日本語だけでなく、日本の文化も教えることで
学生が楽しく学べる授業を行った。
赴任先は3年制大学のビジネス日本語学科。日本語を習得し、将来日本で就職したり、日本を相手に仕事ができる人材を育てたりすることを目的とする学科です。私は1〜3年生の日本語の授業や、日本の歴史や地理を教える日本概況授業、日本文化活動など、さまざまな授業を担当しました。
大学のある地域は日本人が少なく、学生たちが日本を直に知る機会はなかなかありません。大学でも日本人教師は私1人のみ。学生にとって私は普段めったに接することのない、日本語のネイティブスピーカーでした。そこで、教科書から離れた授業を行う実践週間を利用して、さまざまな日本文化を紹介することに。学生に何を学びたいかを聞くと、茶道や華道といった日本の伝統的文化のほか、メイクアップ方法を知りたいという要望もありました。また、日本で流行っていたアイドルのダンスや、よさこいソーランを教えたり、かるた大会をやったりと、日本について楽しく学んでいける授業も行いました。
そのような授業が功を奏したのか、日本語のスピーチコンテストが目前に迫ると、どの学生も普段以上に熱心に日本語を練習していました。当日は皆、緊張しながらも立派にスピーチを行うことができたのです。
ほかにも、印象に残っている出来事があります。中国での最後の夏休みに、列車で旅に出掛けたときのこと。寝台列車の自分のコンパートメントに着き、ベッドを見ると、なぜか既に別の誰かが。困惑する私に、そこにいた女性が早口で話し掛けてきました。「もっとゆっくり話して!私は日本人だからそんなに早口では分からない」と中国語で伝えると、その女性はハッとしたような表情で「日本人ですか?」と日本語で問いかけてきたのです。よくよく聞いてみると彼女の前職は日本語教師だったそうで、そのまま意気投合し、彼女とは今でもメールで連絡を取り合っています。