[特集]今に至るまでの道のりも聞きました!
第2回社会還元表彰受賞者の帰国後の活躍に学ぶ

アントレプレナーシップ賞

小柳真裕さん
小柳真裕さん
カンボジア/青少年活動/2014年度1次隊・福岡県出身
ACNC認定Tuk Tuk for Children理事
Rermork for Children アドバイザー


カンボジアの幼児教育のため、教育者の
指導や誰もが使えるフリー教材を提供

幼稚園教員へ行うワークショップ

幼稚園教員へ行うワークショップ

   協力隊時代に任地の幼稚園教員のトレーニングの必要性や教材不足を感じた経験から、2016年に夫と「ACNC認定Tuk Tuk for Children(トゥクトゥクフォーチルドレン)」を立ち上げました。協力隊時代の任地でもあるカンボジアのポーサット州で、提携する幼稚園の幼稚園教員に向けたワークショップを開催してきたほか、1,200点以上の教材を作り、幼稚園教員が無料で使えるよう、各種SNSと公式ウェブサイトで公開しています。カンボジアでのNGO登録団体名は「Rermork for Children(ルモックフォーチルドレン)」で、ウェブサイトなどは「Tuk Tuk Charity」というブランド名を使用しています。

   教材の中身は、カンボジアの文化に合わせた遊び歌や政府推奨曲の音源を120曲以上、幼児向けの絵本は18種類、簡単にできる工作やアクティビティ、アイデア動画は800本近くに上ります。300種類以上あるワークシートは、コロナ禍で自宅学習になった際にも重宝されました。

小柳さんたちが作った教材を活用している幼稚園

小柳さんたちが作った教材を活用している幼稚園

   実は、私たちの団体には幼児教育のスペシャリストはいません。私は保育士資格は持っていますが、園で教えたことはありません。代表を務める夫も、もともと地元NGOでカンボジアの子どもに関わる支援をしていましたが、資格はありません。カンボジアの幼児教育のカリキュラムを読み込み、海外からボランティアで来る幼児教育のスペシャリストと協力し、カンボジアの保育現場を見てもらって、現地で幼児教育に携わる方など現場の意見も取り入れながら、現場で必要とされ、かつ使いやすい教材を作ってきました。その多くは、既に世界中にある幼児教育の教材を、カンボジアの幼稚園教員が使いやすいようにアレンジしたものです。

   将来的には活動を地元の人たちだけで持続可能なものにしていくために、カンボジア初の幼児向け教育番組を制作して、ウェブサイトなどで公開する予定です。それにより保護者が家庭でもできるアイデアを得られ、幼稚園教員が遊びを通した学びの参考にでき、また教員自身が考えた教材を皆に共有できる仕組みを整えていきたいです。

小柳さんの現在までの道のり

協力隊前   大学卒業後、オーストラリアで2年間日本語教師のアシスタントを務め、帰国後、中学校の英語教師を経て地元の国際交流協会に転職。そこでJICAの国際協力推進員と知り合い、協力隊への応募を決める。また派遣先で役に立つかもしれないと、保育士の資格を取得。

2014年7月~   派遣されたカンボジアでは、中学校での運動会開催のほか、他団体が行っていた移動映画館の立ち上げ・活動も手伝う。

2016年後半~17年   オーストラリアでTuk Tuk for Childrenを立ち上げたが、カンボジアで活動するには現地の団体と連携するか、自分たちがカンボジアで団体を設立する必要があった。当初は前者を取り、連携相手のNGOがサポートしていた公立幼稚園6校の教員の指導と、移動図書館事業からスタート。

2018年   連携していたNGOがなくなったため、Rermork for Childrenの団体名で登録し、活動を続ける。移動図書館の絵本は小柳さんとカンボジア人スタッフでクメール語に翻訳していたが、寄付された絵本は、カンボジアの文化に合わない内容のものも少なくなかったため、現地イラストレーターにも加わってもらい、自分たちで絵本製作も始める。


つづく(東 恵理子さんへ)

Edit&Text=ホシカワミナコ 写真提供=小柳真裕さん

知られざるストーリー