川奈部 くに子(かわなべ くにこ)さん シニア海外ボランティア

教師として積み重ねたキャリアを、トンガで役立てる。
でもボランティアをしながら、一番豊かになったのは私でした。

2016.02

教師生活の中で持てた海外との接点。
教育分野での海外ボランティアを志望。

私は公立中学校で英語を教えながら、国際理解教育と帰国・外国人生徒の受け入れ指導、そのあり方についての研究を25年間続けてきました。国際理解教育とは、日本と開発途上国の関係など、異文化理解について子どもたちへ伝える活動です。外国人生徒の受け入れ指導では、主に東南アジアや中南米から来日する生徒の学習支援をしていました。途上国について知るうちに、国を豊かにしていくベースは教育だと感じるようになりました。
 外国人生徒たちの母国への興味と、自らが海外に出て自分の目で外国を見てみなければ、指導が机上の空論になってしまうのではとの思いから、シニア海外ボランティアへの参加を志望しました。

日本語教師の資格を取得し自費でパラグアイへ。
日本文化の指導のため習いごとにも通う。

私はもともと日本語教師の資格も持っていて、外国人生徒に日本語を教えていましたが、日本語学校で教科書を使って体系的に教えた経験はありませんでした。そこで、57歳で早期退職し、パラグアイに2度自費で行き、日系人の子どもたちを対象に、日本語教授法の経験を積みました。また、シニア海外ボランティアの日本語教師には、日本語だけでなく日本文化の紹介や指導も求められるため、着物の着付けや茶道、書道、華道も習いました。

トンガではハードながらも楽しい2年間を、
短期のトルコでも充実した3ヵ月を過ごす。

私の派遣先は南太平洋に浮かぶトンガ王国の教育省。全国の高等学校の日本語履修者を対象とした修了試験の問題作成や教科書の改訂、それに伴う教材の開発のほか、協力隊が運営するトンガの日本語教師会に参加し、遠い島で活動する隊員とも連絡を取りながら、日本語教師のレベルアップのためのワークショップやスピーチコンテストも開催しました。
 仕事は質量ともにハードでした。そこで、前任のボランティアの活動報告書や資料を精査し、配属先の同僚やJICA事務所とも話し合いながら、仕事の進め方を整理。その結果うまく仕事が運ぶようになると、現地での生活にも慣れていき、活動が楽しくなっていきました。
 ずっと私を心配していた主人は、JICAの「家族呼び寄せ制度」を使ってトンガに来てくれました。住んでいる場所や活動の様子を見て安心し、トンガを好きになってくれたようです。また、出発前にかかりつけ医に相談し、できる範囲で薬を処方していただいたおかげもあり、体調を崩すこともありませんでした。
 帰国後、孫の世話の合間を縫って、再び短期のシニア海外ボランティアとしてトルコへ。トルコはトンガとは開発の度合いが全く異なる中進国で、大学の日本語学科のレベルもとても高く、文化交流や日本語教室での指導で充実した3ヵ月間を過ごしました。

JICAボランティアで得たもの

講演活動でトンガでの経験を語り伝える。
ボランティア活動は今後も継続したい。

現在は、千葉県内外の教育機関や公民館、生涯学習機関、NPO法人などからの依頼で、出前講座や交流活動を行っています。講演では必ず「トンガと日本のつながり」、そして「途上国で貧困や格差が起きる理由」の2点についてお話ししています。
 「トンガと日本とのつながり」でお話しするのは、トンガで日本語教育が始まった理由。1985年に日本政府の支援で高校が建設されたとき、「支援国の言葉、日本語を学ぶのは当たり前」となったからだそうです。ラグビー日本代表にトンガ人が多いのも、日本への興味からというのがひとつの理由です。
 そして「途上国で貧困や格差が起きる理由」でお話しするのは、教育の重要性です。途上国では経済状態による学校や教師の不足、家庭環境などにより、子どもたちの教育機会が著しく少なく、将来の就労環境も決して良いとは言えせん。途上国の現実を目の当たりにし、国を支える根底は教育だと強く感じました。
 もともと、私の知識や技術を現地に伝えたいという気持ちでボランティアに参加しましたが、豊かになったのは私の方でした。トンガを実際に自分の目で見て、経験したことで、本で得た知識ではなく、途上国の状況を体感できたことは大きな収穫です。また、トンガの人たちとは、友人としても活動のパートナーとしても信頼関係を築くことができ、その関係は今でも続いています。教員養成学校で教えた生徒が、現地の日本語学校で立派に先生として教えていると聞くとうれしくなります。

これからJICAボランティアを目指すみなさんへのメッセージ

自分を磨き学びながら活動すれば、
与えるより得られるものの方が多い。

ボランティア参加前に持っていた期待を超えるものが、活動を通して得られると思います。
シニア海外ボランティアは特に、数十年の経験をベースに、高いレベルの知識や技術を伝えることが目的。
でも実際は、伝えたこと以上に得られるものが多いです。
私の国際協力はまだまだこれから。途上国の現状を知ってもらい、
一人でも多くの方にアクションを起こしてもらえるように、今後も活動を続けていきたいと思っています。
そしてまた長期のシニア海外ボランティアとして、今度はアフリカで日本語を教えてみたいです。

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