小田島 満哉さん(おだしま みつや)さん

小田島 おだしま  満哉みつやさん

職  種
農業協同組合/家畜飼育
派遣国
ネパール/フィジー
派遣期間
2011年3月~2013年3月
2014年1月~2016年1月
  • 社会貢献キャリア
  • # 畜産 # 経験を生かす # リピーター

40代の頃から漠然と抱いていた思いを実現したことで、
60代にして人生観が大きく変わりました。

2016.06

応募のきっかけ

小田島 満哉さん

40代になり海外での活動を希望。
上司の言葉が応募の後押しに。

私は40年間、全国農業協同組合連合会(全農)で畜産の技術者として働いていました。インドネシアやオーストラリア、アメリカなどに3ヵ月程度技術指導に行った経験もあり、40代になるころには、退職後は海外で活動してみたいという思いを抱いていました。
 退職が近づき、上司にその話をすると、「興味があるのなら、ぜひとも行ったほうがいい」と背中を押され、シニア海外協力隊への応募を具体的に検討し始めました。
 当初は私が専門とする畜産関係の募集はなかなかありませんでしたが、定年退職時(63歳)に、運よくネパールの農業共同組合に関わる募集があり、無事に合格しました。派遣前訓練では、若い世代や、さまざまな専門性、経歴を持つ方々と衣食住を共にしたことが、とても刺激的で楽しかったです。普段のように晩酌をしない規則正しい生活も健康的で良かったですね。

現地での活動

フィジー農業試験場のスタッフと(子牛を撮ろうとミルク缶と牧草を準備したが元気すぎたため、急きょ子豚に変更) フィジー農業試験場での現地講義

ネパールでは農協のシステム作りに貢献。
フィジーでは畜産のノウハウを伝授。

ネパールでの主な活動内容は、農業協同組合の事業改善の指導です。ネパールには2万もの協同組合がありましたが、そのほとんどは、日本の農協のような購買・販売・共済事業に分業化された運営が行われているとは言い難い状況でした。中でもサポートが必要と感じた、購買・販売事業部門については、1年間実施した農協の実態調査を基にモデルとなる農協を5つ選び、体制改善のための提案、計画を立てました。
 そこで気をつけていたことは、「農協のあるべき姿」を説得するのではなく、とにかくやってみること。計画に沿った実際の活動は現地の人たちに任せるようにしていたため、体制さえ整えば、普及できる仕組みを作れたのではと思っています。
 ネパールから帰国後は、再びシニア海外協力隊に応募。家畜飼育の職種でフィジーに赴任しました。活動内容は、首都スバの郊外にある国立農業試験場で、主に研究体制の整備と飼料の開発を行うこと。まず、60件の農家を回ってヒアリング調査をしたところ、正しい飼育方法が分からないとの声が上がりました。そこで、飼育の生産性を上げるため、飼養標準を学ぶ研究会を開催。ここで牛の体重の測り方などの基礎を身につけながら、自分たちの牛や豚の状態をより深く知る手法を紹介していきました。
 ネパールとフィジーに赴いて感じたことがあります。それは、私が持っている10の知識のうち、実際に使えるのはせいぜい1つか2つで、そのほかは彼らにとって必要ない、ということ。そんな中でやるべきなのは、彼らが何十年、何百年と続けてきた農業を尊重しながら、私たちが持っている知識の中で実際に使えそうな1つか2つを見つけることだと気づきました。
 全農では、よく「農業に国境あり」という表現をしていました。国が変わると、やり方もまったく異なるという意味で、日本の技術をそのまま海外で用いることはできません。実際、40年間のキャリアで牛のことは一通り知っているつもりでしたが、フィジーの牛は私が今まで見てきた牛と全く違いました。日本の乳牛の寿命は5~10年が精一杯ですが、フィジーの牛は20年近く元気です。本来の牛はこんなに健康なんだと衝撃を受けました。生産性が低い畜産=悪い畜産じゃない。動物の福祉が第一という全く違う考え方に触れ、勉強になりました。

帰国後のキャリア

日本の“無駄”に気付かされた海外での生活。
帰国後は外国人に日本語と暮らしをサポート。

フィジーから帰国した今は、地元の取手市の国際交流協会で、さまざまな国の人に日本語を教えています。また語学だけでなく、ネパール滞在時に現地の方にお世話になったので、恩返しの思いで生活面についてもサポートしています。現在は大人を対象にしていますが、今後は子どもたち主体の日本語教室も開き、言葉だけでなく勉強なども教えていけたらと思っています。

JICA海外協力隊で得たもの

ネパールでは電気が止まることもあり、限られたものしかない生活でした。しかし、そんな暮らしを送っていると、頭の中がすっきりして、我々が普段、どれほどの無駄に囲まれているのかを思い知らされます。選択肢が多いことが豊かなわけではなく、反対に選択肢が少ないからといって貧しいわけではありません。現地の暮らしにどっぷりと浸かることで、日本の生活のさまざまな無駄に気付くことができました。

新たな価値観

これからJICA海外協力隊を目指すみなさんへのメッセージ

職種はいろいろありますが、自分が思い描いたとおりに活動できることは、まずないと思います。現地に行くと、やるべきことがたくさん見つかるので、要請内容が自分に適しているかだけで判断するのはもったいない。特にシニア海外協力隊を考えている皆さんは、今まで経験してきたことがいろいろあるでしょうから、それらを踏まえて検討してみてください。60年以上生きてきた私も、ネパールやフィジーの人と触れ合ったことで、こういう生き方もあるのだと人生観が変わりました。極端な環境の変化はこたえる部分もありますが、今までの人生とはまったく違う土俵で過ごせる2年間は、本当に貴重だと思います。挑戦すれば、きっと新たな人生観を会得できるでしょう。

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