[特集]今に至るまでの道のりも聞きました!
第2回社会還元表彰受賞者の帰国後の活躍に学ぶ

多文化共生賞

香川沙由理さん
香川沙由理さん
マラウイ/看護師/2012年度3次隊・千葉県出身
成田赤十字病院   看護師




看護師として外国人患者の受診をサポート。
医療従事者への研修で異文化理解を促す

外国人患者へ向け、オンライン医療通訳を介して入院や検査の説明を行う

外国人患者へ向け、オンライン医療通訳を介して入院や検査の説明を行う

   成田赤十字病院国際診療支援室の専任看護師として、外国人患者やその家族への医療支援(通院、入院~退院、帰国までの支援)のほか、病院内の医療従事者に向け、現場レベルで異文化看護に関する研修や出前講座などを行っています。

   当病院が日本の窓口である成田国際空港のある千葉県成田市にあることも関係し、訪日外国人の増加と共に、当院への外国人患者数も増えています。2023年度の外国人患者数は、全患者数の約2パーセントに当たる6,281人で、5年前の3,736人に比べて1.6倍以上増加しました。 

   国籍は多い順にネパール、スリランカ、中国、フィリピン、ベトナム、タイで、旅行者、技能実習生、難民申請者、留学生、長期滞在者など、さまざまな方が受診されます。飛行機内で具合が悪くなり、成田空港から緊急搬送されてくる方もいれば、日本に長く住んでいる外国人の方の高齢化が進み、日本人の高齢者にも多い心筋梗塞などの病気で入院される方もいます。

院内研修の様子

院内研修の様子

   外国人患者の方々も日本人同様、受診の際は専門の科を受診します。17年に国際救援部開設準備室(現在は国際診療支援室)ができてから、タブレットを使い、遠隔で医療通訳を交えて外国人患者の対応をしています。各科では対応が難しい時、私たちの科で対応します。例えば今日は、外国人患者の入院支援のほか、翻訳文書の整理を行い、各科の所属長に文書の説明をしました。

   外国人患者の中には、病院の様子をSNSでライブ配信してしまう、消灯時間後でも電話をスピーカーモードにして大声で通話してしまう、食べ物を床に置く習慣がある、宗教上の理由で食べられない食材がある、日本食が合わず食事が進まないなど、さまざまな方がいて、人の命を扱う業務の中で異文化への対応が難しいと感じている職員が少なくありません。そうした職員の不安を減らし、日本の医療制度に慣れていない外国人患者やご家族も安心して医療を受けられるよう、心配事や誤解をなくすことが私の役割です。

   今後は協力隊のネットワークも広げながら、海外の医療制度の情報や国内で同じ悩みに対応している医療関係者の情報を収集することで、職員の異文化理解に努め、他の医療機関とも連携していきたいと思っています。

香川さんの現在までの道のり

2011年   勤務している成田赤十字病院に協力隊の現職参加を相談。

2013年1月   協力隊員としてマラウイへ派遣。マラウイでの看護師資格取得のため、首都で看護実習を受け、資格取得の後、4月に任地のドーワ県立病院に赴任。5S活動や巡回診療支援を行う。

2015年3月   任期を2カ月間延長して帰国し、4月に復職。HCU(高度治療室)の所属になる。

2018年   病院が行う海外での緊急医療援助に関わりたいという思いと、マラウイで仕事の経験値よりも学位や学歴を重要視されることを実感したことで、仕事をしながら大学院へ進学。外国人患者に関わる看護をテーマにした研究を行い、20年3月修了。

2020年9月   国際診療支援室へ異動が決まり、HCUと兼務に。その後、出産と育休を経て、23年5月に復帰して以降は、時短勤務で働きながら国際診療支援室の専任看護師として活動中。


つづく(浅野拳史さんへ)

Edit&Text&Photo=ホシカワミナコ 写真提供=香川沙由理さん

知られざるストーリー