CASE1

“親切な同僚たちともっと話したい”
楽しく能動的に続けられる習慣づくりで会話力を向上

池﨑篤史さん
池﨑篤史さん

タイ/食品加工/2023年度2次隊・熊本県出身

大学卒業後、岡山県内の乳製品メーカーで6年ほど乳製品の生産・製造に携わる。2023年から協力隊員としてタイへ赴任。任期中に国立チュラロンコン大学が実施するタイ語学力試験を受けるなどし、26年から在チェンマイ日本国総領事館の草の根外部委嘱員として勤務。

池﨑さんのポイント!

  • 身の回りの全てを教材だと思う
  • 気になった単語は逐一チェック
  • 一緒に話し、それを喜んでくれる人を大切に
これが私のモチベーションアップ方
任期後半に企画・実施した研修では、日本風に抹茶やあんこのアイスの作り方を指導した。「コミュニケーションの取れなかった着任時、お荷物でしかないはずの自分に優しい同僚たちに、何とか報いたいと思っていました」

   高校時代から「協力隊になる」という目標を持っていた池﨑篤史さんは、日本での乳製品製造の経験を生かしてタイの畜産物研究開発センターに派遣され、商品開発や研修の開催を担った。任期を終えた現在は、隊員時代に培った語学力を生かしてタイで働く池﨑さんだが、赴任当初の苦い経験は今でもよく覚えているという。

   配属先であるタイ北部チェンマイの畜産物研究開発センターに初めて赴いた日、職員たちが歓迎会を開いてくれたが、タイ語で楽しそうに話している様子を見て、一気に不安が押し寄せた。何を話しているかほとんど理解できず、質問にもろくに答えられなかったからだ。語学訓練を修了したとはいえ、話すスピードが速くてなまりの影響もある実地のハードルは、なお高かった。

   活動を始めた当初、特につらかったのは同僚たちとのランチタイム。「タイ人は話好きなので積極的に話し掛けてくれるのですが、会話のキャッチボールなど到底できず、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました」。

   それでも周囲の皆は底抜けに優しく、会話が成り立たなくても毎日輪に入れてくれる。「彼らの気遣いに応えたい、もっといろいろな事を話したい」という思いから、池﨑さんはオンラインレッスンを受講。語彙を増やし、会話力の向上を目指した。また、配属先や街中で見聞きした単語はすぐに調べ、次の日には必ず使うよう心掛けた。

「タイ語は文法が単純で、単語さえ分かればある程度の会話が成り立ちます。町の看板やレストランのメニューなど身の回りの全てが教材だと思って、目についた単語をどんどん調べて使うようにしました」

   活用していたのは、スマートフォンのカメラをかざすだけで日本語翻訳ができる「Googleレンズ」や辞書アプリ「ごったい」。外出先で見つけた単語を“撮影”して後で単語帳にまとめたり、アプリの音声を聞いて声調をまねる練習を繰り返したり、日々の積み重ねで少しずつ「覚えた言葉」が「使える言葉」になっていった。

“能動性”の維持こそ効率的な学習法

   1年がたつ頃には、苦痛だったランチタイムが、楽しいおしゃべりの時間に変わりつつあった。「同僚たちは私のタイ語が上達していくのを褒めてくれて、単語に関する質問をすれば、その意味や成り立ちの議論で場が盛り上がることも。気に掛けてくれる周囲の存在こそが私にとって1番のモチベーションでした」。

   任期後半ではSNSで見つけたバドミントンのサークルにも参加し、配属先以外の人とも交流。教科書には載っていないリアルな若者言葉やスポーツ用語など新しいジャンルの言葉も覚えていった。

「語学の勉強を続けるための基本は楽しむこと!能動性をキープできれば、語学力は効率的に向上します」と池﨑さん。試験のための勉強ではなく、日々の暮らしに役立つ「生きた言葉」にこだわり続ける池﨑さんの勉強法は、現地の人々と共に生き、活動する世界中の隊員に役立つヒントが詰まっている。

Text=新海美保 写真提供=池﨑篤史さん