~広域での平和構築支援の共創に向けて~JICA大湖地域平和構築ワークショップを開催!

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SDGs
#17 パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs

2024.04.16

国境を超える課題に対する協力を共創するため、ウガンダでワークショップを開催

 2024年1月29日から2月2日まで、JICAウガンダ事務所は、アフリカ大湖地域にある他のJICA拠点から事務所員を招き、当該地域における将来的な協力の方向性等について検討することを目的として、「JICA大湖地域平和構築ワークショップ」を開催しました。本ワークショップにはケニア、コンゴ民主共和国、タンザニア、ブルンジ、ルワンダ、南スーダンの各拠点の所員のほか、JICA本部よりガバナンス・平和構築部平和構築室からも参加し、計14名の参加で開催しました。ワークショップでは、ウガンダで実施してきた北部復興支援・難民支援案件の視察、及び関係機関との意見交換を行い、当該協力を通じて創出された成果や今後に向けた課題等について確認を行った上で、これまでのウガンダにおける協力によって得られた知見やアセットを活用し、アフリカ大湖地域における平和構築の実現に向けた協力について参加者間で活発な意見交換を行いました。最後のセッションでは参加者より創出された具体的な協力アイデアを発表し、その実現に向けた今後の取り組みについて議論されました。

「俯瞰的視点」の必要性

 アフリカ大湖地域に位置する国々では、各地で民族間の政治的対立や資源の利権争い等に起因する紛争が勃発し、それに周辺諸国の外国勢力の介入が加わり、複雑な混乱が続いてきた歴史的経緯があります。本地域では歴史的、地理的背景から国境を越えての移動が日常的であるため、一国内の政治政情不安、治安悪化は周辺国への難民流入へと繋がりやすい傾向にあり、大量かつ長期化する難民の発生は受入れ国の政治・経済・社会状況にも影響を与えることが多々あります。このように、大湖地域においては一国の政治/治安情勢が周辺国に与える影響は少なくなく、点(一国)の視点のみでなく、俯瞰的な視点で大湖地域の現状を把握し、各JICA事務所がこれまで培ってきた知見の共有を行い、将来的なJICAの支援に繋げていくことが求められています。

ウガンダが培ってきた知見を地域の平和構築に還元できるように

 JICAはウガンダにおいて、2000年代から、内戦によって生じた国内避難民の帰還を、行政支援や脆弱層支援を通じて促進してきました。今回のワークショップではこれらの事業のうち、「北部ウガンダ生計向上支援プロジェクト フェーズ2(Northern Uganda Farmers’ Livelihood Improvement Project (NUFLIP) Phase 2)」と「アチョリ・西ナイル地域コミュニティ・レジリエンス強化のための地方行政能力向上プロジェクト(Project for Capacity Development of Local Government for Strengthening Community Resilience in Acholi and West Nile Sub-Regions: WACAP)の事業実施場所を視察し、裨益者グループから事業の成果を直接見聞きする機会を設けました。

 NUFLIP2では、市場志向型の野菜栽培技術と市場調査や栽培計画などの実施方法に関する研修を元国内避難民を含めた農家に提供しています。フェーズ1から対象農家数を大幅に拡大しているだけでなく、雨季に加え乾季の野菜栽培技術研修も行っており、今回訪問した農家グループは予算管理に関して研修を受けた後、本事業を通じて導入した灌漑システムの実習を行いました。ワークショップ参加者は農家グループの裨益者と対話し、「1年に3回の収穫ができることで収益が向上した」など、嬉しい声を聞くことができました。

