今年で2回目を迎えた、「JICA海外協力隊 帰国隊員社会還元表彰」。「JICA海外協力隊 起業支援プロジェクトBLUE」もスタートし、協力隊員の帰国後の社会還元にますます注目が集まっています。そこで本特集では、第2回JICA海外協力隊 帰国隊員社会還元表彰受賞者に、取り組み内容や思い、取り組みを始めるに至った経緯を伺いました。隊員時代から取り組みを考えていた方もいますし、今に至る道のりで大いに悩み、紆余曲折された方もいます。現役隊員の皆さんは将来を考える参考にしてみては?(写真は2024年6月7日に行われた表彰式。小柳さんはカンボジアからオンラインで登壇)
▲表彰式当日の映像はコチラ多くのボランティアが参加する食材配達。写真は食材の仕分け作業
2018年以降、これまでに延べ3,000世帯以上の足立区在住のさまざまな困難を抱える子育て家庭を対象に活動を行ってきました。
無料食材配達やフードパントリーといった食料支援を実施することで各家庭とつながり、専門家につなげたり、各家庭に合わせた情報提供を行ったりしています。また、オンライン・オフライン両方で「子どもの居場所」を提供することで、延べ1,000人以上の子どもたちを支えてきました。お子さんが18歳を迎える時点で我々の支援は終わりになりますが、24年6月現在、約400世帯のご家庭とつながりを保ち続けることができています。
「一般社団法人チョイふる」が解決したいのは「選択格差」です。既存の支援制度はあるのに、その情報を得て選択できる人とできない人の間に生じる格差が、子どもの貧困問題の解決を難しくする要因の一つだと考えています。
子どもたちでにぎわう「あだちキッズカフェ」。子どもは無料
そう考えるに至ったのは、自分自身の原体験があります。父が働かず借金をして、暴力を振るう家庭で育ちました。大学進学時も新聞奨学金制度を知った時には既に募集期限が過ぎていました。私は教育ローンと貸与型奨学金を利用しましたが、妹は専門学校に通うことすらできませんでした。
その後、協力隊時代に派遣されたエチオピアで、手足を切断され物乞いをさせられている「レンタルチャイルド」の存在を知り、世の中には選択肢さえ与えられない人もいることに衝撃を受け、自分は日本の子どもの貧困問題解決を目指そうと心に決めました。
そのような背景から、本来たくさんある〝はず〟の選択肢を、少しでも身近にすることが、社会的使命だと考え、団体を設立しました。
苦労していることは、利害関係者間の調整です。ボランティアだけでも高校生からご年配の方まで、さまざまなバックグラウンドを持った地域の方約200名が登録をしてくださっています。また、足立区役所の方や企業の方、地域住民の皆さんへの「橋渡し」の役割を担い、地域の課題をどのように解決していくべきか、日々悩んでいます。
2014年10月 協力隊に参加。現地で「レンタルチャイルド」の存在を知り、衝撃を受ける。
2016年9月 1カ月早い特別短縮が認められて帰国し、大学院に進学。同時に友人と英語学習プログラムを提供する塾経営に乗り出したが、裕福な家庭の子どもが集まることに気づき、閉塾。その後、大学院を中退し、コンサルティング会社の契約社員をしながら起業を模索。
2019年12月頃 京都で最も生活困窮家庭が多い足立区でこども宅食を行うことを決め、翌20年1月に一人で「足立区こども宅食事務局」を立ち上げ、10軒程度の家庭を回り、食料配達を始める。
2020年3月 コロナ禍の中、足立区の困窮世帯に弁当を届けるプロジェクトに参加し、18年から子ども食堂の活動をしていた柏倉美保子さん(現・チョイふる理事)と知り合い、一緒に活動していくことになる。
2020年夏 無料食材配達「あだち・わくわく便」をスタート。
2021年2月 一般社団法人チョイふる設立。代表理事に。
2021年11~12月 足立区竹の塚の子どもの居場所「あだちキッズカフェ」の改装費用をクラウドファンディングで集める。
2024年2月 足立区内の他2団体と協力し、それぞれの強みを生かした無料LINE相談「Stand by Kids & Parents(通称SKIP)」をスタート。
Edit&Text&Photo=ホシカワミナコ 写真提供=栗野泰成さん