帰国してから今まで2年間の成果~2017年度受入アルゼンチン帰国研修員よりのアクション・プラン達成度報告~

2020年5月21日

1. 研修員氏名:Mr. ROMANO Silvio Fernando
2. 国・所属先:アルゼンチン・サンタクルス州環境局統合廃棄物管理課 課長(Director Integral Solid Waste Unit, Environmental Secretariat, Government of Santa Cruz province)
3. 研修コース名:総合的な廃棄物管理(B)
4. 研修期間:2018年2月5日~3月3日

本邦研修コース「総合的な廃棄物管理(B)」は、2018年2~3月南米6か国(アルゼンチン、ボリビア、チリ、パラグアイ、ペルー、ベネズエラ)10名が参加し、兵庫県西宮市のNPO法人こども環境活動支援協会のご協力のもとスペイン語で実施されました。参加者は各国でごみ問題に取り組む行政官で、西宮市等日本のコミュニティ、民間企業、自治体等との意見交換や現場視察を行い、最後に各研修員がアクション・プラン(日本で学んだことを活かし、自らの仕事を通じて、どう自国の課題を解決していくか?をまとめた行動計画)を作成しました。

このたび、アルゼンチン帰国研修員シルビオさんより、自身のアクション・プランについて、計画期間の2か年を2020年3月で満了したことから、達成状況の報告をしますというメールがありました。

固形廃棄物管理人材の育成、制度整備に対するたゆまぬ努力でSDGsに貢献

環境教育研修の様子

コンポスト・マニュアル

配布したコンポスト容器

シルビオさんが2年前日本で作成したアクション・プランのそれぞれの活動は、サンタクルス州の深刻なごみ問題を改善するため、優先度が高いものから選ばれています。また、これらを確実に実施することで、持続可能な開発目標SDGsの達成に、環境や公衆衛生の向上を通して更に一歩近づいたことになります。各項目ごとの達成度と、具体的な活動実績は以下の通りです。

1. 固形廃棄物管理に関する法規の整備
州の都市固形廃棄物条例(No.2829)の実施を確実にしていくため、補則策定などの必要性が高いとの分析のもと、これを目指して、不法投棄防止制度策定プロジェクトを実施、各市町村に当該条例の説明文書を配布、一部市町議会では条例が批准されました。

2. 市民向け環境教育、教材・マニュアルの開発
 ●約50回のワークショップを通じて、約1300人の市民に統合的廃棄物管理に関する研修を提供
 ●コンポスト・マニュアルを作成、ネットで公開し、200個の家庭用コンポスト容器を配布しました。

コース参加者と主催者側担当者

ごみ分別工場視察

衛生埋立処分場視察

3. 人材育成による行政組織・能力の強化
計3回各40時間の研修コースを実施しました。また各回とも地元メディアにも取り上げられました。
① 理論・実践コース(2018年 場所:エル・カラファテ市)
●参加者:
 ◇自治体職員(17市町、34名)
 ◇「総合的な廃棄物管理(B)」パラグアイ帰国研修員アルベルトさん(Mr. VAZQUEZ BADO Alberto Alejandro)(同国エンカルナシオン市廃棄物管理担当)
●講師:
 ◇シルビオさん
 ◇環境持続的開発省統合的廃棄物管理局サンチャゴさん(Lic. SOLDA Santiago)(帰国研修員:2008年度JICA本邦研修「地方自治体における廃棄物処理」修了)
●主な内容:
 ◇一般廃棄物の適正処理
 ◇財政管理(管理コストと処理費用のバランス等)
 ◇中央、州、市町の各レベル行政の連携による政策実施効果の向上
 ◇好事例(参加3市のプレゼン)紹介と意見交換
 ◇視察:ごみ分別工場、衛生埋立処分場
●その他:修了証が、サンタクルス州環境局、環境持続的開発省固形廃棄物調整官、エル・カラファテ市長3者の連名で授与されました。

② 国立南パタゴニア大学大学院での専門講座 2回
●参加者:
 ◇2018年:大学院生14名、州環境局専門職員2名
 ◇2019年:大学院生20名、州環境局専門職員2名

埋立処分場(左)、ごみ分別工場(右)の視察

講座のパンフレット(左)と講義のようす(右)

4. 固形廃棄物組成・排出状況調査
2019年、ごみの実態を把握するため、州人口の77%以上をカバーする地域(7市町、1014地点、68サンプル)を対象に調査を実施しました。土地利用状況、住民の職業や収入等の社会的要素も変数とした結果、興味深い結果が得られ、今後、最終処分場の衛生埋立方式への改善計画を含む、州の廃棄物管理計画に活かされる予定です。

アクション・プラン実施にあたり取入れた工夫~スペイン語圏南米地域での国や組織をまたいだJICA帰国研修員ネットワークの活用など~

以上のように、シルビオさんは着々とアクション・プランの各活動を実現させてきました。それ自体高く評価されるものですが、更に各活動の実施において人材・組織能力強化研修の成果の持続性を担保し、インパクトを拡大するための工夫を盛り込んでいる点は特に素晴らしいと思われます。例えば、JICA帰国研修員ネットワークの活用、大学やメディアの巻込み、好事例紹介や知見交換の場を設けることによる現場担当者のエンパワーメント等は、他の帰国研修員にとっても大いに参考にできるものです。
特に、帰国研修員ネットワークの活用については、南米地域の共通言語のひとつスペイン語で実施した研修コースだったことが、このような成果によりスムーズに結び付いたのではないかと推測できます。本コースに携わった日本側関係者も、英語以外の言語で運営することから必要になる様々な努力が大いに報われたような気持ちになり、また今後の更なる改善への励みにもなりました。