市川 伴武(いちかわ ともたけ)さん

市川 いちかわ  伴武ともたけさん

職  種
日系日本語学校教師(現:日本語教育)
派遣国
パラグアイ
派遣期間
2010年6月~2012年6月
  • グローバルキャリア
  • # 教師 # 現職参加制度

日系社会青年海外協力隊では日系移民の歴史に
深く関わることに。今度は家業の竹かご屋を通じて、
日本の良さを世界に発信したい。

2015.03

応募のきっかけ

市川 伴武さん

「日系一世と三世をつなぐ活動をしたい」。
上司や同僚の応援で、現職でJICA海外協力隊に参加。

日本語学校で専任講師として働いていたとき、自分は「来日して日本語を学んでいる生徒たちの気持ちを、本当は理解できていないのではないか」と、もどかしさを抱えていました。そんなとき、海外に長期滞在できる日系社会でのボランティアの募集を見つけたのです。上司に相談したところ、帰国後に同僚にも経験を伝えてほしいと快諾していただけて、社長や同僚からも応援されながら、日本語学校に籍を残したまま参加しました。

現地での活動

(上)現地の教師向けの日本語勉強会 (下)幼稚園児への授業

地域とともに学ぶ移住学習授業の創設。
日系一世の苦労を後の世代に伝える。

配属先はパラグアイ共和国ピラポ市にある、ピラポ日本語学校。1960年に移住した日系人の方々が運営する歴史ある学校です。私が担当したのは、日本語の授業をメインに、カリキュラムの改定や現地の教師への勉強会の開催。中でも力を入れた活動は、「移住学習授業」の立ち上げです。移住後50年が経ち、現在では忘れられがちなパラグアイの日系人社会の歴史を、地域の方々と共に体験しながら学ぶことを主眼に置いた授業です。今でこそ成功し、安定した生活を送っている日系一世も、入植当時は貧困や困難に苦しんだと聞きます。そんな日系一世の苦労があったからこそ今の日系人社会があることを、日本語学校の生徒である日系子弟やその後に続く世代に伝えたい、そんな日系人社会の方々の思いを、カリキュラムの形にしました。
 内容は、小学4年生から中学3年生まで、学年に応じ、できるだけ楽しく、分かりやすく自分のルーツが学べるよう工夫。例えば、中学2年生では、家族から話を聞き、それをもとに移住してから現在までの自分の家族年表を作るというように、座学だけではなく、実際の体験を通して日本や日系人社会を知ることができるよう心掛けました。
 現地の方々にもこの授業に協力いただき、授業を通じて日系一世と日系子弟の交流が深まったと実感できたときは、本当に感動しました。現在もこの「移住学習授業」は、現地の人々の手によって行われています。
 帰国が迫ったころ、ピラポ市の皆さんへの感謝の気持ちを込めて、「祭」というイベントを企画。パラグアイ人も日本人もみんなで騒ぐ!というテーマで、パラグアイのダンスや歌、和太鼓演奏や日系一世の高齢者と体操をするなど、15演目程度を準備し、私自身がほとんどに出演しました(笑)。イベントには約1,000人もの人が集まり、「ここまで大きなイベントを主催した日本人ボランティアは初めてだ」と現地の人々に言われたときは、自分の存在を認めてもらえたように感じうれしかったです。

帰国後のキャリア

家業の竹かご屋を継ぐという突然の転機。
パラグアイで体験した家族の絆が背中を後押し。

所属先の日本語学校に籍を置いての派遣だったため、帰国後はすぐに職場へ復帰。ベトナムで実施されていたプロジェクトの現地責任者として派遣されました。現地では、日本語能力試験の合格率向上を目標として、看護師や介護福祉士を目指すベトナム人に日本語の研修を行うなど、やりがいを感じる日々を過ごしていました。
 突然の転機は、赴任2年目が過ぎようとしていたとき。明治から続く竹かご屋を経営していた父が突然亡くなったのです。海外で働くことを希望してきた私は、これまで家業を継ぐつもりはありませんでした。しかし、久しぶりに実家に帰って湧き上がってきたのは、「この伝統ある家業を守りたい」という強い想い。パラグアイで目にしていた、3、4世代が一緒に暮らすという家族のつながりの強さに影響を受けた部分もあると思います。
 家業を継ぐため日本語学校を退職し、現在は5代目店主として竹を中心とした日本の良い製品を世界に発信すべく、模索の日々を送っています。店を継いで1年目の今を、パラグアイ派遣当初に苦労したときと重ね合わせることもあります。だからこそ、パラグアイでの経験を生かして、地道に取り組み、日本はもちろん世界中の人々と信頼関係を結びながら、日本の竹製品業界を盛り立てていきたいと思っています。

JICA海外協力隊で得たもの

現地の人々が、自分の存在や役割を理解してくれるまでにはある程度の時間と忍耐が必要です。私の場合は、現地で何が本当に必要なのか地域の方々とミーティングを重ね、じっくりとアイデアを練り提案していきました。たとえうまくいかなくても、対話を繰り返すうちに、次第に自分を認めてもらえるようになりました。この経験から、正しいと思ったことは途中で投げ出さず、やり続けることで必ず自分の思いを理解してもらえるという自信が得られました。

続けることで必ず思いは届く

これからJICA海外協力隊を目指すみなさんへのメッセージ

現地での活動が最初から楽しい!なんてことはありえないと思います。しかし、とにかく逃げずにきちんと活動を続けること。そして明るくひたむきに取り組むことで、2年目以降は現地の人々と素晴らしい信頼関係を築くことができるはずです。日本では経験することができない、とてつもない充実感を感じられます。皆さんもぜひ挑戦してみてください!

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