先輩隊員のシューカツ記

帰国後、内定までの就職活動の方法を聞きました。

【今月の先輩の就職先】阪和興業株式会社

上田和昌さん
上田和昌さん
ラオス/公衆衛生/2018年度1次隊・山梨県出身

就職先:阪和興業株式会社
事業概要:鉄鋼、非鉄金属、食品、石油、化成品、機械、木材、セメントなどの国内販売および輸出入

上田和昌さんの略歴

  • ▶1995年           山梨県生まれ
  • ▶2017年3月      信州大学卒業
  • ▶2017年4月      東京学芸大学大学院入学
  • ▶2018年7月      休学し、青年海外協力隊員としてラオスに赴任
  • ▶2020年3月      コロナ禍により帰国(協力隊の活動は7月まで)
  • ▶2020年9月      東京学芸大学大学院に復学
  • ▶2022年3月      東京学芸大学大学院卒業
  • ▶2022年4月      阪和興業株式会社入社

ビジネスを通じて経済の循環、発展に貢献したい

   教師を目指していた上田さんが海外での活動に興味を持ったのは、大学の研究室の教授が主催するラオスへのスタディツアーに参加したのがきっかけだった。その後、教授から東京学芸大学がJICAと大学連携ボランティア(※)の覚書を締結してラオスに学生を派遣していることを聞き、同大学大学院へ進学。青年海外協力隊員としてラオスに赴任した。活動を経て、引き続き海外で働きたいという気持ちが一層強くなっていったため、帰国後は、教師ではなく商社への就職を選んだ。

「活動中は、ラオス側のスタッフと交通費や日当などお金でもめることがよくありました。懸命に働いているにもかかわらず困窮している人が多いという現実を目の当たりにして、教育も大切ですが、まずは経済を循環させるための基礎となるインフラを整備することが重要だと考えたからです」

   就職活動で、特に役に立ったのはSNS上の就活コミュニティの存在だ。

「商社で働く人の生の声を知りたいと、SNSをフォローしていて、そのなかの一人が『マルボク』というコミュニティをつくったことを知り参加しました。コロナ禍で就職説明会が開かれないなか、現役商社マンや就活中の学生とつながれたのは非常に有益でした」

   就職活動では、協力隊経験のアピールに難しさを感じていたが、就活コミュニティのメンバーと話し合うなかで、自分や協力隊経験者同士では当たり前すぎて気づけなかった見方を教えられ、大きな自信にもなった。

「例えば、ラオス語を勉強するために、町で知らない人にもグイグイ話しかけたことを話したら、『積極性がある』『強みになる』と指摘してもらえ、自分の取り柄に気づかされました」

   最終的に内定の出た鉄鋼商社3社のなかから、阪和興業への入社を決めた上田さん。「独立系商社の阪和興業は、親会社の影響が強いメーカー系商社と比べてビジネスの自由度が高いと感じました。いずれはラオスでビジネスを確立できるよう、頑張りたいです」。



1.協力隊時代   2018年7月~

完成したエコヘルスの教科書

完成したエコヘルスの教科書

エコヘルス教科の研修生とワークショップを行う

エコヘルス教科の研修生とワークショップを行う

世界初の教科として2022年2月にスタートする「エコヘルス教育」の普及のため、大学連携ボランティアとしてラオス国立大学に赴任しました。「エコヘルス教育」とは、環境教育と健康教育を統合した教科で、16年度から私を含め計6人の東京学芸大の学生が大学連携ボランティア事業で派遣されています。私の前任者は、2年かけてエコヘルス教科の研修生(教員養成校の教師)に「エコヘルス教育」について指導すると共に、教科書の草案を作成。それを引き継ぎ、私は研修生が教員養成校で行うエコヘルス教科の授業のサポートをし、ラオス側と東京学芸大の教授らとの調整役を務めながら、教科書を完成させました。新型コロナウイルス感染拡大で、予定よりも早い20年3月に帰国となりましたが、帰国後は、任期が終了するまで教科書をラオス語から日本語に翻訳する作業に従事しました。

2.就職先探し   2020年7月~

2021年度に新卒で就職したいと考えていましたが、帰国した年は就活シーズンが終わっていたため満足のいく就職活動ができませんでした。そこで、大学院にもう1年在籍し、22年度の就職を目指すことにしました。2年目の就活では、商社マンが主催するSNS上の就活コミュニティを活用しました。コミュニティには就活中の学生や社会人が参加しており、オンラインでのディスカッション、社会人や学生が面接官となっての面接練習、エントリーシートの添削などがありました。求人情報は、マイナビ、リクナビなどの求人サイトで探しましたが、コミュニティのメンバーからの口コミ情報が非常に役に立ちました。

3.書類提出   2021年3月~

提出書類 ▶ 履歴書、エントリーシート

自己PRでは、「バイタリティがあり粘り強さは誰にも負けない雑草のような人間である」と強調しました。その例として、協力隊の活動で、言葉もわからない環境のなかで教科書を完成させたこと、また、自分が主体的に考え、現地の人と話し合いながら、教科書づくりを進めていったことを紹介しました。

4.入社試験

エントリーの段階ではオンラインで、最終面接では本社において、四則演算や読解問題などの試験がありました。

5.面接   2021年6月

計4回の面接では、なぜ教員ではなく企業への就職を選んだのか、また、ボランティアと真逆のビジネスを選んだのはなぜかを、主に聞かれました。前者については、ビジネス環境のほうが自分自身の成長につながると考えたため、後者については、ビジネスを通じてお金を生み出し現地経済に還元するほうが、社会課題の解決に貢献できると考えたためと答えたと記憶しています。

2021年7月 ▶ 内定、2022年4月 ▶ 入社

現在の仕事

入社した阪和興業にて

入社した阪和興業にて

入社後、1カ月間の研修期間を終え、5月に厚板部厚板・鋼管・建材グローバル課に配属されました。10月までは試用期間のため、まずは何百種類とある商材についての知識を身につけようと勉強しているところです。10月以降は海外出張や駐在などのチャンスも出てきますが、弊社は東南アジアの事業に力を入れているので、まずは東南アジアに駐在し、働きたいというのが当面の目標です。

後輩へメッセージ

協力隊で活動中、あるいはこれから参加する方には、活動を有意義にしたければ、協力隊の先に何をしたいのか考えておくことをお薦めします。それによって活動中の動き方も変わります。僕自身、商社への就職をイメージできていたら、派遣中に現地駐在員にアプローチできたのではないかと後悔しています。就活中の後輩に伝えたいのは、協力隊で自分が何を考え、何を学び、どのように行動してきたかを、相手に伝わるように言語化してほしいということです。どう伝えたら相手に響くのか、進路相談カウンセラーや協力隊の仲間、友人などに相談し、自分の考えを整理していくことで、明るい道が開けると思います。

※大学連携ボランティア…大学の専門性とリソースを活用して途上国の課題解決を図る事業。課題や取り組み手法を特定し、取り組みに必要なJICAボランティア応募者を継続して推薦できる大学と覚書を交わして複数年かけて実施する。現在は「JICA海外協力隊(大学連携)」に改称。

JICA海外協力隊ウェブサイト「帰国隊員の進路開拓についての相談受付」
※カウンセラー/相談役により対応可能な日が異なりますので、
あらかじめ電話またはメールでのご連絡をお願いします。

Text =油科真弓 写真提供=上田和昌さん

知られざるストーリー