JICA関西センター物語(10) -さらなるパートナーシップ発展のために- 「地元の期待を受けて」

2023年8月9日

前号(JICA関西センター物語(9))では、兵庫県の関係者をはじめとする多くの方の協力により、現在の地、HAT神戸に兵庫国際センター(JICA関西センターの前身)を建設することができたことをお伝えしました。今号では、その開所にあたって行われた各種イベント等を紹介させていただきます。

「開所式と記念イベント」

兵庫国際センターの開所式は、2002年4月12日(金)に開催されました。 当日は地元選出の国会議員や県・市議会議員の他、地方自治体や経済団体、大学、周辺の企業や団体の代表者の方にご出席頂きました。また、インドネシア、インド、パナマからは総領事ご自身にご出席頂いています。さらにJICAの研修員(注1)受入れ機関やセンター建設に携わられた企業の代表者など、合計249名が出席されたとの記録があります(注2)。 式典では来賓として外務大臣、兵庫県知事、神戸市長よりご挨拶をいただきました。外務大臣と神戸市長はご都合で名代の方となりましたが、兵庫県からは井戸敏三知事ご自身にご出席頂き、「震災の教訓を伝える重要な役割を果たしてほしい」との期待とともに、ご挨拶頂きました。

またこの開所式を受け、神戸新聞の社説(注3)でも新センターに対する期待、さらに決意が次のように掲載されています。
「より地域に密着した国際交流・協力の拠点となるよう、期待したい。いくつかの課題がある。まず、いかに市民に開かれた施設になるかである。(中略)さまざまな分野で働く人たちが情報や意見を交換する。何かをしたい、という人もやって来る。新しいセンターには、そんな市民でにぎわう場になってほしい。(中略)センターの周辺には「ひょうご国際プラザ」や「アジア防災センター」、「国連人道問題調整事務所」などが立地する。震災の教訓を伝えようという「人と防災未来センター」のオープンも近い。互いに協力し、機能を補完し合って、より効果ある取り組みを目指したい。」

(写真:正面入口で行われたテープカットのようす。右から、門信雄兵庫県副議長、井戸兵庫県知事、川上隆朗JICA総裁、山口壯衆議院議員、滑川雅士外務省経済協力局審議官、梶本日出夫神戸市助役。いずれも当時の役職。)

開所式の翌日(2002年4月13日(土))には、「国際協力―今、私たちにできること」というテーマで国際協力フォーラムが開催されました。 二部構成で、第一部は作家の神津カンナ氏(注4)による基調講演。当時は21世紀に入って間もない頃でした。新しい時代を生きていくため、「今、求められること」と題し、お話いただきました。
第二部では「私たちにできること」をテーマにパネルディスカッションが行われました。コーディネーターを務められた芹田健太郎神戸大学大学院国際協力研究科教授(注5)の、「先進国のODA(政府開発援助)費の4分の1を日本が占める今、各人に何ができるのか」というお話を皮切りに、5人のパネリスト(注6)の方たちに議論していただきました。
神戸大学、神戸学院大学などから学生約100名を含め、計289名が参加したとの記録が残っています。

(注1)開発途上国から日本に来てJICAの研修事業に参加する方を指す。研修期間は数週間から日本の大学院での学位取得を目指す最長3年まで多様。参加者の大宗は各国政府の行政官で、研修事業を通じて知見・技術を共有し、自国の発展のために生かす上で核となる人材である。中には、研修参加後、数年で自国政府の局長、次官、中には閣僚にまでなった実績もある。他にも開発途上国のビジネスや学術界の中堅リーダーなどが参加している。
(注2)兵庫県議会議員、神戸市議会議員、県や市の幹部、経済界、教育機関、地元HAT神戸地区の企業や団体の代表者、地元報道機関などが出席された。また絵画寄贈関係者として10名の方が招待された。これらの絵画は現在もエレベーターホールや2階講堂前などに飾られている。
(注3)「JICA兵庫 開かれた国際交流拠点に」神戸新聞、2002年4月24日。
(注4)JICAとの関わりは1980年代に東南アジアにおけるODA事業を視察したこと。その後、高校生エッセイコンテストの審査員も務められた。1999年にJICAの「国際協力功労者賞」を受賞。
(注5)当時。現在は神戸大学名誉教授。
(注6)齋藤富雄氏(兵庫県副知事)、住野和子氏(NPO法人留学生ホストファミリー交流センター事務局長)、藤野達也氏((財)PHD協会総主事代行)、相川康子氏(神戸新聞論説委員)、諏訪龍氏(JICA理事)。(カッコ内の肩書はいずれも当時。)

「皇太子同妃両殿下のご視察」

この開所式から約1週間後、現在の天皇皇后両陛下、当時の皇太子同妃両殿下が当センターをご視察されています。4月20日(土)に兵庫県立美術館をご視察、翌21日(日)にJICAの西隣に建設された「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」の開館記念式典にご臨席され、さらに当センターをご視察されています。
当時の様子が記録の中に残っています。
「両殿下ご到着後、センター施設の概要説明に引き続き、当センター1階の広報展示室においては、日本のODA事業の役割や兵庫国際センターを核として実施されている国際協力をご説明いたしました。その他、当センターの研修員と市民との交流の典型的な事例として、神戸市在住の高齢者によって毎週実施されているボランティアベースの折り紙教室(実演)のご紹介や、小中高生が研修員との交流を通じて国際協力理解を深める活動の一環として、研修員が日本文化を学ぶ場面(福笑い、習字、茶道)を実際にご覧いただきました」。

当時の別の記録によれば、両殿下は地域と研修員との交流に対して非常に感心されていらしたのこと。センターと地域の人たちとのつながりもご覧いただいた大変貴重な機会となりました。

(写真:皇太子同妃両殿下(当時)の当センターご到着の様子。)

JICA関西 地域連携アドバイザー
徳橋和彦