青木裕子さん
青木裕子さん

短期/ガイアナ/音楽/2016年度9次隊、SV/ジャマイカ/音楽/2018年度2次隊、短期/ジャマイカ/音楽/2022年度9次隊・福島県出身

音楽大学大学院修了後、大学などの研究員として西洋音楽史研究とピアノ指導を行った。50歳代半ばには社会保険労務士資格を取得し、音楽活動と並行して日本年金機構で年金記録対策業務にも従事。協力隊はガイアナ(短期)とジャマイカで活動。1年半がたった時にコロナ禍で一時帰国し、3年の国内待機を経て再度赴任して、半年間活動した。

応募者へのMessage

特別に高度なスキルを持っているわけではない私でも、培ってきた知識と技術が役に立ちました。語学が不安な方も多いと思いますが、完璧に話せなくても、相手を理解しようとする姿勢があれば歓迎してくれるものです。シニア世代で協力隊に参加して、愛着ある国が増え、多くの人たちとの絆ができ、人生がより楽しく豊かになりました。

シニア

仕事や子育てが一段落し60歳代で協力隊に。
音楽研究とピアノ指導の経験を生かして活動し、
現在も音楽を通じて派遣国とつながる

シニアで参加した青木裕子さんの場合

JICA海外協力隊員ってどんな人?
毎週木曜日に開かれる学生コンサートのリハーサルで当日のプログラム進行の確認をする青木さん

   シニア世代で協力隊に参加した青木裕子さんの経歴は、音楽大学などで研究とピアノ指導に携わり、結婚・子育てを経て、50歳代半ばには年金記録対策業務にも従事と多彩だが、青木さんにとっては「音楽と人・社会の関係を考えてきた自然な生き方」だった。

   協力隊への応募も、友人が参加したことで興味を持ち、スリランカで音楽隊員を募集していることを知ったことがきっかけ。「応募について家族に話した時には、子どもが既に海外で仕事をしていることもあり、応援してもらいました」。

   スリランカの要請は補欠合格となったが、南米・ガイアナへ6カ月間の短期派遣の打診があり、赴任を決めた。5日間の座学による訓練を経て、2017年4月に同国に派遣され、国立音楽学校で小・中学校、高校の教員を対象に授業方法について指導し、同校のピアノ教員たちとの交流も深めた。

JICA海外協力隊員ってどんな人?
オーケストラの授業でピアノを演奏する青木さん

「配属先の上司に求められるまま教えていたら半年があっという間に過ぎました。カリブ海地域の文化を肌で知り、ラジオから流れるジャマイカ音楽にも興味を引かれ、同じ文化圏でもっと活動したいという思いが募りました。そしてジャマイカへの長期派遣要請を知り、17年10月の帰国後すぐに秋募集に応募しました」

   派遣前には駒ヶ根青年海外協力隊訓練所で5週間(※)の合宿生活を送った。訓練の中心はジャマイカの公用語である英語学習。活動や生活で使う実践的な会話を中心に、シニア世代の訓練生5人と共に学んだ。

「英語は長い間、読み書き中心だったので、語学訓練は貴重でした。ジャマイカに赴任してみると、現地の人の話はアクセントの違いもあってなかなか聞き取れませんでしたが、私から話す内容は、何とか相手に伝わっていたようです。何より、訓練所では年齢も職種もさまざまな同期の仲間たちと楽しく交流でき、大いに刺激を受けました」

JICA海外協力隊員ってどんな人?
任期終了後の2024年、個人的に隊員時代の配属先を訪ねた際に課外授業で教えていた高校生と再会した青木さん

   ジャマイカには18年10月に赴任し、首都キングストンにある国立エドナ・マンレー芸術学校の音楽学部で、ピアノの個人レッスンを中心に音楽理論や読譜の指導、進級のための補講などを担当。教会で音楽に親しみ、音楽への憧れを抱いてやってくる学生たちは、青木さんに忘れかけていた音楽の自由さを思い起こさせてくれた。

「例えば、読譜は得意ではないけれど記憶力で演奏できたり、先入観なく自分のやりたい音楽を表現したりする生徒がいて、頼もしく感じました。仕事を辞めて、あるいは仕事をしながら入学してくる30~40歳代の人もいて、そうした生き方が許容される社会の柔軟さと、ジャマイカでの音楽の重要性を感じました」

JICA海外協力隊員ってどんな人?
ピアノのレッスン室。「ピアノが家にある学生は少ないため、喜んで日本から寄贈されたピアノを弾いていました」(青木さん)

   配属先は日本から寄贈された中古ピアノを大事に使っていた。しかし、気候条件や調律費用の制約から、良い状態ではなかった。授業はしばしば停電で中断され、家庭の事情などによる学生の欠席も多く、青木さんは授業が思い通りに進まないことに大きなストレスを感じていた。一方、同僚教員たちはそうした環境の中でもおおらかに仕事をしていた。 「毎日、どんな問題が起きるかと心配ばかりしていました。そして神経性胃炎にかかってしまったのですが、それをきっかけに自分の考え方を変えたほうがよいと思うようになりました。状況を受け入れ、できることを気楽にするようにしたら、ストレスがなくなっていきました」

   帰国後もガイアナの人々にオンラインで日本語を教え、ジャマイカの音楽団体「Music Unites Jamaica Foundation」でリサーチャーとして活躍している青木さん。「演奏会などでガイアナ、ジャマイカを訪ねることもありますし、その経由地のアメリカでも、知識を生かして在米日本人への年金に関する案内もしています。協力隊に参加したおかげで、豊かな音楽体験ができただけでなく、新しい活動につながっています」。


※シニア海外協力隊員の訓練期間…2018年度までは訓練期間が35日間だったが、現在は一般隊員と同じ73日間となっている



任地メモ

友人に教わったジャマイカの味

   派遣中は一人暮らしだったのですが、料理上手な友人がいて、おいしいジャマイカ料理をよく振る舞ってくれました。
   特に気に入ったのが「ライス&ピーズ」です。一見、日本の赤飯にも見える赤い色をした豆ご飯なのですが、これはキドニービーンズという赤い豆のせい。他にココナッツミルク、タイムなどのハーブを入れて炊き上げたもので、塩味の中にココナッツの香りがふわりと広がります。
   特別な日のごちそうは「オックステールシチュー」という牛テールを煮込んだ料理。初めて見た時は「骨ばかりだ!」と思いましたが、こちらでは「骨の周りが一番おいしい」と人気です。日本では比較的高価な牛テールですが、かつてカリブ海諸島にいた奴隷たちが、利用されない硬い尻尾を食べられるよう長時間煮たことが発祥だそうです。

JICA海外協力隊員ってどんな人?
ライス&ピーズには肉や野菜料理を付け合わせるのが定番

シニア世代とシニア案件

JICA海外協力隊は日本国籍を持つ20~69歳の方が募集対象となるため、定年退職後などに参加するシニア世代の隊員も少なくない。
世代を表す“シニア”の概念とは別に、隊員の区分を表す「シニア案件」は、一定以上の経験・技能などが求められる要請に基づいて派遣される隊員で、自身のキャリアを生かしたい方にお薦め。「シニア海外協力隊」と、日系社会で活動する「日系社会シニア海外協力隊」がある。

Text=工藤美和 写真提供=青木裕子さん