ビアバーの前で。創業メンバー、社員と
私の地元・岐阜県瑞浪市釜戸町は、この20年間で人口が1,231人も減り、現在約2,350人、2020年の空き家は117軒と、日本の多くの地方と同じように人口減少が止まりません。
そんな釜戸町や地域を元気にしたいと、20年4月23日(クラフトビールの日)に、岐阜県出身でビール醸造家のレジェンドと称される丹羽 智さんと、多治見市でまちづくり会社に勤務していた岡部青洋さんと3人で、クラフトビール醸造所「CAMADO BREWERY(カマド ブリュワリー)」を立ち上げました。17年に、知人の女性が携わっていた震災復興活動の一環で、宮城県石巻市で育てたホップを市内の醸造所でビールにして売るという取り組みを知り、私自身ビールが好きだったこともあって興味を持ったのが、そもそものきっかけでした。
上:ビアバーでは、地元の美濃焼作家の作品でビールを提供。下:イベントで交流人口も増やす。写真は「カマフェス(カマドビアフェスティバル)」
19年から、会社勤めと兼業での醸造所設立を模索していましたが、丹羽さんが退職・起業を決めたことに後押しされ、私も退職して取り組むことを決意。設立資金は自治体からの創業補助金500万円と、融資で賄いました。地元食材をビールの副原料に使ったり、美濃焼や景勝地・竜吟の滝などの地域資源を生かすビール造りを行い、21年冬にはクラウドファンディングでビアバーも開設しました。また、22年には空き家対策チームもできて、1年間で6組13人の移住もありました。
こうした取り組みを並行することにより、単にクラフトビールを造るだけでなく、地域をPRし、「乾杯」で人をつなぎ、釜戸町への交流・関係人口や移住者を増やす取り組みも行っています。今後、空き家を活用したゲストハウスを本格稼働させ、ビールを通じた人と人のつながりで人口減少を解決していきたいと思っています。
2014年2月~16年秋 バングラデシュでの隊員時代、リスナーの健康や日本の魅力を伝えるラジオ番組の制作に携わる。帰国後は、日本の魅力を発信する映像を作りたいと、フィリピンへの語学留学を経て、2カ月間ニューヨークの映画制作学校へ。
2017年5月 宮城県石巻市で活動するNPOの女性の取り組みを通じて、ビール造りに興味を持つ。
2017年6月 釜戸町で地域に関わる仕事を探したのち、青年海外協力隊事務局の進路相談カウンセラーからの紹介で、地方創成に関わる都内の広告制作会社に入社。仕事をしながら、地元でできることを模索。ビアジャーナリスト養成講座にも通い始めて、クラフトビールでの町おこしを考えるようになった。
2018年6月~ 有志を募り、地元の東濃地方でビールと地元食材のペアリングなどを考える飲み会を定期的に開くようになる。また、当時山梨県のビール醸造所で働いていた丹羽さんに会い、将来、岐阜で醸造所を造りたいと伝え、協力を仰いだところ、丹羽さんもこの会に参加してくれるようになった。
2019年 別の企業に転職し、まちづくりのための補助金申請の方法など、具体的なノウハウを学びながら、酒蔵ツーリズム事業などを担当。
2020年4月23日 会社設立。すぐに革新的なビールが話題に。ファンや仲間が増えていき、ますます地元を盛り上げている。
2024年6月 「ビアワングランプリ2024」で総合優勝。
Edit&Text=ホシカワミナコ Photo=阿部純一(本誌) 写真提供=東 恵理子さん