門の賃貸住宅保証、不動産賃貸仲介、生活サポート、アルバイト・就職紹介、携帯電話サービスなど各種事業を展開する外国人総合サービス会社

大宮綾佳さんの略歴

  • ▶1990年             長崎県生まれ
  • ▶2014年4月        大学卒業後、株式会社ベネッセコーポレーション入社
  • ▶2018年3月        青年海外協力隊員としてベトナムに赴任
  • ▶2020年3月        帰国
  • ▶2020年12月      株式会社グローバルトラストネットワークス入社

「多文化共生」を実現し、地域と海外をつなぐために

   大学時代にサークル活動で国際協力NGOに参加し、カンボジアで教育支援をした大宮綾佳さん。在学中に留学先や旅行先で協力隊員の活動を目にしたこともきっかけとなり、一般企業で経験を積んだのちに協力隊に参加した。

   赴任先のベトナムには日系企業が数多く進出しており、活動中はそこで働く日本人と交流を持つ機会も多かった。ベトナムでの生活にも魅力を感じるようになっていた大宮さんは、活動終了後にベトナムで働くことを決め、日本の人材紹介会社のベトナム支店から内定をもらった。

   しかし、2020年3月に帰国すると、新型コロナウイルスの感染拡大により状況は一変。しばらくはアルバイトをしながらベトナムに戻れる日を待っていたが、渡航再開のめどはいつまでたっても立たず、プランを変更し、国内で就職することを決めた。

「私の地元の長崎市は人口流出率が全国ワースト1です。将来を考えたとき外国人との共生が鍵となると考え、地域と外国をつなぐ仕事をしたいと思いました。教育分野にも引き続き興味があったので、海外と人材教育の二つに関われる仕事に就きたいと考えました」

   就職活動では、社会人教育や人材紹介の会社からも内定をもらい、最後まで入社を悩んだ会社もあったという。最終的に外国人専門の事業を行う現在の会社を選んだのは、海外と関わりたい、協力隊の経験を生かしたいという思いが強かったからだ。

「外国人との共生という分野で、新しいチャレンジをしてみたいと思ったことも決め手になりました」

   社員を表彰する21年度の「GTNアワード」では、社員投票でその年にもっとも活躍した社員に贈られるMVPを受賞するなど、大宮さんの働きは社内でも高く評価されている。

「またベトナムに戻りたいという思いもありますが、当面はやりがいのあるこの環境で学び、社会に貢献していきたいです」



1.協力隊時代   2018年3月~

一緒にお土産開発をしたターイ族の仲間と地域のお祭りにて

一緒にお土産開発をしたターイ族の仲間と地域のお祭りにて

村の人とゴミを拾い、花を植える活動

村の人とゴミを拾い、花を植える活動

配属先のイエンバイ省女性連合は、女性の地位向上、収入向上、生活改善などを目的に設立された組織で、住民の援助・啓発活動を行う下部組織の監督・管理を行っています。要請内容は、啓発・広報活動の支援・改善でしたが、省にとって私が初めての隊員だったこともあり、赴任からしばらくは、同僚との良好な関係構築、地域の文化の理解と課題の発見に努めました。その後、女性連合が力を入れているCBT(コミュニティベースドツーリズム※)の分野を中心に活動することを決めました。具体的には、ホームステイ事業を実施している四つの村で少数民族の家庭を訪問し、聞き取り調査を実施。ホームステイ事業の関係者がCBTの課題や情報を共有できるよう、CBTの成功事例を持つNGOから講師を招き、ワークショップの開催にこぎ着けました。約40人の参加者からは、モチベーションやアイデアを得たという声もいただき、その後のツアーづくりやお土産開発、環境教育の活動にもつながりました。

2.帰国後~就職先探し   2020年3月~

日本で就職活動を始めるにあたり、改めて国内でやりたいことを考えたとき、地域と海外をつなぎ、個人の成長をサポートする人材教育の仕事をしたいと思いました。しかし、人材紹介会社や求人サイトに登録しただけでは、その両方を満たす求人情報にはなかなか出会いません。そこで、「教育」「人材」「ベトナム」「多文化共生」「地域づくり」などをキーワードにネットを検索。条件に近い企業をリストアップして採用をしているか問い合わせ、受け付けている会社に履歴書を送りました。

3.書類提出

提出書類▶履歴書、職務経歴書

協力隊の活動だけでは、就職活動で会社からキャリアとして見てもらうことは難しいと感じていました。そこで、職務経歴書には、まず前職での経験や成果を詳しく書きました。そのうえで、協力隊では、日本人が一人もおらず日本語が全く通じない環境で、現地の人たちと関係を構築し企画を立て、稟議も含め周囲を巻き込みながらワークショップを開催したというプロセスを強調しました。それがどこまで伝わったかはわかりませんが、そのほうが説得力を持つはずだと考えました。

4.面接

ネットで検索し見つけた会社と、人材紹介会社から紹介された会社、合わせて10社くらいと面接しました。コロナ禍ということもあり、面接はすべてオンラインでした。今の会社との面接は2回。面接の相手は、1回目は電話で問い合わせをした人事担当者、2回目は社長です。面接では、協力隊での成果などはあまり聞かれなかったように思います。それよりも、協力隊参加の理由や活動中の困難、それを乗り越えた経緯、そしてこれから私が何をやりたいのかを聞かれた記憶があります。うまく伝えられたかはわかりませんが、前職での社会人経験と協力隊での活動を根拠に、行動力、積極性、巻き込み力をアピールするよう心掛けました。

2020年12月 入社

現在の仕事

SDGsの活動ミーティングにて

SDGsの活動ミーティングにて

人事・広報部に席を置いていますが、自社制作のウェブ番組のパーソナリティ、社内のSDGs推進のプロジェクト、国内企業に外国人を紹介する人材紹介事業、JICAもかかわる在留中・来日予定の外国人向けポータルサイト「JP-MIRAIポータル」のコンテンツの企画・制作・調整、さらに、帰国後に取得したキャリアコンサルタントの資格を生かし、日本で働きたい外国人のキャリアアドバイザーなど、幅広くさまざまな業務に携わっています。所属にかかわらず、意欲があればチャンスをもらえる会社なので、自分がやりたいと思うことにどんどんチャレンジさせてもらっています。

社内向け動画の撮影の様子

社内向け動画の撮影の様子

後輩へメッセージ

就職に限らずどんな道であっても、私は自分が選んだ道を自ら正解にしていけばよいと考えています。選択に悩んだり葛藤したり、悔しい思いをすることもあると思いますが、その信念があれば、葛藤も含めて環境を楽しみつつ、前へ進んでいけるのではないかと思っています。
私自身、ベトナムに戻るか日本で就職するか、どの業種を選ぶかなど、悩み苦しんだ時期もありましたが、それが今の充実した毎日につながっていると感じています。

※CBT…地域コミュニティの住民の自律的な参画により行われる観光振興

Text=油科真弓 写真提供=大宮綾佳さん

JICA海外協力隊ウェブサイト「帰国隊員の進路開拓についての相談受付」
※カウンセラー/相談役により対応可能な日が異なりますので、
あらかじめ電話またはメールでのご連絡をお願いします。

知られざるストーリー