小谷 枝薫(こたに しのぶ)さん 青年海外協力隊

趣味の手工芸が糸口に。
キルギスのコミュニティを活性化させるため、
一村一品運動をサポート。

2017.09

自分には向いていないと思っていた協力隊。
手工芸のOGとの出会いが、道を開く。

大学時代、フィリピンの少数民族の村で生活条件が厳しい中でもおしゃれを楽しんでいる現地の女性を見て、日本とは経済力や文化が違っても“共通する生活の喜び”があることを知りました。それから、違う文化圏の人たちとより深く交流したいと思うようになったんです。
 大学卒業後は手工芸用品のメーカーに就職。営業アシスタントとして働く間も、異文化への興味は尽きませんでした。「本当に自分がしたいことは何か?」を考えたとき、思い出されるのはフィリピンのことばかり。ただ、協力隊には看護師や井戸掘りのような即戦力でないと参加できないと思っていました。私は、ボランティアマインドというより自分の興味のために開発途上国に行きたかったので、協力隊向きではないと考えていました。
応募に至ったのは、試しに参加してみた説明会で手工芸のOGと出会い、「インドアでチクチクやるのが好きなタイプに途上国に行こうとする人は少ないだろうから、私でも行けるかもしれない」と思えたからです。

(上)写真を多様し、ビジュアルを重視した品質管理マニュアル(下)エルアイウムにて一村一品運動の商品トレーニングを実施

キルギスの村の女性グループと
「一村一品運動」を推進。

赴任先は、キルギスの首都ビシュケクから車で4時間の所にある、イシククリ州カラオイ村。JICAが推進している「一村一品プロジェクト」に関係の深い現地の生産者組合「エルアイウム」に配属されました。一村一品運動とは、現地の特産物を生かした商品を住民が作ることで雇用を創出し、その地域の活性化や女性の地位向上を目指す取り組みです。私の役割はエルアイウムの組織力を強化することでしたが、イシククリ州全体で展開されている一村一品運動の支援も要請内容に含まれていたため、活動内容はフェルト商品の開発や、商品化に必要な作業用の仕様書、品質管理マニュアル作成など多岐にわたりました。
 フェルト商品の開発にあたっては、「初心者でも作れること」「誰が作っても同じ商品になるような設計」を心掛けました。手作りの温かみは大切ですが、商業用にはクオリティーを均一に保つことが欠かせないからです。仕様書やマニュアルの作成で苦労したのは、キルギスに日本のような活字文化がなかったこと。文化が違うため、イラストでの説明も思うように伝わりません。先輩隊員と一緒に進めましたが、途中で内容の変更が相次ぐなど、なかなか完成しませんでした。
 また、一村一品プロジェクトのオフィスは村から車で2時間ほどのカラコルという町にあり、日本ほどインターネットが普及していないため、情報の伝達にも苦労しました。連絡は電話頼りでしたが、オフィスからの情報を正しくエルアイウムに伝えたくても、何人かを介していくうちに、ミスコミュニケーションが多発してしまいました。
 そうした苦労もありましたが、最終的には10アイテムほどの仕様書を完成。品質管理の面でも、現地の人に重要性を実感していただくことができ、少しは貢献できたのではと思っています。

JICAボランティアで得たもの

JICAの理事長表彰を授与。
いずれはキルギスに恩返しをしたい。

活動では苦労も多かったのですが、雄大な自然が美しく、人もとても親日でおもてなしの心の厚いキルギスが大好きになりました。自分にできることが他にもあるのではと、帰国しない手段を模索したりしましたが、結局は日本に帰ることに。帰国後はJICAの進路カウンセラーに何度も相談し、就職について真剣に考え始めました。常に親身に相談に乗ってくれたカウンセラーに感謝しています。
 うれしかったのが、帰国して間もない2016年10月のこと。キルギスの一村一品運動がJICAの理事長表彰を受けることになり、協力隊代表として私が呼んでもらえたのです。さらに帰国後研修でもプレゼンテーションの機会をもらい、キルギスでの活動を総括し、次のステップへと踏み出すいいきっかけになりました。
 現在は日本の防災技術や製品、知見の海外輸出を促進する団体「一般社団法人日本防災プラットフォーム」で研究員をしています。全く新しい分野へのチャレンジですが、キルギスで「この人たちのためにできることはなんだろう」と考え続けた経験が生かされていると感じます。今はまだ勉強中ですが、早く一人前になり、日本の防災技術を海外展開したいと思っています。そして将来的には、防災技術の輸出で、大好きなキルギスに恩返しできればと考えています。

これからJICAボランティアを目指すみなさんへのメッセージ

同じ人間同士、共通しているものがある。
協力隊の経験が教えてくれた。

日本から遠い外国での暮らしを不安に思うかもしれませんが、行ってしまえば大丈夫。
自分の周囲半径5~10メートルが変わっていくのが感じられます。
 また、国や文化が違っても、同じ人間同士で共通している部分はたくさんあります。
フィリピンに行ったときに感じたこの思いは、キルギスという日本とは全く文化が異なる国に行ったことで、
より強くなりました。少しでも興味がある人には、ぜひ挑戦してほしいと思います。
きっと面白い体験ができるはずです。

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青年 グローバルキャリア # 手工芸 # 一村一品 # 経験を生かす