CASE4

言葉は人と人との距離を縮めるツール
早期退職で飛び込んだ未知の世界で“好奇心”が原動力に

中西康二さん
中西康二さん

パプアニューギニア/土木/2025年度1次隊・奈良県出身

大学院で修士号(農学)を取得し、地元県庁で約30年間、森林・林業の業務に従事。林道建設や治山工事の調査、計画、設計、施工監理などに携わる。早期退職し、2025年から土木隊員としてパプアニューギニアで活動中。

中西さんのポイント!

  • マイペースで語彙の拡充に集中
  • “未知”に出合うコミュニケーションを楽しみに
  • 活動では視覚的に伝える手段も駆使
これが私のモチベーションアップ法
同僚と橋の検査をする中西さん。「彼らは『できない』とは言わないですが、実際にやってくれるかは別問題(笑)。コミュニケーションしながら、一緒に絵図を描いて働くことが大切ですね」

   県庁職員として長年にわたって森林土木分野の業務に携わり、55歳で早期退職して協力隊に参加した中西康二さん。現在、派遣先のパプアニューギニアでは、これまでの経験を生かして道路や橋、埠頭などの公共施設の維持管理、土木工事の設計・監督、災害対応などに取り組んでいる。

   日々の活動で使う言語は主に英語。県庁職員時代は外国語を使う機会がなく、協力隊に合格してから就業後に週1回、英会話学校に通い“瞬時に受け答えをするマインド”を学んだ。「訓練所に入る前に英検2級を取得しましたが、訓練生の中には留学経験者など上には上がいますね。自信を失わないよう、自分のペースで語彙を増やすことに集中しました」と語学訓練を振り返る。

   赴任したミルンベイ州工事監督局では、道路や橋などの維持管理技術の向上のため、工事管理や完了時報告書の作成に関するアドバイスを行っている。20~30代の若手スタッフと共に現場を巡回し、課題や良い点をシェアして改善につなげる「KAIZEN Project」を実施。座学的な指導では事前に英語のスライド資料をしっかり準備するようにし、現場では日本で使う道具を紹介したりドローン映像を見せたりと、口頭での説明を補いながら理解を促すコミュニケーションを重視している。

「限られた予算や機材、技術者の数など日本とは異なる環境下で、より現実的な改善策の提案を心掛けています。言葉が完璧でなくても技術者同士で分かり合えることも多く、多民族国家であるパプアニューギニアの人々の“察する力”にも助けられています」

未知なる言語との遭遇を楽しむ

   学生の頃から協力隊に憧れ「いつか行きたい」と思いながら、日本で就職して経験を積んできた中西さん。第二の人生で飛び込んだ異国の地は、未知との遭遇にあふれ、職場以外の地域の人や出張先で出会う人とのコミュニケーションを日々楽しめていると話す。お気に入りの場所は、日曜日に訪れる教会。賛美歌の歌声や音楽に合わせて踊る人々の姿を通じて、土着の文化への誇りを感じられるという。

   パプアニューギニアでは、公用語の英語やピジン語、ヒリモツ語などだけでなく、地域ごとに異なる800以上の言語があるといわれる。険しい山や密林で各村々は孤立し、すぐ近くの村でも全く違う言葉が使われていることがある。中西さんにとって、そんな未知なる言語に出合うのも楽しみの1つ。出張で台風被害に遭ったミシマ島へ行く際には、同僚にその島で話されている言語の挨拶を教えてもらい、実際に現地で使ってみた。

「現地語学研修で教わったピジン語や村ごとに異なる言語を駆使して、自己紹介や簡単な会話などをするだけでも相手が喜んでくれるのがうれしいです。言語を学ぶことは、単に会話ができるようになるだけでなく、人と人との距離を縮めるきっかけになるのだと、しみじみ感じています」

Text=新海美保 写真提供=中西康二さん