【実施報告】教職員向けセミナー変容が求められる学校~求められる人材とJICA海外協力隊~

2021年10月8日

 8月21日(土)、JICA横浜が主催し、教職員向けセミナー「変容が求められる学校~求められる人材とJICA海外協力隊~」を開催しました。日本の学校に通う外国につながりのある子どもたちが増加する日本社会において、これからの学校はどうあるべきか、そのような学校現場で協力隊経験をいかに活用していくか、現場での実務・教育共生・研究分野で経験豊富な講師と参加者の皆さんが共に考える機会となりました。当日は約50名の方にご参加いただきました。

【登壇者】
滝坂信一氏(JICA横浜 技術顧問 多文化共生)
笠原陽子氏(玉川大学 客員教授/神奈川県教育委員会教育委員)
粟根幸子氏(愛川町立中津小学校 教頭/JICA海外協力隊経験者)

【画像】左から滝坂技術顧問、笠原教授、粟根先生

滝坂技術顧問からの話題提供

 まず滝坂技術顧問からJICA海外協力隊の経験者に向けて、「派遣国から帰国後数日の間、日本社会に違和感を感じなかったか」という投げかけから始まりました。
 続いて児童・生徒のいじめや不登校、暴力行為の発生や教員の精神疾患の増加といった学校現場で生じている様々な問題が提起され、近年増加する外国につながりのある児童・生徒を含め、学校現場は子どもたちに従来の日本型教育に適応させる発想になっていないか、今私たちは日本の学校がどうあったらよいかを改めて考えるターニングポイントにいるとお話いただきました。そして「新しい社会の創造、新しい「学校」の創造のためには皆さんの力が必要です。一緒にやりましょう!」と参加者に向けて力強い言葉をいただきました。

笠原教授からの話題提供

 笠原教授からは、「何かを変えるということは、エネルギーが必要で、何かを失うのではないかと躊躇してしまうことが多い。しかし、本来あるべき姿を再構築することにつながる」とお話があり、あるべき姿を再構築する際のポイントとして①一人ひとりの強みを活かす②学習する学校③(子ども/教員/地域の人々にとっての)well beingの3点があげられました。
 また、神奈川県での「元気な学校づくり」の取組例やOECDの国際教員指導環境調査(TALIS : Teaching and Learning International Survey)をもとに世界の教育と比較した日本の教育の実情(多様性・公平性の低さ、教員の仕事への満足度の低さ等)から、日本の学校教育の課題と共に今後の学校の在り方について示唆していただきました。

3名による意見交換

 粟根先生をファシリテーターに、参加者からいただいた質問や意見を取り上げて意見交換を行いました。
 「協力隊経験のある人材に学校現場でいかに活躍してもらうか」については、帰国後周囲の方々が興味をもって活かす機会を与えてくれたという粟根先生ご自身の経験から、協力隊経験者がもっている力に周囲が気づいて動かしてあげられると良いが、経験者自身も周囲の人々に発信し、行動していくことが大事で、それは任地でも日本でも同じだというお話がありました。

 参加者からは「協力隊に参加した私たちですら帰国後、日本社会に「馴染む」ことが難しい。だからこそ、外国につながりのある子どもたちの様々な苦労や葛藤を一部でも理解できるのは、海外在住経験者の強みだと思う」というご意見をいただき、経験者だから活かせる強みがあることを再確認できました。また、終了後のアンケートでは、「パワーをもらった」、「自分に何ができるかを考えて行動し続けていきたい」などの感想をいただきました。
 ご参加された皆さんが、本セミナーでの学びや気づきを活かし、今後の教育現場で活躍されることを期待しています。