2020年1月29日
日時:2020年1月25日(土)13:00~16:00
場所:つくば市小野川交流センター
主催:つくば市・JICA筑波
協力:東京フード株式会社
https://www.tokyo-food.com/index.html
つくば市、東京フード株式会社とJICA筑波は、インドネシアで質のよいカカオを生産し農家の収入が向上するように協力活動を行っています。このワークショップでは、バレンタインデーを前に、一般参加者の皆様とカカオやチョコレート、そしてインドネシアでの活動について学び、チョコレートづくり体験を行いました。
まず東京フードの塩見さん(カカオプロジェクトチーム・マネージャー)から、東京フードのご紹介と、世界のカカオ生産、そしてインドネシアでのプロジェクトの説明をいただきました。カカオはコーヒー豆のように赤道に近い地域で生産されます。この赤道をはさんだ地域は「カカオベルト」と呼ばれています。東京フードではこのベルトの中に位置するインドネシア・スラウェシ島のゴロンタロ州ボアレモ県にて、カカオを収穫したあとの発酵や乾燥、選別といったプロセスを改善し、カカオ農家の収入が向上するよう活動を行っています。インドネシアの農家の皆さんや、現地のカカオの木の写真を見せていただきました。
●草の根技術協力事業 インドネシア国「安全・安心品質でのカカオ加工技術を活かしたつくば市・ボアレモ県の食農産業の共同振興事業」
https://www.jica.go.jp/partner/kusanone/tokubetsu/ku57pq00001jwhw4-att/ind_19_t.pdf
参加者の皆さんは「カカオは赤道に近いところで育つ」ことを学びました。でも実は、つくば市内でもカカオの木を見ることができるのです。JICA筑波図書情報室の松田司書から筑波実験植物園(つくば市)にあるカカオの木をご紹介。筑波実験植物園は一般に公開されていて、熱帯や乾燥地、熱帯降雨林にしか見られない植物を見ることができます。南国のカカオを少し身近に感じられたところで、松田司書からチョコレートの作り方の大まかな流れを説明しました。
ここでチョコレートのプロである東京フードさんにバトンタッチ。中島さんから、一般的に私たちが口にしているチョコレートがどのように生産されているのか、動画や写真をまじえてご説明いただきました。カカオ豆がチョコレートになるのではなく、実はカカオ豆から「カカオマス」「ココアパウダー」「ココアバター」といったさまざまな原料が作られます。こうした原料を組み合せて、さまざまな味と香り、風味をもったチョコレートが作られるのです。
大きな工場で作られるチョコレートの説明を受けたあと、東京フード・鈴本さんから皆さんに体験いただくチョコレートづくりの説明を受けました。ワークショップでは、2グループがスイートチョコレート(ほろ苦いチョコ)、2グループがミルクチョコレートを担当しました。今回の体験では、通常チョコレートづくりで行う「テンパリング」(注)をせず、またコンチェとよばれる撹拌機(かくはんき)を使わずに、フードプロセッサーとすり鉢・すりこぎを使ってチョコレートを作っていきます。
注:チョコレートをなめらかな口当たりにする温度調整のこと
いよいよ、手づくりチョコレート体験のはじまりです。炒ったカカオ豆の皮をむいていきます。皮をとりのぞいてくだいたものは「カカオニブ」とよばれます。うまく皮がむけたら試食。少し苦いけれど、チョコレートの香りがしました!
次に、フードプロセッサーを使ってカカオニブを細かくくだきます。砂糖やココアバターなどの材料を加えて混ぜると、つぶつぶのカカオニブが次第にどろりとしたペーストになってきます。これは、カカオ豆の中の脂肪分がにじみだしてくるためです。
いよいよ、チョコレートづくりの山場です。「日本のコンチェ」すり鉢・すりこぎを使い、ペーストがなめらかになるようさらにまぜていきます。根気強く30分、グループメンバーが順番にすりこぎを握ります。
参加者の皆さんの協力のもと、ペーストがチョコレートになりました。シリコン製の型に丁寧に流し込んでいきます。あとは冷蔵庫で冷やし、固まるのを待ちます。
チョコレートを冷やす間、松田司書からカカオ生産国やチョコレートに関する本の紹介を行いました。カカオが最初に消費された中南米から、カカオ生産が広まった西アフリカ、そしてインドネシア。カカオ生産国で問題となっている児童労働についての本を紹介し、最後に児童労働をテーマにした谷川俊太郎氏の詩「そのこ」の絵本(晶文社)のよみきかせを行いました。子どもたちが働かなくてもいい社会をつくるためには、東京フードさんが協力しているインドネシアプロジェクトのように、高品質なカカオ豆を生産して農家が収入を高めることが重要なのです。
チョコレートが固まりました。そっと型から外したらできあがりです。スイートチョコレート、ミルクチョコレートどちらも完成しました!
市販のチョコレートとは異なり、つぶつぶ、ジャリジャリ感の残る素朴な手づくりチョコレートができました。みんなですりまぜてできあがったチョコレート。時間をかけたからこそ、その味もひとしおです。東京フードさんが製造しているなめらかなチョコレートもいただいて、味や舌触りのちがいを楽しみました。チョコレートづくりには多くのプロセスがあり、機械なしで作るのは大変ということがわかった参加者の皆さん。それでも多くの方が本ワークショップを通じてチョコレートがもっと好きになったと感じていました!
参加者の皆様の感想(アンケートより一部抜粋)を紹介します。
・チョコレートづくりの大変さが良くわかった。カカオ豆をとりまく状況を知ることができてよかったです。実際にカカオ豆を見て触って香りをかげて、味わえて、良い体験をさせて頂き、ありがとうございました。
・二しゅるいのチョコレートが作れたり、本の読みきかせなどたくさんあって楽しかったです。チョコレート作りのすりばちでまぜる時が一ばんむずかしかったです。今度お家で作ってみたいと思いました。
・カカオを育てている国のこと、チョコレートができるまでのことを子どもたちと一緒に学ぶことができてとても有意義な時間でした。おすすめの本も読んでみたいと思います。
・たいへんだったけどとてもたのしかったよ。おいしかったです。
・とても勉強になりました。市販されているチョコレイトにどれだけの工程を重ねて作られているかわかりました。出来たてのチョコレイトの味は、とてもおいしかったです。大変良い経験になりました。
インドネシアでの草の根事業は2020年6月のプロジェクト終了にむけ、最終段階にさしかかっています。高品質カカオ生産のための技術が移転され、質のよいカカオが日本に輸入されれば、私たちもよりおいしいチョコレートを食べることができますね。東京フード、つくば市と共にJICA筑波もインドネシアでのラストスパート開始です!