町井 恵理(まちい えり)さん

町井 まちい  恵理えりさん

現在のシゴト
NPO法人代表理事
職  種
感染症対策(現:感染症・エイズ対策)
派遣国
ニジェール
派遣期間
2006年10月~2008年10月
  • 社会貢献キャリア
  • # 経験を生かす # 起業

前に進むことで、自分の人生も変えられる。
すべての経験を、学びと成長につなげて命を救う。

2021.1

応募のきっかけ

町井 恵理さん

自分の成果を実感できるボランティアとは何か。
それを確かめるために、アフリカの地へ。

初めてのボランティア活動は、学生時代にバックパッカーとして立ち寄ったインドで、友人と一緒に孤児の子どもの家で身の回りの世話をする活動でした。そのときに、ボランティアの面白さに目覚めながらも、1週間という短期間の中で、自分がやったことが本当にその人の役にたったのかということを自問しました。やるならもっと長期間で、成果をしっかり実感できる活動をしたい、そんな気持ちを強く持つようになり、そういった活動ができるJICA海外協力隊へいつか参加したいと考えていました。

大学卒業後に、社会人経験も必要と考え、外資系製薬会社に就職してMR(医薬情報担当者)の仕事をしながら、休暇のたびに短期ボランティアに参加しました。MRとしての営業結果も出てきた時期でしたが、次第に心の中にしまっていた長期ボランティアへの夢を叶えたいと考えるようになります。そして6年間勤務した会社を退職し、JICA海外協力隊に応募しました。バックパッカー時代に、アジア各国はほとんど回ったのですが、アフリカだけは、自分の中で“最後のフロンティア”として、協力隊の立場になってから足を踏み入れようと考えていました。

現地での活動

時には、家族に反対されたとしても
自分の意志と信念を貫くことも大切。

派遣が決まり、両親に伝えた時、最初は「その行動の先に何があるのか。先の人生を考えれば、諦めることも重要だ。」と猛烈な反対を受けてしまいました。反対される理由も理解していましたが、長年あたためていた目標でしたし、自分の意志を貫く覚悟で3ヶ月間かけて説得しました。その結果、元気に帰国することを条件に、アフリカに送り出してもらいました。

ニジェールでは、県の病院に赴任し、マラリア予防などの感染症対策を中心に、6つの村で啓発活動を行いました。

具体的には、120人くらいの住民に「マラリアの原因は何か」「どう予防するか」といったマラリアに関する理解度を測るためのアンケートを実施しました。その結果、マラリアに対して正しい知識を持つ人は全体の2割程度とかなり低かったため、紙芝居やラジオなどを使って、現地語で現地の人とふれあいながら、マラリアに関する情報をわかりやすく伝えていきました。最終的には8割以上の正答率までに引き上げることができました。ですが、蚊帳を使った予防策など、感染の原因である“蚊”から身を守るための具体的な行動を普及させるということまでは、任期中に達成することができませんでした。単に知識だけでなく、行動に変化をもたらせるまでの施策が必要だったと思いました。

また、ニジェールでは、フランス語が公用語であるものの、多民族国家であるため、日常生活ではハウサ語やザルマ語といった現地語を話す必要がありました。フランス語で話すと、どこかよそよそしい感じでしたが、挨拶だけでも現地語を使うと、彼らとのコミュニケーションの距離もぐんと近づきます。そういう面でも私のコミュニケーション能力は向上しました。

帰国後のキャリア

自分の心で感じて自ら行動することで、世界が変わる。
助けられる命を助けることができる。

2年間の活動後、アフリカの人たちが健康で暮らすためにできることは何かを考える中で、まずは自分の能力不足という課題にたどり着きました。持続可能な仕組みの作り方や組織運営の仕方を勉強して実践したいと思い、昼は製薬会社で働きながら、夜と週末にはビジネススクールに通いました。マネジメントを中心に、さまざまな課題を授業で取り組んでいましたが、そんななか、アフリカの医療問題を解決するビジネスモデルを研究するプロジェクトに参加する機会がありました。それが後にNPO法人を設立するきっかけにつながります。

2015年に立ち上げたNPO法人「AfriMedico」は、アフリカの医療が届いていない地域に日本発祥の置き薬を展開しています。置き薬は家庭に設置し、使われた薬剤分のみ代金回収を行うため、定期的な収入がない農村地域にマッチした仕組みだと考えています。タンザニアの村の約200世帯に、「OKIGUSURI」として鎮痛剤や胃腸薬、マラリア対策の虫除けスプレーや検査キットなど、10種類以上を常備しています。現在も現地スタッフと連携して、事業を少しずつ拡大し、アフリカ諸国の人々からも注目を集めはじめました。

派遣前、父親に「その行動の先に何があるのか」と反対された時、私は何も言い返せませんでした。ですが今考えると、その先に何があるのか、始める前には分からずとも、目の前のことに挑戦してみてから生まれる新しい目標もあるのだと感じています。アフリカ全土の助けられる命を助け、最終的には現地の人々が自分たちで自分たちの健康を守るようになる。その目標に向け、私たちが一歩一歩、着実に積み重ねていくことが使命だと思っています。

JICA海外協力隊で得たもの

現地の人と同じ場所で、同じ目線で、同じ生活をするという貴重な経験が、私の人生を大きく変えてくれました。共に生活をし、一緒に苦労を乗り越えた同期や仲間、友人たちは今でも心の支えになっていて、一緒に新しい道を切り拓いてくれました。

たった2年で人生観がガラリと変わるチャンス

これからJICA海外協力隊を目指すみなさんへのメッセージ

人間の本質は、世界のどこに住んでいても、どんな生活をしても変わらないということを、私はニジェールでの生活から学びました。JICA海外協力隊としての2年間のない自分の人生は想像できないですし、すごく重要な時間だったと思っています。少しでも興味があったら、ぜひ一度、協力隊経験者の話を聞いてみてください。

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