初等算数教育における教員の授業実践能力向上

種別:
国別研修
実施期間:
2022年11月~12月、2023年11月~12月(予定)
実施機関:
基礎教育省
概要:

南アフリカ政府はアパルトヘイト廃止後、貧困層・社会的弱者への資源の再分配を通じた格差の是正と産業力の強化に取り組んできました。特に近年では、4割を超える高い若年失業率の改善が主要政策課題の一つとなり、労働市場の求める技能を有する人材の養成が喫緊の課題となっています。一方で、基礎的な理数科能力の低さがボトルネックとなり、特にエンジニア系の人材の育成が思うように進まない実情を抱えています。この背景には、アパルトヘイト下における教育(教員養成を含む)の格差の影響が未だに大きく、特に、理数科教育の質に大きな課題が残っていることが理由として挙げられます。

JICAは1999年以降、こうした状況を改善するため、理数科分野の基礎教育強化及び人材育成に取り組んできました。具体的には、1999年のムプマランガ州中等理数科教員再訓練計画(個別専門家チーム派遣)から始まり、続いてムプマランガ州理数科教育アドバイザー派遣により、同州の理数科教育の質の向上に取り組みました。その後、2012年から中央政府の基礎教育省に算数教育政策アドバイザーを派遣しています。これまでに低学年教員用補助教材(文章題)の開発、校内モニタリングモデル構築(授業研究の導入)等を支援してきました。近年では、「算数教育フレームワーク;Teaching Mathematics for Understanding(TMU)」を実践するため、個別専門家がパイロット事業に携わり、カリキュラムの整理・改訂、教員用指導教材の作成及び教材活用に係る研修、モニタリング等を通じ、教員及び生徒の算数概念の理解促進に取り組んでいます。

また2016年及び2017年には国別研修として、日本の授業研究における学び合いの手法を学ぶとともに、学力評価に基づく授業づくりを目指して、それぞれ約1か月間の本邦研修を実施しました。現在、研修に参加した4州において授業研究の普及のための取り組みが順次進められており、基礎教育省においても教員研修の一環として授業研究の普及に取り組んでいます。

本国別研修は、これらの成果を受けて残り5州を対象として実施するものです。上述の個別専門家の取り組みに加え、日本の授業研究における学び合いの手法を学ぶとともに、日本の算数カリキュラムの構造を理解することにより、算数教育を担当する教員の授業実践能力の向上に資する指導能力の向上を狙いとして実施します。(2020年度案件として採択されましたが、コロナ禍のため、2022年度から事業を開始しています。)