村松 陽子さん シニア海外ボランティア

テレビ番組の多くは海外の輸入に頼るモンゴルに、
日本のドキュメンタリー制作の技術を。

2015.03

震災の被害を受けた日本に開発途上国から支援。
何か自分にできることはないかと考えた。

東日本大震災後、東北で震災復興の支援活動に携わっていた時、世界中から届くさまざまな支援の中に、開発途上国からの数多くの支援があることを知りました。貧困の問題を抱えながらも日本のことを心配してくれる途上国の人々が、一様に「過去に日本からの支援を受けたことへの恩返し」だと語っていることに感銘を受けたのです。
 私の仕事はテレビ番組、特にドキュメンタリー番組の制作に携わっていました。自分の経験を生かして途上国で活動できないかと模索していたところ、シニア海外ボランティアの存在を知り、応募しようと思い立ちました。

自分の経験を生かして活動。
ドキュメンタリー番組の制作指導に注力した2年間。

配属先は、モンゴルの国立の文化芸術大学に付属するラジオテレビ大学。私はこの大学の講師として、週2~3コマの90分の授業を担当することになりました。
 モンゴルでは数年前からテレビ局の開局ブームが訪れ、たくさんのテレビ局が乱立しています。しかし、番組制作の技術はまだ発展途上。外国から輸入された番組をそのまま放送するテレビ局も少なくありませんでした。特に自分が専門としているドキュメンタリー番組は、その内容と作り方に課題を感じたため、配属先の学校でドキュメンタリー番組に特化した授業を行うことを決意しました。
 ここで、日本とモンゴルの価値観の違いをあらためて考えさせられたエピソードがあります。日本のドキュメンタリー番組のDVDを学生たちと見て、内容を分析する授業でのこと。取材も、編集も、構成も、これ以上ないほど秀逸な番組だと私があらためて感心していると、一人の学生が手を挙げて、「なんでこの番組はこんなに早いテンポで、たくさんの情報を提供しているのですか?それは日本が狭い国土の中にたくさんの人がひしめきあっていて、あくせく忙しく働いているからですか?」と質問を投げかけてきたのです。
 私は思わず言葉を失いました。この番組を素晴らしいと思っているのは、日本で生まれ育った私の感覚であって、モンゴルの価値観から見れば、まったく異なる番組に見えていたのです。学生からの鋭い指摘から、価値観が変わればテレビ番組のつくり方も大きく変わるということにあらためて気付かされました。
 活動もあと半年ほどになったころ、ある同僚が「あなたは面白い授業をやっているそうじゃない?指導書を見せて」と声を掛けてきました。活動当初は行き違いから何となくわだかまりを感じていたのですが、自分の存在意義が認められたように感じ、素直にうれしかったです。
 私がつくったドキュメンタリー番組制作の指導書は、帰国後にも活用してもらえるよう、学校に寄贈しています。私の授業や指導書で学んだ学生たちが、いつかモンゴルで面白いドキュメンタリー番組を制作してくれる日がくることを、今から楽しみにしています。

JICAボランティアで得たもの

価値観が変われば番組の作り方も変わる。
貴重な経験を生かして海外支援に関わりたい。

シニア海外ボランティアで得た貴重な経験を、今後の自分の人生にどのように生かしていくか、今は模索中です。基本的には、映像制作分野で海外支援に関わっていきたいという思いはありますが、その一方で、映像に関係した新しいNPOを立ち上げようとか、やはりどこかの企業に所属しようとか、いろいろな選択肢を検討しています。自分の生活とのバランスも考えて、ベストな方法を最終的に見つけたいと思います。
 モンゴル人と日本人は外見がよく似ているので、つい内面も似ていると思ってしまいますが、その考え方や価値観はまったく違います。物事の進め方も、じっくりゆっくり考えて慎重に行うというよりは、ぱっと決断して、勢いに乗って前進する方を選びます。配属先の学校の同僚とは、考え方や価値観の違いですれ違うこともありましたが、活動終盤は、相手の立場でものを考えたり、価値観をちょっと転換してみたりすることで、当初より彼らを理解することができるようになりました。そして何より、考え方や価値観の異なる彼らとともに何かをできることの喜びは、何にも代えがたいものがあります。

これからJICAボランティアを目指すみなさんへのメッセージ

ボランティア活動を通じて世界を知る。
同世代の女性にもぜひ挑戦してほしい!

社会主義時代から女性の社会進出が活発だったモンゴルは、
どんな女性にも等しく活躍する機会が与えられています。
私は日本で子育てをしながら働くことにいつも難しさを感じていましたが、
モンゴルではそうした難しさは一切感じませんでした。
仕事と子育ての両立は、同世代の女性にとって常に身近なテーマであり、
国によって考え方や価値観が大きく異なることの1つです。
モンゴルにはJICAの家族随伴制度を使って5歳の息子を連れて赴任しましたが、
大学の同僚にも働きながら子育てをしている女性が多かったので、
子どもを一緒に遊ばせながら、休日を過ごすことができました。
私のように、海外でのボランティア活動を通じて、世界の価値観を知る人が増えることが、
日本社会を変えることにつながると思います。同世代の女性にもぜひ挑戦してほしいです。

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