効果

今回評価対象としたプロジェクトにおいては、プロジェクトにおける技術移転を通じ、さまざまな効果がもたらされた。その主な事例は以下のとおりである。

(注)第三国集団研修「セラミック解析計測化」の終了時評価96頁参照

1. 制度面への影響

プロジェクトの実施により当該技術の有効性や技術能力が向上した結果、その国の制度への反映が図られた。たとえば、インドネシアの「ソロ身体障害者職業訓練リハビリテーションセンター」(プロジェクト方式技術協力)、韓国の「水質改善システム開発」(プロジェクト方式技術協力)などでは、プロジェクトの実施によって当該分野の重要性について相手国側の認識が深まり、関連分野の法律の制定・改訂につながった。さらに、ブラジル「産業廃棄物処理技術プロジェクト」(プロジェクト方式技術協力)やチリ「構造物群の地震災害軽減技術」(研究協力)においては、カウンターパートが当該分野の法律や基準の策定に参画しており、移転された技術が有効に活用されている。

このほかにも、フィリピン「公衆衛生プロジェクト」(プロジェクト方式技術協力)では、プロジェクトにより「全国結核対策計画新指針」の有効性が実証されたため、フィリピン政府によって同指針の全国展開が決定され、タイ「船員教育訓練センター拡張・近代化」(プロジェクト方式技術協力)では、プロジェクトの成果を受け、タイ政府が「船員の訓練および資格証明ならびに当直の基準に関する国際条約(STCW条約)」を批准するに至るなど、制度面における多くの効果があがっている。

2. 技術の普及

プロジェクトにおいて開発、改善された技術は、セミナーの開催、技術指導などを通じ、企業や関連機関などに普及が図られた。タイ「北部セラミック開発センター」(プロジェクト方式技術協力)では、プロジェクトにおいて開発された新技術が企業に導入され、製品の品質向上につながっており、また、コスタ・リカ「中米域内産業技術育成計画」では、プロジェクトにおいて指導した5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)運動が国立職業訓練校のカリキュラムに組み込まれることとなった。ケニア「ムエア灌漑農業開発計画フォローアップ」(プロジェクト方式技術協力)では、プロジェクトによる農業収益の増加をみたプロジェクト周辺の農家が自発的に二期作・二毛作の導入を試みるなどのプラスの効果がみられた反面、そのために水不足が懸念されるというマイナス面の効果も指摘されており、非常に興味深い結果が得られた。

第三国集団研修においては、一般的に、研修員は帰国後、日常業務や研修会の開催などを通じ、職場の同僚などに習得した知識や技術の伝達を図っているが、その一方、資金や機材、設備が不足しているため、習得した技術を十分伝達することが困難となっている事例も少なからず報告された。

3. 住民の意識の変化

プロジェクトの実施により、住民の開発に対する意識が醸成され、より主体性をもって開発に積極的に関与するようになった事例もあった。ラオス「ヴィエンチャン県農業農村開発計画」(プロジェクト方式技術協力)では、村落におけるワークショップの開催を通じ、村民の開発への参加意識が醸成され、集会所を自助努力により建設する村が現れた。

ネパール「プライマリ・ヘルスケア」(プロジェクト方式技術協力)では、地域住民へのプライマリ・ヘルスケアに関する啓蒙活動を実施した結果、住民が自主的に定期的なミーティングを開催するようになった。また、タンザニア「キリマンジャロ村落林業計画フェーズII」(プロジェクト方式技術協力)においては、住民がみずから植林し環境保全に努める気運が高まったと報告されており、これらのプロジェクトは、いずれも住民参加が効果的に図られた好例であろう。