松村 光典(まつむら みつのり)さん シニア海外ボランティア

セカンドライフとしての選択。
剣道七段の腕を活かして、シニア海外ボランティアへ。

2015.07

放送局関連のボランティアを考えるも、
有段者として剣道での応募を決断。

放送局で長年、報道の仕事をしていました。外信部の特派員としてジャカルタに3年間駐在した経験もあります。
 同僚たちの中にJICA専門家として、ディレクターや技術関係、放送全般を指導するために開発途上国に派遣されていた人がいたので、JICAの存在は身近なものであり、彼らのさまざまな話を聞いては、もう一度海外に行きたいと海の向こうに思いを馳せていました。
 退職後に具体的に応募職種を検討。これまで積み上げてきた報道の仕事で国際貢献をすることも考えましたが、個人的には“そろそろ別のことをやってみたい”とも感じていました。そんな中で目に留まった、シニア海外ボランティア募集情報の「剣道指導者」の文字。剣道七段を持っていた自分にとって“趣味の剣道で海外に行かせてもらえるなら、この上ない”と思い、剣道で応募。選考を経てトルコへの派遣が決まりました。

初心者ばかりのトルコで剣道を指導。
セルビアでは国際大会にも参加。

トルコではアンカラ大学スポーツ学部で活動。学生たちを対象に剣道教室を開設した当初は人が集まりませんでしたが、地道に他大学などに声を掛け、多いときで100名程度の生徒が参加してくれるまでになりました。しかし、同時に苦労したのが剣道具をそろえること。閉鎖された日本人学校から防具を譲り受けたりして凌ぎましたが、そもそもヨーロッパでは竹が採れないため、竹刀は輸入品に頼らざるを得ません。その上、日本より空気が乾燥していて、とても壊れやすい環境にありました。
 そういった事情から「お金のかかるスポーツ」と思われていた剣道を、情熱を持って続けてくれる生徒たちの気持ちに応えたいと思いひとつひとつ教えていきました。大学の体育館は球技も行うため、土足で床が汚れます。そこで、道場の雑巾掛けを稽古の前に行うのですが、指導をしたところ、そういう文化のない国なので最初は驚かれましたが、「道場は自分たちが教えてもらう場所だから、入るときは敬意を示すためにお辞儀をする」、「入口に履物をきちんとそろえる」といった礼儀にも、生徒は素直に受け入れ、それを見ていた空手部員たちが真似をして履物をそろえていたのには感動しましたね。
 トルコはまだ剣道の歴史が浅く、生徒のほとんどが初心者。それでも、2年間の指導の結果、未経験者の3人が二段を取得するまでになりました。
 帰国してから5年後、再びシニア海外ボランティアに応募し、今度はセルビアへ。再度応募した理由は、トルコでの経験が素晴らしいものだったからに他なりません。セルビアは30年以上も前から剣道が続けられている国で、国際剣道連盟にも加入しています。指導の甲斐もあり、セルビアで初めて、世界選手権に選手を送ることができました。男子は予選を突破して決勝トーナメント進出と、大健闘。「勝利」という経験が、彼らの励みになったと思います。

JICAボランティアで得たもの

今もトルコとセルビアの剣道仲間と交流。
両国の素晴らしさを日本で伝えていきたい。

現地のことを知るほどに、文化や宗教、言葉や顔つきなどが違っても、中身は同じ人間だと気付かされました。国籍を越えて情も生まれますし、親しくなることもできます。同時に、母国である日本を意識するようにもなりました。
 一方で、文化の違いも目にしました。例えば、団体戦の後に日本ではお辞儀をしますが、セルビアではお辞儀の後に互いに拍手をする。個人戦では、ハグや握手をする。そうした、その国の文化が重なってできた新しい剣道の姿を見る楽しさがありました。
 セルビアから帰国した後は、以前の職場でのアルバイトや、福祉関係のボランティアなどで忙しい日々を送っています。シニア海外ボランティアの経験で得たものは数え切れませんが、なによりトルコとセルビアに剣道仲間ができたことが私の財産です。セルビアの仲間などは、私が帰国した翌年に「稽古がしたい」と日本を訪れてくれたほど。
 また2015年の5月に東京で開催された剣道の世界選手権大会では、両国からたくさんの剣道仲間がやってきてくれました。そのときは一緒に食事をするなど、大いに日本を楽しんでもらいました。このように、剣道を通じたつながりは今も途切れることなく続いています。この経験から、今後も機会があればトルコやセルビアの良さを日本人に伝えていきたいと思っています。

これからJICAボランティアを目指すみなさんへのメッセージ

それまで培った知識と経験を生かし
第二の人生を謳歌するいい機会に。

シニアの方は経験も豊富で、いろいろな知識や技術も持っておられます。
もちろん、それは仕事にとどまりません。私の場合は、剣道という趣味が生かせました。
趣味をきっかけに現地に行かせてもらい、人に教えるという任務を果たしながら、
国の歴史や文化などの勉強もさせてもらえたこと、大変ありがたく思っています。
現地の方々は、シニアの知識や技術に大きな期待を持っています。
だから現地では、前向きに楽しくやれたら、それ以上のことはありません。
素敵な第二の人生を歩んでください。

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シニア 社会貢献キャリア # 剣道指導者 # 経験を生かす # リピーター # 家族随伴