知られざるストーリー

2010 年6 月14 日(月)「内閣総理大臣主催 青年海外協力隊帰国隊員による報告会が、首相官邸で開催された。今回は、2005 年~2009 年までに帰国した青年海外協力隊員と日系社会青年ボランティア約6000名の中から約150名が招待された。この内閣総理大臣主催による報告会は、2005年に小泉内閣の際に開催されて以来、実に約5年ぶりの開催となった。

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「それぞれの隊員が素晴らしい活動や経験をしてきたことを改めて感じた」と述べた菅直人総理大臣

この報告会には菅直人内閣総理大臣、仙谷由人官房長官をはじめ、岡田克也外務大臣や福山哲郎官房副長官も出席。また、来賓として「日本の国際協力-特に青年海外協力隊の活動-を支援する国会議員の会」の高木義明会長をはじめとする約30名の国会議員の方々も参加した。JICA からは緒方貞子理事長をはじめ、大島副理事長、橋本理事、粗理事、伊藤青年海外協力隊事務局長も出席した。

菅総理大臣は挨拶の中で、内戦後のモザンビークなど、過去に途上国を訪問した時の体験を思い出しながら、「言葉だけでなく文化や風習も違う環境で、途上国の人たちのために活動してきたことは、本当に素晴らしいことだと感じている。青年海外協力隊の活動は、世界に対しての日本の外交の最前線の役割を担っている。ここにいるみなさんは、勇気を持って世界で活動してきたが、最近では海外へ飛び出そうという若者が相対的に減ってきていると言われている。これからは、みなさんのように青年海外協力隊に参加し、世界中で素晴らしい活動が行われることを期待している。本日は協力隊経験者の活動体験を聞き、隊員それぞれが素晴らしい活動・経験をしてきたことを改めて感じた。今後も青年海外協力隊の活動を、内閣をはじめ、協力隊を支援する多数の国会議員とともに応援していきたい。」と激励した。

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帰国隊員を代表して活動報告を行う柘植未希子さん

帰国隊員を代表して柘植未希子さん(2007 年~2009 年/ボリビア/村落開発普及員)は、「派遣中は、標高約3000mのアンデス地域で、同僚と村々を巡回し、現地の特産品の伝統織物をつくる女性グループの支援、特に品質向上の為の講習会などの活動を行った。様々な苦労はあったが、村の人々のおかげで、人々の心の温かさや絆を再認識させられた。また、協力隊に参加して人生がより豊かなものに感じられるようになった。帰国後の現在は、日本赤十字社国際部にて国際救援の仕事に携わっているが、協力隊員時代の経験を生かし、思いやりのある強い人間になりたいと思う。」と報告した。

もう一人の報告者、窪田保さん(2004年~2006年/モザンビーク/理数科教師)は、「派遣された中学校の理科室にあった機材はホコリをかぶり、試薬や道具も不足し、派遣当初は本当に苦労したが、物がない中で現地にあるペットボトルや空き瓶などを有効活用しながら、活動を軌道にのせていった」と報告。また、自身が連続8時間演技という世界記録を持つ、特技の『けん玉』を現地で生かし、週末はけん玉教室を開催、現地の人々とのコミュニケーションに大いに役立ったと話した。その教室の生徒の一人が、日本で開催されたけん玉の世界大会に招待され、窪田さんと同じ連続8時間演技で優勝したというエピソードを語りながら、菅総理の前でけん玉を実演。華麗な技に会場からは大きな歓声が沸いた。

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得意のけん玉を披露しながら活動報告を行う窪田保さん

その窪田さんは現在、不登校の生徒たちが通う通信制の高校である「屋久島おおぞら高等学校 名古屋キャンパス」に教員として勤務している。帰国した現在でも、モザンビークに恩返しをしたいという思いから、モザンビークに小学校を建設するという目標を持って、「けん玉夢基金」という活動も行っている。最後に窪田さんは、「青年海外協力隊の活動は、日本国民の支援によって成り立っている活動。今後は協力隊で培った経験を日本国内での地域社会の発展や、福祉の向上のために役立てていきたい」と締めくくった。

帰国隊員2人の報告の後、仙谷官房長官は、「先月ベトナムでVJCC(ベトナム日本センター)訪問し、JICA のボランティアや専門家が精力的に活動していることに感動を覚えた。途上国の必要とする援助は、例えるならば、魚を与えるよりも魚を獲る技術を教えてほしいというもの。改めて協力隊の活動は意義のあるものだと感じた。皆さんも現地で培った友情、人脈を駆使し、今後も技量を生かせるような活動を、世界、日本で展開してほしい。これからも、協力隊員の志と活動が雪だるまのように大きくなっていくことを祈念し、そのために私たちも働きたい。」と挨拶した。

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あざやかな民族衣装を身に纏った帰国隊員と歓談する来賓議員

「日本の国際協力-特に青年海外協力隊の活動-を支援する国会議員の会」の髙木会長は、参加した帰国隊員に向け次のようなメッセージを送った。「ここに集まった皆さんの表情は、一人ひとり大変自信に満ち溢れている。派遣中は素晴らしいことだけでなく、困難なこともあったと思うが、世界に大きく目を開いた皆さんに心から敬意を表し、これからも青年海外協力隊事業を応援していきたい。」

乾杯の音頭をとった岡田外務大臣からは、「過去45 年間に及ぶ、協力隊の活動は日本にとって、とても大きな『顔の見える援助』。外務大臣として、今後は協力隊員が帰国後に経験がしっかり生かせるような仕組みづくりや、現職教員や公務員、民間企業の休職制度などが更に広がるようにしていかなければならない。菅政権として、皆さんの活動をしっかりサポートできるようにしていきたい。」という挨拶があった。

その後、世界の各地域ごとに分かれた10ヶ所のテーブルで、帰国隊員たちと来賓議員が派遣国での生活や活動について、なごやかに歓談した。

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帰国隊員が菅直人総理大臣を囲んで記念撮影

最後は緒方理事長より、「本日は菅総理大臣、仙石官房長官、岡田外務大臣をはじめ、たくさんの多忙な議員の方々が出席され、協力隊事業に高い評価をいただいていると感じている。これまで青年海外協力隊員が世界の最前線で活動してきた経験を社会で生かすとともに、協力隊の精神とボランティアの意義を広く伝え、活躍してほしい。JICA も『世界も日本も元気にするボランティア』というキャッチフレーズで、今後事業展開していくので、帰国隊員のみなさんも引き続き頑張って下さい。」と、主催をしていただいた官邸へのお礼とともに、帰国隊員への激励で会を締めくくった。(役職は当時のものです)

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