予算管理の研修の様子。子どもを連れた参加も歓迎される。

予算管理の研修の様子。子どもを連れた参加も歓迎される。

灌漑システム実習を見守る農家。乾季でも農作物の生育に必要な水を供給可能となった。

灌漑システム実習を見守る農家。乾季でも農作物の生育に必要な水を供給可能となった。

 WACAPは内戦の影響を大きく受けたウガンダ北部のアチョリ地域、西ナイル地域の地方行政官の能力強化を目的とし、2016年から2021年に実施された事業です。事業が終了して2年以上が経過していますが、当時の裨益コミュニティは現在でも2週間ごとに会合を開き、コミュニティの問題や役割を共有・議論し、計画的な作物栽培と管理を実施していたほか、定期積立型貯蓄貸付(Village Saving and Loan Association: VSLA) を導入し、コミュニティメンバーの急病などの不測の事態に備えたコミュニティ全体の貯蓄を行っていました。裨益コミュニティへのインタビューでは「JICAの支援を受けた行政官の指導を通じて生計が向上し、家を新たに建設したりバイクを購入したりできた」と生き生きと語ってくれました。また、視察時には県議員からJICAへの謝意が伝えられました。故郷でゼロから生活を再建してきた元国内避難民の力強い自立への軌跡は、ワークショップ参加者に大きな示唆を与えるものでした。

裨益コミュニティの倉庫。作物の貯蔵だけでなく、年度計画や支出管理の「 見える化」を実践。

裨益コミュニティの倉庫。作物の貯蔵だけでなく、年度計画や支出管理の「見える化」を実践。

倉庫前に集まった裨益コミュニティとワークショップメンバー。

倉庫前に集まった裨益コミュニティとワークショップメンバー。

JICA事業を通じた難民・難民受入れ地域の生計向上支援

 JICAは、国内避難民帰還に係る支援経験を生かし、ウガンダの難民と難民受入れ地域及び難民流入の影響を受ける地域を対象にした生計向上支援や行政支援を行っています。今回、ウガンダの農家及びウガンダで生活を送る難民の生計向上に寄与する、コメ振興プロジェクト フェーズ2(Promotion of Rice Development (PRiDe) Project Phase 2)を視察しました。本事業で指導を受ける農家グループは、難民と難民受入れ地域の住民が一緒にネリカ米を生産・管理していました。難民の参加者からは「将来自国に帰還した後も本事業で得た技術を活用したい」という声が上がり、難民受入れ地域からの参加者も「将来子どもや孫の世代にもこの技術を伝えていきたい」と話していました。作られたコメは、難民居住区内の市場で販売するなど住民の生計向上に貢献していました。ワークショップ参加者から積極的な質問がなされ、市場見学でも難民や難民受入れ地域の住民との意見交換が行われました。

倉庫に保存されているネリカ米。収穫を終えた時期で、倉庫が活用されているのを確認できた。

倉庫に保存されているネリカ米。収穫を終えた時期で、倉庫が活用されているのを確認できた。

難民居住区内の市場で販売されているネリカ米。

難民居住区内の市場で販売されているネリカ米。

大湖地域における平和構築支援の拡大に向けて

 本ワークショップでは、JICA事業地に加え難民受入れセンターを訪問したほか、難民受入れを担うウガンダ政府や国際機関の政策や活動内容を学ぶ機会も設けました。
 ウガンダ首相府難民局からは、難民受入れ政策や受入れに係る課題が共有され、またJICAが派遣する難民アドバイザーからは難民局とJICAの協力内容についての発表がされました。また、包括的難民支援枠組み事務局(CRRF: The Comprehensive Refugee Response Framework)からは、2023年12月に開催されたグローバル難民フォーラムでの成果が共有されたほか、地域の連携を促す地域機関である政府間開発機構(IGAD: Intergovernmental Authority on Development)からは、ウガンダの難民受入れを例に地域内での連携強化を通じた平和の発展についてプレゼンテーションがなされました。各講義後には活発な議論が行われ、地域的な平和構築支援の構想に大きくつながりました。
 最終日には、各参加者が得た学び・気付きを基に地域の平和構築に資する支援案を作成し、本ワークショップは閉会しました。 本ワークショップの結果を踏まえ、JICAウガンダ事務所は、ウガンダ国内の難民受入れ支援のみならず、近隣諸国のJICA事務所及び関係機関と協力の下、分野を超えた地域的な連携強化を推進していきます。

JICA大湖地域ワークショップ参加者。このほか、多くの参加者がオンラインで参加しました。

JICA大湖地域ワークショップ参加者。このほか、多くの参加者がオンラインで参加しました。

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