帰国後、内定までの就職活動の方法を聞きました。
就職先:株式会社コスメック
事業概要:精密機器・油空圧機器の設計、製造、販売。海外にも営業拠点を持ち、自動車、工作機械、半導体および電機など、国内外のメーカーと取引を行っている。
学生時代からeco検定(※)を受けるなど、環境問題に興味を持っていた豊田恭輔さん。幼少期はアメリカで過ごしたが、日本では英語が苦手なことがコンプレックスだった。大学卒業後、働きながら英語の勉強をしていたがなかなか身につかなかった。そんなとき、協力隊員募集の広告を目にし、「日本語を使えない環境に身を置いて語学を習得したい」という思いが芽生えた。調べると環境教育の職種があり、それならばと協力隊に応募した。
「任地には英語圏の国を希望したのですが、そちらは登録合格でした。一方、ドミニカ共和国ならすぐに行けると聞き、参加を決めました」
それまでスペイン語を勉強したことはなかったが、訓練所の2カ月間(当時)の語学講習でスペイン語の基礎をたたき込んだ。さらに任地でも、言語力に磨きをかけようと、活動の合間に現地のスペイン語教室に通った。
言語を自由に使いこなせるようになった豊田さん、任地では配属先の市役所、婦人会の会合、ホームステイ先の人たちと交流を深め、活動も軌道に乗るようになった。
帰国後に就職したのは半導体の専門商社で、日本国内の営業職だった。
「当時は、とにかく就職先を早く決めて安心したかったので、内定が出た会社に入社しました」。
だがその後、協力隊で身につけたスペイン語を生かせる仕事をしたいと強く思うようになり、グループ会社がメキシコに支店を持つ株式会社コスメックへの転職を決めた。同社への就職を決めたのは、「のちの上司となる人が、採用面接とは別に私に会う機会を設けてくれ、私を採用したいという熱意が伝わってきたことが嬉しかったからです」。
「協力隊で身につけたスペイン語を生かせる仕事をしたい」という自分の思いに気づき、現在、メキシコ駐在員としてビジネスの現場に立った豊田さん。これからどんな活躍を見せてくれるのか、期待したい。
配属先のダハボン市の市長、副市長、婦人会連合の会長らへ活動の最終報告をする豊田さん
街のあちこちに生ごみが捨てられており、家庭では庭に生ごみを放ってある。ごみの分別が社会問題になっていることを知って、児童を対象とした環境教育と、事前研修で学んだコンポスト指導・普及活動を地域の方々に行うことの2点に活動を絞りました。具体的には、各コミュニティの婦人会の会合に参加しコンポストについて説明し、コンポスト作りを実践してもらいました。
婦人会でコンポストの指導をする豊田さん
帰国したらすぐに就職したいという思いが強かったため、帰国半年前に転職サイトに登録。業種は問わず、国内の営業職で求人をしている会社約30社にエントリーしました。ドミニカ共和国からオンラインでリモート面接を行い、帰国後の最終面接を経て、半導体の専門商社への就職を決めました。
日本で就職したものの、スペイン語を仕事に生かしたいという気持ちが捨て切れず、スペイン語圏で日系企業が多く進出しているメキシコの現地採用に特化した転職エージェント2社に登録し、約15社にエントリーしました。就職先の条件はスペイン語を生かせることだけで、業界、勤務地は問いませんでした。
転職エージェントを通じ、メールで書類を提出しました。アピールポイントでは、協力隊の2年間の活動でスペイン語を身につけたこと、そして、活動内容を自分で考え、人間関係を構築しながら活動に結びつけていったことや、コンポスト設置を継続した粘り強さもアピールしました。
書類選考のあと、計3回の面接がありました。1回目はメキシコの駐在員、2回目はアメリカ現地法人の社長とオンラインで、3回目となる最終面接は日本本社で、社長、役員と行いました。面接では、新卒で入社した信用金庫、ドミニカ共和国での活動について多く聞かれました。金融の営業から協力隊活動まで、いろいろな経験をしていることに興味を持ってくれたのではないかと、個人的には思っています。
現在勤務している(株)コスメックの展示会
日本で2年間の研修を受けたのち、2022年2月にメキシコ支店に赴任しました。スタッフはメキシコ人2人と私の3人です。私は日系企業の担当営業窓口として、自社の製品を拡販することが主な仕事です。メキシコ国内の展示会に出展したり、顧客を訪問したりしながら、製品を知ってもらうための活動をしています。商談相手の多くはメキシコ人で、言葉はもちろんスペイン語です。また、日系企業の日本人担当者とローカルスタッフの間に入り仕事を進める機会も多く、やりがいを感じながら働くことができています。
私はせっかちな性格なので、任期中に就職先を決めました。そこでの経験は無駄ではなかったのですが、自分が何をしたいのか、もう少し時間をかけて見極めたうえで就職活動をすれば、最初から現在のようなスペイン語圏の仕事に絞って行動ができたのではないかと感じています。後輩たちには、帰国後の仕事探しで焦る必要はないということを伝えたいです。じっくり自分がやりたいことを考えたうえで、就職活動をしてほしいと思います。
JICA海外協力隊ウェブサイト「帰国隊員の進路開拓についての相談受付」
※カウンセラー/相談役により対応可能な日が異なりますので、
あらかじめ電話またはメールでのご連絡をお願いします。
※eco検定(環境社会検定試験)®は複雑・多様化する環境問題を幅広く体系的に身につける「環境教育の入門編」として2006年の試験開始以来、学生から社会人まで幅広い方が受験している。
Text =油科真弓 写真提供=豊田恭輔さん