事業評価外部有識者委員会(2022年10月)の概要

1.日時

2022年10月4日(火)13時00分~15時00分

2.開催方法

オンライン(Teams)開催

3.出席者

高橋委員長、源委員長代理、石本委員、今田委員、木内委員、黒崎委員、功能委員、竹原委員、舟越委員
(JICA)宮崎理事、評価部長他

4.議事概要

今回の議題は、1)開発協力事業の新たなマネジメント方式(クラスター事業戦略)の導入及び評価手法の整理・検討状況 2)紛争影響国・地域における事業評価手引きの見直し・改訂、の2点。今次委員会での助言等を踏まえ、新事業マネジメント方式における評価手法の更なる検討及び紛争影響国・地域での手引きの改訂を進める。

委員からは、下記のコメント等があった。

(1)開発協力事業の新たなマネジメント方式(クラスター事業戦略)の導入及び評価手法の整理・検討状況

今後JICAは、課題解決に向けた事業の大きな纏まり(クラスター事業戦略)によって、事業のマネジメント及び評価を行う予定。前回に引き続き、クラスター事業戦略の評価手法等に関する最新の検討状況を報告。

委員コメント

  • 包括的に開発協力事業を捉える新たなマネジメント方式(クラスター事業戦略)の導入は、時代のニーズを捉えたもので、JICA 事業全体への大きな影響をもたらすと期待する。
  • クラスターの推進では、他アクター等との一層の連携が求められる。成果の最大化を図るプラットフォーム活動では、日本ならではの付加価値をどう評価するかも要検討。
  • クラスター事業戦略には「始まり」と「終わり」があるのか。継続していくものを評価する上で、タイムラインをどのように考えるかについては、今後継続して整理が必要。
  • クラスター・シナリオの作成においては、協力事業が受益者に如何に裨益するかの視点が大切。ToC(Theory of Change)は、事業主体に焦点を当てるだけなく、受益者を細分化し、特性を踏まえた上で、様々な受益者の視点("Leave No One Behind"(LNOB)の視点等)も取り入れることが必要。
  • クラスターの評価とは、クラスターの"戦略(シナリオ)"の評価であると理解できた。それはJICA支援の知の蓄積やナレッジ化等を目指すもの。そうであれば、個別事業の評価とクラスター評価は目的が異なる。今後、両者の関係を整理することが必要。また、クラスターの個別案件については、モニタリングだけでは不十分となる可能性がある。構成する個別案件の評価も含めて、継続検討が必要。
  • クラスターの評価を導入しつつ個別案件の評価も継続すれば、JICA内部での業務量の増大が予想される。人的リソース等も考慮し、今後組織として、クラスター・マネジメントの中での個別の事業の位置づけをどうするのか、考えをまとめることが必要。

(2)紛争影響国・地域における事業評価手引きの見直し・改訂

JICAでは、紛争影響国・地域における事業評価の手引きの見直し・改訂を進めている。紛争影響国・地域での事前・事後評価実施時における留意事項を整理した手引きの改訂内容を説明。

委員コメント

  • 実際に紛争、クーデターや騒擾等が発生している国が存在し、引くに引けない状況の中で支援を検討する状況がある中で、今回のような事業評価に関する手引きの改訂は重要。今後も具体的事例を参考に教訓等を導き出し、より良い手引きを作成することが必要。
  • 紛争影響国・地域での事業は、変化し続ける状況の中で、柔軟に対応しながら進めて行くことが必要。そのため、(現行のJICA事業評価基準の)6項目には含まれない「プロセス・マネジメント」(事象が予見できない形で変化してゆく中で、どのようにプロジェクトを進めて行くのか)の観点からの評価が重要。(現行の評価基準の)ノンスコア項目でその点を確認した上で、拾いきれない価値をどう評価していくかという点は今後要検討。
  • 紛争影響国・地域における事業では、コレクティブインパクトが一層重要であり、事業評価を実施する中でも、事業単体ではなく、他機関との連携等の外的整合性を重視すべき。
  • 人道支援の評価では、緊急支援として始まった事業が10~15年も継続している案件もあり、支援を継続するか退出(Exit)か、長期的な開発の支援に移行(Transit)するかの判断の妥当性も評価している。開発機関であるJICAにとって、緊急的な支援から中長期的な開発支援へ移行する中での人道機関との連携も、重要な視点と考えられる。
  • ミャンマーやアフガニスタンの例を見ると、強権化しつつある国に対してどういう支援をするのか、こうした国への支援をどう評価するのか、という視点も検討が必要。
  • 平和構築の観点での ToCの作成・モニタリングのアプローチに関して、ToCを作ってもすぐに状況は変わる。「総括的評価(説明責任の観点からアウトカム、インパクトの達成を評価)」や「形成的評価(事業の改善の観点からインプット、アウトプット、アウトカムに至るプロセスを評価)」ではなく、「発展的評価」(Developmental Evaluation)も、有効。因果関係が複雑且つ状況が絶えず変化する中でPrinciple(原則)ベースで考え、必要な要件を限定的に捉え、その点の達成状況だけを評価する手法である。

(3)委員長まとめ

  • グローバル・アジェンダ及びクラスター事業戦略に関しては、何を目的とするのか、という根本的な問いかけもなされた。クラスター戦略で効率的なデリバリーを目指す場合でも、受益者は誰なのか、効率と公正の矛盾をどう両立させるのか、個別のクラスター事業戦略の議論の中で、丁寧に考え方を深めて行くことが重要。
  • その「目的」に関しても、基本的な事項は整理しておくとしても、国際的な開発協力の動向や日本政府の意向等、時とともに変化していく状況もあり、その都度丁寧な議論を行い、必要に応じ見直すことも厭わないという姿勢が必要となろう。
  • クラスター単位の評価と個別事業の評価との関係は非常に重要な観点であり、今後も引き続きJICA内部で検討願いたい。
  • 各国の国益や国際益といったリアリティーも考慮し、JICAの役割や機能の最大限の発揮に資する様な、教訓導出や貢献度の評価が必要と思料。

以上